只今ヒューマントラストシネマ有楽町にてノルウェー映画「孤島の王」が絶賛公開中の運びとなっております。
本作はノルウェーのバストイ島にかつて存在した、少年向けの矯正施設で勃発した凄まじい反乱事件をベースにした実録ドラマ。このノルウェー本国でもほとんど知られていない事実を基に、マリウス・ホルスト監督が尊大な大人たちにあらゆる自由を剥奪され、理不尽な重労働や虐待にさらされた少年たちの運命を、圧倒的なリアリティと詩情に満ちた映像美で描出。外界から隔絶された厳寒の孤島で、いったい何が起こったのか?
少年たちの命懸けの友情と葛藤の物語に胸を衝かれ、極限の生存闘争と脱出サスペンスに息をのまずにいられない、心震わす〈魂の叫び〉がこもった必見の問題作です。

本作の公開を記念いたしまして、【知られざる北欧・ノルウェーの魅力】と題してトークショーを行いました。

≪『孤島の王』公開記念 知られざる北欧・ノルウェーの魅力 トークショー 第五回≫
日時:5月5日(土)
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町   ※16:40の回終映後に実施
ゲスト「ノルウェーの食について」/森百合子(もりゆりこ) 「北欧のおいしい時間」著者
コピーライターとして広告やカタログ、ウェブ制作などを行う。フィンランドの文化を紹介するサイト「プロジェクト・フィンランド」
(フィンランド大使館開設)やスウェーデン大使館投資部発行のニュースレター制作など北欧に関する執筆を手がける。
2010年に北欧の食を紹介する「北欧のおいしい話スウェーデンのカフェからフィンランドの食卓まで」、2012年に「北欧のおいしい時間 デンマークのカフェからノルウェーの食堂まで」を出版。

MC:どういった経緯で今のお仕事をされたのですか?
私はコピーライターといって広告の文章を書く仕事していて、ご縁がありスウェーデン大使館やフィンランド大使館にお仕事をいただく機会がありました。個人的にも北欧にすごく興味を持つようになって何度か繰り返し行くようになりました。旅に行ったら美味しい食べ物が食べたいですよね。それで情報を集めようとしたのですが、なかなか当時は北欧の食については情報がなく、大使館の人たちに聞いても「美味しいものを食べなれている日本人にオススメできるようなものなんてないわよ・・・」と消極的だったんです。でも実際に行くと夏はベリー、あとパンなど日本人に合いそうな美味しいものが沢山あるんです。そこで出版社に北欧の食べ物についての企画を出したら採用され、本にすることができました。

MC:映画はいかがでしたか?
食のシーンはそんなにないですが、バケツに入った生の魚を食べさせられたりとか、あの環境の悲惨な状況を表しているなと思いました。彼らあれでよく体力があったなぁと。あとはお偉いさんの視察のシーンがありますが、そこでの食事はいつもよりも良いものを出していたような気がしました。見栄を張るというか、いつもきちんとしたものを食べさせていますよ。という、嘘というか。いつもと違うじゃないと思って観ていました(笑)服装も当時の雰囲気で良かったですね。

MC:ノルウェーは他の北欧の国と比べて食べ物では目立たない国のイメージがありますよね?
実は水産大国でノルウェーサーモンは日本でも有名ですよね。他にニシンや鱈、ムール貝、魚卵もよく食べます。ニシンはノルウェーに限らず北欧全域で良く食べられています。鱈を干した“干鱈”は数千年前からあるそうで、ノルウェーとスウェーデンにはルーテフィスクという干鱈を使った伝統料理があり、クリスマスの名物でもあります。
いま注目されているのはコーヒーで、レベルが非常に高いですね。もともと北欧は一人あたりのコーヒー消費量が高く、どの国とも世界のトップテンに入るくらいです。バリスタの世界大会というのがあるんですが、初代チャンピオンはノルウェー人です。2004年にもノルウェーのバリスタがチャンピオンになりました。彼らはカフェを営むだけではなく、コーヒーの産地へ足を運びコーヒー農園と持続的な関係を築いたり、コーヒーで社会をよくしていこうと志が高く、一方で若い世代に惜しみなく情報を提供しています。
日本の若いバリスタからもオスロへ修行に行きたいという話をよく聞きますし、コーヒー業界ではノルウェーと言えば憧れのバリスタがいる場所として知られているんです。そんな彼らはノルウェーがフィヨルドやオーロラで有名ということは知らなかったりするんです(笑)

MC:ところで海が近く新鮮な魚が手に入るノルウェーですが、生のお魚も食べるんですか?
一般的にはマリネしたものを食べることが多いようです。あと「孤島の王」の最後にヘラジカが出てきますが、ヘラジカも実はノルウェーの名物です。私もファーマーズマーケットでヘラジカバーガーを食べました。トナカイも食べます。臭みがあると言う人もいますが、ヘラジカは脂肪分が少ない感じで思ったよりも食べやすいですよ。

MC:ノルウェーを日本で味わえる場所はありますか?
本を書くときに大使館にも問い合わせたのですが、今のところ純粋なノルウェー料理のお店はないそうです。でもじつは今度、5月の10日(予定)にオスロにあるフグレン(Fuglen)というカフェが海外進出第一号店として渋谷の富ヶ谷にオープンします。フグレンはコーヒーが楽しめるのはもちろん、北欧ミッドセンチュリーの雑貨や家具が置いてあって、それが全部買うことができるユニークなお店なんですが、日本でも同様にするようです。オスロの本店では北欧全般の製品を扱っていますが、日本店ではノルウェーに絞って紹介するそうで、本当に楽しみです。

MC:最後に一言お願いします!
私は相手の国を知るにはその食文化を知るのが一番の近道だと思っていてこんな本を書きました。今年はフグレンのオープンだったり、「孤島の王」や「トロールハンター」といったノルウェー映画が公開されたり、個人的にノルウェーがきている、注目の国になりつつあるなと思っています。日本でこのペースでノルウェーが紹介され、もっと親しみやすくなればいいなと思っています。