本日、映画『誰も知らない基地のこと』劇場トークショー第2弾が行われました!
東京大学教授の姜尚中氏に「世界の基地問題とアメリカの軍事戦略」についてお話頂きました。

■2012年4月14日(土)
渋谷シアター・イメージフォーラムにて、『誰も知らない基地のこと』の劇場トークショーが行われ、東京大学教授であり各メディアで活躍する姜尚中氏が、“世界の基地問題とアメリカの軍事前略”について語りました。

Q700以上の基地がある事に関してどう考えますか? 
米軍基地が40カ国、700か所以上存在する事に関しては、これくらいあっても決して不思議ではないと思いました。軍産複合体に関しても、先日発表された日英共同声明での、武器輸出三原則の強化のように、ある種の不文律として存在します。それを日米間では敷囲をとっぱらおうと言う事だったのですが、今回は日英の間で、軍事輸出のさまざまな交流があって、古典的な形での軍産複合体だけではなく、もう少しグローバルに進んでいる部分もあります。それから戦争の民営化が進んでいるためにイラク戦争、アフガン戦争でも、産業として戦争を捉えていく必要があると思います。非常に波及効果の大きい、最も利益の高いものだと考えた方がいいかと思います。

Q基地は抑止力になっていると思いますか?
中国、北朝鮮の恐怖から、基地が置かれれば安心という考えになっていますが、ただ実際抑止力になっているかというと、そんな事はないと思います。実際に海兵隊ですから、佐世保から海兵隊を運んでくる舟が出てこなければいけないわけで。飛行機ではなく船で出ていかなければいけない。そしてその母港がどこにあるかというと佐世保なのです。そう考えただけでも必ずしも沖縄に基地を置かなければいけないという理由はないのです。 基地と言うのは色んな意味でシンボリックな意味があると思います。ただ役に立つという意味だけじゃなく、エリートパニックになっている傾向にあるかと。エリートたちは市民たちが反乱を起こすのではないかと恐れ、そのようなことからアメリカの基地を受け入れてしまうケースが起きていて、結局そこでは市民と政府の対立が解けないのです。

Q原発と基地は同じような状況にあると思うのですがどう考えますか?
基地と原発を犠牲に捧げることで安心が生まれるという考えがあると思います。ただ、都市にはあっては困るが電力は必要だから、地方の人に犠牲になってくれという考えです。それを正当化するために公共の福祉というのがあり、公共の為に地域のエゴは許さないという憲法があります。だから沖縄の基地での反対があっても地域エゴになってしまう。司法権力は作動しないようになっているのです。

Q基地は一体誰の為にあるのでしょう?
基地は誰の為にあるのかと言うと、原発と同じように多目的なものが背景にありますが、それと同時に基地が来たことで戦争がやってくることは否定できないと思います。アメリカは自国に最も忠誠を誓うような国を世界中に作ってそこに基地を置いています。基地依存経済のパーセンテージはかなり減っていると思います。むしろ基地がなくなった場合の代替効果を考えるとそちらの方が遥かに大きいと思います。北朝鮮は新しい敵として策略的なものが裏で動いているのではないかと言う事に関しては、難しい問題ですが、北朝鮮は決して悪ではないと思います。それはどんな国もイノセントな時代があったと思いますし、見えない背景があると思うのです。やはり平和的に変わって欲しいと思いますが、北朝鮮によって巻き起こるドミノ現象をとても恐れています。軍拡のスパイラルが広がっている事がとても怖いです。日本も核は持たないけれど、将来アメリカが核の傘を差し出しても安心できない時に、核は持たないが短期間にそれが作れるくらいの能力を確保したいと思っているのかもしれません。日米韓の緊張関係がアメリカの思惑を超える事がとても怖いです。

4/7(土)〜5/11(金)シアター・イメージフォーラム、以降全国順次ロードショー