映画祭6日目の16日(月)。“コンペティション”部門では、伝説的な監督テレンス・マリックの『ツリー・オブ・ライフ』とフランスのベルトラン・ボネロ監督の『ハウス・オブ・トレランス』が正式上映。“ある視点”部門には、奇才ブリュノ・デュモン監督作『アウトサイド・サタン』、“監督週間”では名匠アンドレ・テシネ監督の『アンフォギヴァブル』が登場。

◆注目度No.1の『ツリー・オブ・ライフ』の3回の上映は全て満員札止めとなり、公式記者会見には報道陣が殺到!

 1979年の『天国の日々』でカンヌ映画祭監督賞を受賞した寡作の映画作家テレンス・マリックの監督5作目にして、32年ぶりのカンヌ出品作となった『ツリー・オブ・ライフ』は、1950年代のテキサスを舞台にした家族のドラマを宇宙と自然の営みの映像とリンクさせて壮大に描いた一大叙事詩だ。
 朝の8時半から行われた上映は、2000人以上を収容する会場“リュミエール”が、あっという間に満席となり、急遽裏手にある中規模会場“スワソンティエム”も開けられたが、こちらも満杯状態に! 11時15分から始まった公式記者会見には、3人の息子に対して威圧的な態度を取る厳格な父親を演じたブラッド・ピット、寛容な母親を演じたジェシカ・チャスティン、そしてプロデューサー3人が登壇。公の場に一切登場しないことで知られるテレンス・マリック監督は今回もカンヌ入りしていないため、会見ではプロデューサーも兼ねているブラッド・ピットが、監督の代弁者となって多いに熱弁をふるった。出演者として「独創的な構成にすごく興味を引かれたね。テキサスの小さな町に住む家族のストーリーというマイクロ部分と宇宙の起源や核分裂が挿入されるマクロ部分を融合させ、物事の真理を描き出そうとしている。信じられないほどの驚きだよ」と語ったブラピは、役柄と自らとの共通点を問われ、「僕も南部のキリスト教徒の家庭で育ったんだが、すべては神の御心のままに、ということに疑問を持ったことを覚えている。宗教の堅苦しさに息が詰まる思いもしたんだが、その堅苦しさを“役”に活かしたつもりだよ。この映画は普遍的で多くの疑問を投げかけるし、子供時代というのは、どこに育っても共通点があるはずだからね」と応答。さらに「厳格な父親を演じることには、少し抵抗があったんだ。でも、この物語においてはとても重要なことだし、大切なのは子供のたどる道程だよ。僕自身、いまは自分の子供についてあらゆることを考えるし、“子供が大きくなってこれを見たらなんて思うか”とも考えるけど、彼らは僕のことを父親としてよく知っているからね。できれば“すごい俳優だな”って思ってくれることを願っているよ(笑)」と、父親の顔も垣間見せた。
 そして黒山の人だかりとなった夜の正式上映(ソワレ)時には、父親との確執を持つ長男の成人後を演じたショーン・ペンも駆けつけ、両親役のブラッド・ピット&ジェシカ・チャスティンと手をつないで登場。3人で一旦レッドカーペットの階段を上りきった後、ブラピが妻のアンジェリーナ・ジョリーを迎えに下まで戻り、再度レッドカーペットを歩いたため、大会場前に集まったファンからは大歓声が沸き上がり、フラッシュの嵐となった。

◆『アウトサイド・サタン』と『アンフォギヴァブル』はフランスを代表する2監督による力作

 『アウトサイド・サタン』はカンヌの常連監督で、1997年のデビュー作『ジーザスの日々』でカメラドール特別賞を、1999年の『ユマニテ』で審査員特別グランプリ&主演男優賞&主演女優賞を、2006年の『フランドル』で再び審査員特別グランプリを受賞した奇才ブリュノ・デュモン監督の意欲作。宗教色の濃い前作『ハデウェイヒ』でヒロインをラストで救う青年を演じたダヴィド・ドゥワエルを再び起用。奇跡を起こす謎めいた流れ者の青年役で登場させ、精神的世界を独得の圧倒的映像美で描き出している。
 『アンフォギヴァブル』は19855年の『ランデヴー』でカンヌ映画祭監督賞を受賞した名匠アンドレ・テシネ監督が、『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』の原作者フィリップ・ディジャンの小説を映画化。交通事故で妻と愛娘を目の前で亡くし、心に深い傷を負った60代の有名作家(アンドレ・デュソリエ)が再婚し、女優として輝かしい未来が開けてきたもう一人の娘と人生をやり直そうとする物語で、人気女優のキャロル・ブーケとメラニー・ティエリーが共演している。
(Report:Y. KIKKA)