現在撮影中の映画『横道世之介』〔よこみちよのすけ〕(2013年公開)の撮影報告会見が、本日5月6日(日)撮影現場の長柄源山荘(千葉県長生郡長柄町)で行われましたのでご報告いたします。

 3月24日にクランクインしてから約1ヶ月が過ぎ、5月9日のクランクアップに向けて撮影も佳境を迎えている本作の本日の撮影は、主人公の横道世之介(高良健吾)が、ヒロインで令嬢、与謝野祥子(吉高由里子)の実家に挨拶に来るシーン。威厳ある祥子の父親に緊張の挨拶をした後、世之介と祥子の2人が、付き合っているのか付き合っていないのか、また、お互いの気持ちを確認し合う。

観ている者が思わず笑ってしまう沖田監督ならではの演出も本作で十分発揮されており、現場で笑いが起こるなど、終始和やかな雰囲気で撮影が進んだ。頼まれたことは断れない人の良い世之介役を高良健吾が体当たりで演じ、これまでのシャープなイメージを覆し、新たな一面を見せている。祥子役の吉高も、普段から話し方を意識しているようで、令嬢役に入り込んでいる。

舞台は1987年。高良、吉高とも当時の若者の装いに身を包み、同じく80年代後半の雰囲気をかもし出す美術の中、楽しく演じているようだ。吉高はお嬢様ならではの清楚な衣裳となっている。
現場では微妙なタイミングや間合い、セリフの良い回しを沖田監督が丁寧に2人に伝えてシーンを作り上げているが、カメラ越しに満面の笑みで演技を見つめる監督の姿から、監督自身が現場の誰よりも楽しんでいる様子が伝わってくる。

撮影終了後、沖田修一監督、主演の高良健吾、ヒロインの吉高由里子による撮影報告会見が行われた。

【コメント】
・高良健吾(24才)
 『横道世之介』の現場は、休みが続くと不安になるくらい早く行きたくなります。吉高さんはどんな演技でも全て返してくれて、そこが予定調和の芝居にならなくて楽しいです。沖田監督は全てのシーンにこだわりを持っていて、「何かが違うからもう1回やらせてください」と声がかかります。でも、監督が言うように何かが違う感じがするんですよ。なので僕は、シンプルに毎回新しい気持ちでやっています。
僕が生まれた1987年の設定ですが、世之介はきっとどの時代でも変わらない人物なんだろうなと思います。
小道具で昔のジャンプ(コミック誌の)があったりすると面白いなと思いますし、携帯電話がない時なので、家に電話して出なかったら、家で待っているとか、その時代ならではの待ち合わせの仕方なんだなとは思います。

・吉高由里子(23才)
 毎回現場で、モチベーションが高く前向きな高良くんに会うのが楽しみです。なんでも受け入れてくれて精神的によりかかっています。『南極料理人』を観て、沖田監督は良い雰囲気を持った監督さんだと思っていたし、大恋愛ではないけれど、春先に、指先が触れ合うような、何かが始まるような作品は、これまでやったことがなかったので、撮影に入るのが楽しみでした。
撮影に向けて、普段から自分のことを「わたくし」というように心掛けました。普段使わない話し方なので、「用意、スタート」の声がかかると、誰かに背中を掴まれているように緊張しました。
祥子の言葉遣いは普段私が使っていないお嬢様言葉ですし、周りにお嬢様の友達もいないので、なかなか慣れないですね。NGは私が一番多いかもしれません。1回言い間違い地獄にはまると、抜け出せないんじゃないか、という気持ちになります。監督は、どんなに狭い現場でも役者やスタッフ、撮影の全てを把握されている方なので、とても信頼しています。祥子は生まれた環境が特別だけど、プライドが高いわけでは無いし、だからこそ世之介とも遊べるのだと思います。80年代はあまり触れてきたわけではないですが、どこか懐かしい感じがします。

・沖田修一監督(34才)
 いつも必死です。撮影中に2人が見せてくれるお芝居を楽しみにしているので、二人が実際に演じて更に面白くなたりするので、そういうのを楽しみにやらせてもらっています。
世之介は形容詞がなかなか見当たらない人物、そこが魅力。
祥子はお嬢様の家の子ですが、なんだかんだ言っても中身は19歳の女の子。取り立てて変わっているというわけではけれど、生まれた環境から面白い一面がでるのが祥子の面白さ。
世之介も祥子もどちらも愛される人だなと思います。
僕は87年には小学生で、ぼんやりした記憶ですが、時代背景に付随した小道具を目にすると懐かしさを感じます。でも、誰にでもあったことを描く作品なので、時代に特化しないように考えています。いつの時代も変わらない大学生の話になれば、どの時代を描いていても共感できるものになるのでは、と思います。