只今ヒューマントラストシネマ有楽町にてノルウェー映画「孤島の王」が絶賛公開中の運びとなっております。
本作はノルウェーのバストイ島にかつて存在した、少年向けの矯正施設で勃発した凄まじい反乱事件をベースにした実録ドラマ。このノルウェー本国でもほとんど知られていない事実を基に、マリウス・ホルスト監督が尊大な大人たちにあらゆる自由を剥奪され、理不尽な重労働や虐待にさらされた少年たちの運命を、圧倒的なリアリティと詩情に満ちた映像美で描出。外界から隔絶された厳寒の孤島で、いったい何が起こったのか?
少年たちの命懸けの友情と葛藤の物語に胸を衝かれ、極限の生存闘争と脱出サスペンスに息をのまずにいられない、心震わす〈魂の叫び〉がこもった必見の問題作です。

本作の公開を記念いたしまして、【知られざる北欧・ノルウェーの魅力】と題してトークショーを行いました。

≪『孤島の王』公開記念 知られざる北欧・ノルウェーの魅力 トークショー 第四回≫

日時:5月4日(金)
場所:ヒューマントラストシネマ有楽町   ※16:40の回終映後に実施
ゲスト「ノルウェー人の国民性について」/青木順子(あおき・じゅんこ) ノルウェー夢ネット代表
ノルウェー夢ネット代表。コミュニティサイトでノルウェーの文化や社会状況などを紹介するほか、ノルウェー語講師、通訳、翻訳などを手がける。著書に「ノルウェー語のしくみ」、「ニューエクスプレス ノルウェー語」(ともに白水社)などがある。
http://www,norway-yumenet.com

●簡単に自己紹介とノルウェー夢ネットについてお願いします。
「ノルウェー夢ネット」は良くカルト集団と間違われますが決して怪しくありませんよ(笑)
昔会社勤めをしている時にオーロラツアーに行く機会があってノルウェーに興味を持ちました。
会社を辞めてノルウェーのオスロ大学を中心に、長期で4回留学して2000年に帰国しました、
それで大久保陽子さんという方と一緒にノルウェー夢ネットを立ち上げました。
2006年から「ノルウェーについて学ぶサロン」、2007年から「ノルウェー語レッスン&ホームサロン」を開講しました。
今はノルウェー語講師、翻訳、通訳、文筆業など。語学書や翻訳など6冊出版しています。
6月には「青木順子さんと行くノルウェーツアー」を催行します。フィンツアー、映画の字幕監修や通訳、本は6冊ほど出版しています。
この映画を見るとノルウェーに行きたくならないかもしれませんが、今のノルウェーは違いますよ(笑)

●映画に携わることも?
ノルウェー映画の宣伝ですとか、「トロールハンター」のパンフレットを書いたり、
変わったところでは三池崇史監督の実写版「ヤッターマン」で
阿部サダヲさんが15秒くらいノルウェー語話すシーンがあるのですが、
そのセリフを監修しました。阿部サダヲさんと2ショットで写真を撮り三池監督ともお会いしました。
阿部さんの大ファンなのでその時はこういう隙間産業もいつか報われるんだなぁと地球に感謝したいと思いました。(笑)

●「孤島の王」について
ノルウェーの映画はなぜかとてもリアリズムを追及するので、必要以上に綺麗な人が出てきたりしませんね。
今のノルウェーには可愛い女の子やカッコイイ男の子が沢山いるのになぜか映画にはそういう人たちは出てきません。
C1オーラヴ君はまだ可愛いけど、ほかの人たちは怖いですよね。
普通に歩いている人の方がイケメンや美女。本当になぜか映画の方がリアルだったりすんですよ。
今時のノルウェーの男の子たちは身綺麗でイケメンが多いですよ。
だから、何でこんな小汚い子を使っているのかなって思いました。

●バストイ島にお知り合いが?
バストイ島は今も成人用の刑務所として運営されているんですが、
実は一緒に仕事をしている知人のお母さんがそこで働いているって言うんですよ、
その刑務所の馬の乗馬トレーナーをしていて、乗馬自体はノルウェーでは一般的ですけど、
それにしても刑務所に乗馬トレーナーのお仕事があることに驚きました。
そこに入っている囚人の人たちも乗馬するということですからね。
●ノルウェー人はどんな人達なんでしょうか?
あんなに働かなくても国が回ってるって不思議ですよね。
20年くらいノルウェー人と関わっていますけど、メールが返ってくるだけでありがたい。
忘れた頃や、一ヶ月くらい経った頃に返ってきたり、私もだんだん感覚が麻痺してきて、
返信がきただけで感激してツィッターに書いちゃったりするくらいですよ(笑)
仕事も3時半とか4時には帰って、週末はちゃんと休みますし、
無理して返すことは絶対にしないし、残業もなし。
でもその割には「疲れた、ストレスがたまっていて・・」とかいうから首絞めたくなります(笑)

●日本に来ているノルウェー人もそういったことはあるんでしょうか?
日本人相手に仕事している企業に入った人は大抵辞めちゃいますね。
拘束時間も長いですし、だから外資で働いている人が多いんですけど、
でも変なところだけ日本人化してカラオケが大好きだったり。
ノルウェーにもカラオケはあるんですけど、ボックスではなくてスナックみたいな。
あと居酒屋のいくらでも飲める飲み放題には感動してましたね(笑)

●ノルウェー人はお酒に強そうだし沢山飲みそうですね。お酒事情はどうなんでしょう?
私がノルウェーの大学に留学している時は、真面目な子が金曜、土曜には豹変していました。
飲んで帰るときにピンポンダッシュしたり、お店の看板を勝手に持ち帰ってきてしまい、
朝になって覗いてみると酔いつぶれて寝ている子たちと看板が転がってたり(笑)
クリスマス時期に会社主催の忘年会があるんですけど。乱れるんですよ、
それに出たくないが為にその時期を狙って日本に来る人もいます(笑)
お酒の販売の規制が厳しいんですけど、
タックスフリーのスェーデンやデンマークに買いに行ったりアルコールへの熱はすごいですね。

●トロールハンターのような映画も制作されていますが、ああいった作風の映画はノルウェーではよく作られているんですか?
トロールハンターは本国では爆発的ヒットをしましたよね。
彼らはどうもリアリティのあるものが好きなようです。
アメリカのリアリティTVみたいなものもとても流行っていて、
最初はアメリカバージョンだったんですが、ノルウェーバージョンも作るようになりました。
内容は女子が数人バスに乗って田舎にお見合いをしに行くといった内容なのですが、番組オーディションの競争率も厳しいと聞いてます。

●ノルウェーという国は北欧の国の中であまり目立たない印象がありますよね?
ノルウェーは目立たないですね(笑)一度お会いした方に「ノルウェー関係の仕事です」と言っても
次に会った時にはスウェーデンとかフィンランドに間違えられることもありますし、
一般の方にお仕事は何ですか?って聞かれるのが一番辛いです(笑)ノルウェー人からもすごく聞かれますよ。
「なんでノルウェー語を選んだんだ?」と。
でも不思議なのが、スウェーデンやデンマークは良いのに、「日本でフィンランドが人気だよ」というと、
「何でだ!」とムキになるんですよ。ムーミンとかよっぽど有名じゃないかと思うんですけどね(笑)
石油のお陰で国が潤っていて、ガッツかなくても日々暮らしていけるので、映画のようなハングリーな精神は今のノルウェーには皆無ですね。

●最後に一言
この映画見た後には信じられないかもしれませんが、世界一暮らしやすい国に選ばれています。
かたや「スウェーデン人がノルウェーの国王の名前すら知らない」というような
新聞記事がでると喜んだり自虐的な面もあったりしますが、自分たちの国の本が日本で出版されたり、
映画が上映されたとか言われるとすごい喜びますよ。
ノルウェーは良い国じゃないかと遠い国日本からちょっとしたシグナルを送ってくれるとすごく喜ぶと思います。