さて、公式部門第2カテゴリーの“ある視点”部門も本日、21日で閉幕。19時15分からのアワード・セレモニーに続き、19時45分からクロージング作品『イエリャーナ』が上映された。この部門の審査員は、『パパは、出張中!』『アンダーグラウンド』で2度カンヌを制したセルビア人監督エミール・クストリッツァ(審査委員長)、フランスの女優エロディ・ブシェーズら総勢5名が務めている。

◆授賞式を明日22日に控え、取りざたされる賞レースの行方!

 毎年、映画祭期間中は日刊で映画祭の模様を伝える情報誌が幾つか発行される。英語の“スクリーン”誌とフランス語の“ル・フィルム・フランセ”誌が双璧だが、どちらも最終ページに長編コンペティション部門作品の星取り評価表を掲載している。現時点で評価が高いのはテレンス・マリック監督の『ツリー・オブ・ライフ』とダルデンヌ兄弟の『少年と自転車』。そして、アキ・カウリスマキ監督の『ルアーヴル』、ミシェル・ハザナヴィシウス監督の『アーティスト』、ナンニ・モレッティ監督の『ハベムス・パパム』が続く。河瀬直美監督の『朱花(はねづ)の月』と三池崇史監督の『一命』の評価は残念ながら芳しくない。ジャーナリストたちも参考にしている星取り表(両誌の評価は結構別れる)ではあるが、賞の行方は審査員のメンツ次第。この星取り評価表が受賞に反映されないことも多い。

◆ある視点部門のクロージング上映作は、ロシアの俊英アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の『イエリャーナ』

 19時15分から“ある視点”部門の授賞式(司会は映画祭ディレクターのティエリー・フレモー)が行われた。今年は、ドイツ映画の『途上の停止』と韓国映画の『アリラン』が作品賞を同時受賞。登壇したキム・ギドク監督は賞状を受け取るなり、映画のタイトルでもある有名な朝鮮民謡“アリラン”を熱唱し、客席を大いに沸かせた。それに引き続き、クロージング作品であり、この部門の監督賞も受賞した『イエリャーナ』のアンドレイ・ズビャギンツェフ監督が出演陣を率いて登壇。監督が舞台挨拶した後、『イエリャーナ』の上映が行われた。
 アンドレイ・ズビャギンツェフ監督は、音信不通だった父親の12年ぶりの帰郷に戸惑う兄弟の姿を描いた2003年の映画監督デビュー作『父、帰る』がヴェネチア国際映画祭で、最高賞の金獅子賞と新人監督賞をダブル受賞し、2007年の2作目『ザ・バニッシュメント』ではロシアの俳優コンスタンチン・ラヴロネンコにカンヌ映画祭の男優賞をもたらしたロシア映画界の期待の星だ。長編3作目となる『イエリャーナ』は、人生の後半期に出逢って再婚した夫の心臓発作を機に、ある悲愴な決断を下す初老の女性エレナの姿を描いた、見応えのある作品だ。“ある視点”部門の受賞結果は以下の通り。
(Report:Y. KIKKA)

●ある視点賞
『アリラン』:キム・ギドク監督(韓国)
『途上の停止』:アンドレアス・ドレーセン監督(ドイツ)

●審査員賞
『イエリャーナ』:アンドレイ・ズヴィアギンツェフ監督(ロシア)

●監督賞
『さよなら』モハメッド・ラザルス監督(イラン)