映画祭11日目の21日(土)。“コンペティション”部門の正式上映も今日が最終日となり、フランスのラデュ・ミヘイレアニュ監督の『ザ・ソース』とトルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アナトリア』が上映された。また短編コンペティション部門の出品作9本の正式上映も11時&14時半の2回に渡って行われている。

◆上映作品も減り、マルシェ(見本市)関係者がごっそりと去って、街中はのんびりムードに!

 あれほど賑わい、混み合っていたクロワゼット通りも閑散としてきた。商談を済ませた配給会社や製作会社などのマルシェ関係者がごっそりと去ったせいだが、授賞式を明日に控えた我々報道陣にとってはまだまだ気が抜けないのが実情だ。まずは、朝の8時半からコンペティション部門の『ザ・ソース』を鑑賞。『オーケストラ!』が日本でもヒットしたフランスのラデュ・ミヘイレアニュ監督の長編5作目にしてカンヌ初参戦作となる本作は、アラブの架空の村を舞台に、重労働を強いられている女性たちが地位の向上の為に立ちあがり、セックス・ストライキをする様を寓話的に描いた作品だ。続いて11時半からは映画祭のクロージングを飾る招待作品『ビーラヴド』をプレス試写で鑑賞し、昼食を取る暇もなく、14時半から行われた『ビーラヴド』の公式記者会見に出席することに。

◆カトリーヌ・ドヌーヴとキアラ・マストヤンニの母娘共演に加え、豪華キャストがずらりと顔を揃えたクロージング作品『ビーラヴド』

 『ビーラヴド』は、1960年代と現在を舞台にして、ある母と娘の恋愛遍歴をミュージカル調で描いたフランスの俊英監督クリストフ・オノレの意欲作。ヒロイン、マドレーヌの若き日をリュディヴィーヌ・サニエが、現在の彼女をカトリーヌ・ドヌーヴが演じ分け、その娘のヴェラをキアラ・マストヤンニが演じた上、それぞれが歌声も披露したことでも話題となっている作品だ。男優陣も豪華で、さらにはチェコスロヴァキア出身の巨匠監督ミロス・フォアマンも重要な役で出演している。
 公式記者会見には、クリストフ・オノレ監督、前述の女優3名、男優のルイ・ガレルとラシャ・ブクヴィク、脚本家、音楽家が出席。本作の企画を聞いて直ぐに興味を持ったというカトリーヌ・ドヌーヴは、オノレ監督について、「女性の人物像や恋愛関係の描き方に、いつも感心しています。撮影中もとても優しく、些細なことにも熱心に耳を傾けてくれました」と語り、歌うシーンに関しては「俳優にとって、歌うことは胸が躍ることです。それは自然さを超えた表現方法なのですから」とコメント。また、名匠ミロス・フォアマンの起用について問われたクリストフ・オノレ監督は、「おそらく返事は来ないと思いつつも出演依頼のメールを送ったんだ。すると、“カトリーヌ・ドヌーヴの夫を演じるのは、きっと人生で最後のチャンスだね”と返信してくれたのさ」と嬉しそうに返答。俳優陣にも様々な質問が飛び、実に華やかな会見となった。

◆短編コンペティション部門で上映された田崎恵美(めぐみ)監督の『ふたつのウーテル』

 若き映画作家の登竜門として機能している“短編コンペティション部門”に今年、日本人監督の作品が選出された。田崎恵美(めぐみ)監督の『ふたつのウーテル』は、離れて暮らしていた異母姉弟の出会いと心の揺れを繊細を描いた15分の作品で、タイトルの「ウーテル」とは子宮の意味だ。1987年に大阪で生まれた田崎監督は、お茶の水女子大学に在学する現役大学生で、現在は早稲田大学映画研究会に所属しているという。既に短編2本、長編1本を撮っており、東京学生映画祭グランプリに輝くなど受賞経験も豊富な彼女の今後に大いに期待したいものだ。“短編コンペティション部門”も長編部門と同様、明日に結果が発表される。
(Report:Y. KIKKA)