映画祭12日目の22日(日)。後は賞の結果を待つばかりとなった最終日、長編コンペティション部門に選出された全20作品がリピート上映された。怒濤の日々も過ぎてしまえば、あっという間で、今年は例年になく好天に恵まれた年であった。19時15分からはコンペティション部門の授賞式が行われ、それに続き閉幕作品の『ビーラヴド』を上映。5月11日から12日間にわたって催された第64回カンヌ国際映画祭が閉幕した。

◆人気女優メラニー・ロランが司会を務め、華やかな顔ぶれのプレゼンターが登場したクロージング・セレモニー!

 オープニング・セレモニーに続き、クロージング・セレモニーの司会をフランスの若手女優メラニー・ロランが務めた今年の授賞式。人気スターたちがプレゼンターとして続々と登壇した。
 短編コンペティション部門のプレゼンターはフランスの女優リュディヴィーヌ・サニエで、この部門の審査委員長であるミシェル・ゴンドリー監督とともに登壇。審査委員長を韓国の監督ポン・ジュノが務めたカメラドール(新人監督賞)のプレセンターとして登場したのはスペインのベテラン女優マリサ・パレデス。審査員賞はフランスの女優キアラ・マストヤンニ。女優賞はベネズエラ出身の男優エドガー・ラミレス。男優賞のプレゼンターとして登場したのは大女優カトリーヌ・ドヌーヴ。
 監督賞のプレゼンターはフランスの女優&監督のニコール・ガルシア。グランプリのプレゼンターは“ある視点”部門の審査委員長でもあるエミール・クストリッツァ監督。そして最高賞パルムドールのプレゼンターとしてハリウッドの大女優ジェーン・フォンダが登場した。  
 我々報道陣は、その模様を授賞式会場のリュミエールではなく、別会場ドビュッシーのスクリーンで観るので、賞が発表される度に気兼ねなく歓声をあげたり、ブーイングしたりと喧しいのだが、今年は粒揃いの作品が並び、サプライズ受賞のないバランスの取れた選考結果であったせいか、反応はかなり穏やかであった。受賞結果は以下の通り。

〈第64回カンヌ国際映画祭〉
長編コンペティション部門受賞結果
☆パルムドール:『ツリー・オブ・ライフ』テレンス・マリック監督(アメリカ)
☆グランプリ:『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アナトリア』ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督(トルコ)/『少年と自転車』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督(ベルギー)
☆監督賞:ニコラス・ウィンディング・レフン『ドライヴ』(アメリカ)
☆審査員賞:『ポリス』マイウェン監督(フランス)
☆男優賞:ジャン・デュジャルダン『アーティスト』
☆女優賞:キルステン・ダンスト『メランコリア』
☆脚本賞:ヨセフ・シダー『フットノート』(イスラエル)

◆授賞式直後の20時15分からロバート・デ・ニーロら審査員団の記者会見が行われ、引き続いて受賞者たちが会見!

 クロージング・セレモニーの余韻が残るなか、20時15分より長編コンペティション部門の審査員団による記者会見が行われた。『ツリー・オブ・ライフ』がパルムドールを受賞した理由を問われた審査委員長のロバート・デ・ニーロは、「詳細は述べないが、この映画の強さや意思が、最もパルムドールに近いと感じたからだ。ただ、優れた作品が多かったので、賞の決定はとても難しく、妥協点を見い出さねばならなかった」と語り、激しく議論が交わされた作品として『パテール』『スリーピング・ビューティー』『ルアーヴル』『ハベムス・パパム』『ザ・スキン・アイ・リヴ・イン』の名を挙げた。また、ラース・フォン・トリアー監督が映画祭から追放処分を受けた『メランコリア』については、「作品と追放の件は別で、作品が良いと思う審査員が多かったから選ばれたんだ」と返答。さらにフランス人監督のオリヴィエ・アサヤスも、「彼の作品の中でも傑作の1つだね。記者会見での彼の発言は、許しがたいものだと審査員全員の意見は一致しているが、作品自体は脚本も演技も素晴らしく、秀作であることには間違いないよ」と擁護した。

◆最高賞のパルムドールに輝いたのは、当初から最有力視されていた『ツリー・オブ・ライフ』

 やっぱり、『ツリー・オブ・ライフ』は強かった! 映画祭中盤の16日(月)に正式上映された本作は、孤高の映像作家テレンス・マリックが、自身が育った1950年代の中央テキサスの小さな町を舞台にした家族のドラマを、太古から綿々と続く自然と生命の営みの大きな物語の中に組み込み、詩的な映像で描いた壮大なヒューマンドラマである。物語は、3人兄弟の長男として生まれ、大人になって成功したジャック(ショーン・ペン)が大都会で、その子供時代を回想する形で綴られていく。信仰に厚く、厳格な父(ブラッド・ピット)と自然をめで、愛情深い寛容な母(ジェシカ・チャスティン)。弟が2人生まれ、やがて感じる疎外感。そして両親の間で葛藤し、反抗した日々…。兄弟を演じた3人の子役たちも好演(次男役の少年は驚くほどブラピにそっくり!)しており、何気ない日常の風景を鮮烈に映し出した映像美は圧倒的だ。嬉しいことに、本作は夏に日本公開が決まっているので、乞うご期待!
 しかし、残念ながら授賞式にもテレンス・マリック監督の姿はなく、プロデューサーが代理で賞を受け取った。また、その後に行われた受賞者記者会見の席にはプロデューサー陣に加え、本作をフランスで配給するというリュック・ベッソンも座り、満面の笑みを浮かべて受賞を喜んでいた。
(Report:Y. KIKKA)