第64回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2011】4
映画祭3日目の13日(金)。“コンペティション”部門ではイタリアのナンニ・モレッティ監督の『ハベムス・パパム』、フランスのマイウェン監督作『ポリス』が登場。香港のピーター・チャンが監督した『武侠』は“ミッドナイト”上映。“ある視点”部門ではキム・ギドク監督待望のカムバック作『アリラン』などが上映された。
◆『フィフス・エレメント』で知られるフランスの女優
マイウェンが監督&出演した社会派ドラマ『ポリス』
児童虐待やネグレスト、未成年者の犯罪などを担当するパリ警視庁の“未成年保護分隊”の活動を生々しく描いた硬派な群像劇『ポリス』の公式記者会見が、夜の正式上映に先立ち、12時半から行われた。登壇者は、マイウェン監督、出演俳優のエマニュエル・ベルコ、サンドリーヌ・キルベラン、カリン・ヴィアール、ニコラ・ドヴォシェルなどなど総勢13名の大所帯。“未成年保護分隊”への綿密な取材を基に、所属する刑事たちの日々の職務をドキュメンタリータッチでリアルに描写した本作について、マイウェン監督は「刑事たちの情熱が私を映画制作に駆り立てたんです。取材中、小児性愛者と16歳の少女の対決を目撃しました。10年前に起きた事件が明らかされ、被疑者は最終的に事実を認めたんです。私はそこで何か崇高なものを見たような気がしました」と語ったが、分隊の活動を報告するカメラマン役で出演した自身の演技については、「ミスキャストだったわ」と苦笑。本作の共同脚本家であり、刑事役でも登場する女優のエマニュエル・ベルコは、「映画製作上の慣習に対して全く無関心なマイウェンは信じられないくらいの自由を私に与えてくれました。彼女と一緒だといつも何かが動いている。全てがいつでも変更可能なんです。そしてアイデアがあれば、即実行。とても活気のある現場でした」とコメント。
◆15時より催された“ある視点”部門のオープニング作品『永遠の僕たち』の公式記者会見
昨日、12日に行われる予定だった『永遠の僕たち』の公式記者会見が順延されて催された。2003年の『エレファント』で最高賞のパルムドールと監督賞をダブル受賞した奇才ガス・ヴァン・サントが監督した本作は、死にとらわれた若者たちの愛と再生を繊細に描いた異色の青春映画で、主演はデニス・ホッパーの愛息ヘンリー・ホッパー(本作が本格的デビュー作)と『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ。日本の特攻隊員の幽霊という重要な役柄を演じた加瀬亮は、残念ながらカンヌ入りしなかったが、会見にはガス・ヴァン・サント監督、ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、脚本家のジェイソン・リュウ(俳優としての顔も持ち、日本では主演作『神の子どもたちはみな踊る』が公開済み)、プロデューサーのブライス・ダラス・ハワード(名匠ロン・ハワード監督の娘で、『ヴィレッジ』『マンダレイ』に主演した女優)が出席した。
ガス・ヴァン・サント監督は「カンヌ映画祭への参加は、何度体験しても夢のように素晴らしいことだよ。今の“ある視点”部門は、90年代のそれとはかなり違う。この部門は今や映画祭の不可欠な要素だし、どんな形にせよ、この場にいられることを本当に幸せに思う」とコメント。加瀬亮の起用については「映画のプロモーションで日本に行った1991年に知り合った。それで友人となり、日本に行く度に会っているんだ」と語った。また、本作が初プロデュース作品となる女優のブライス・ダラス・ハワードは大学の同級生であるジェイソン・リュウと、やっと念願のコラボを実現できて嬉しいと述べ、ヘンリー・ホッパーとミア・ワシコウスカの初々しい受け答えにも好感が持てる和気あいあいとした会見となった。
(Report:Y. KIKKA)