2月4日(土)、大阪市西区にあるシネ・ヌーヴォXにて『世界インディフィルム決戦』が関西公開初日を迎えた。ニューヨーク国際インディペンデント映画祭にて受賞したバラエティ豊かな4カ国5作品を公開するものだ。
オーストラリアのMirjam Baker & Michael Kren監督による『ZOOT WOMAN-WE WON’T BREEAK』、イングランドのNick Gillespie監督「Imagining Love」、ドイツのTressco監督の「BRU-CE-KAE!」、そして日本からは月足栄一監督『狂い面』と高橋康進監督『ロックアウト』。上映後、月足監督と高橋監督がトークショーに登場した。 司会:富岡邦彦氏(CO2事務局長)

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九州を拠点に活動する月足監督は、1作目『剥蝕空間』が第4回インディーズムービーフェスティバル短編部門に入選。1作目をバックボーンに映像制作会社を設立。しばらくはCMやVPの制作に専念し、仕事が安定して来たことを期に第2作目『狂い面』を制作。地方にいるからこそ世界と勝負がしたいと応募した本作でニューヨーク国際インディペンデント映画祭<、最優秀国際カルトムービー賞>を受賞した。

一方、東京という対極の環境に身を置くのが高橋監督。新潟出身でカリフォルニア州にあるDE ANZA COLLEGEで映画製作を学んだ。卒業後、製作部として『カーテンコール』『夕凪の街、桜の国』『三本木農業高校、馬術部』といった作品に参加する傍らインディペンデントで『ロックアウト』を製作。ニューヨーク国際インディペンデント映画祭で<最優秀国際長編賞>他三冠を達成、さらに11ヶ国の映画祭で入選を果たしている。
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富岡:『世界インディフィルム決戦』の他の監督は普段どんな活動をしているんですか。

高橋:オーストラリアのMirjam Baker & Michael Kren監督に関してはプロとしてお金を貰いながら自分たちの作品を作っているといったスタンスですね。

月足:イングランドのNickは普段BBCのカメラマンをやっています。ドイツのTresscoはプロダクションをしているようでした。ニューヨーク国際インディペンデント映画祭では、自分のように普段はプロとして映像製作に携わりながらインディペンデントでも作品を作っているという人が多かったですね。高橋くんを通じて知り合った東京の人達に話を聞くと全然状況が違っていて、逆に珍しがられました。

富岡:日本の場合は地方ならそういう展開ができるけど、東京では難しい訳ですね。

高橋:プロの世界は予算が厳しく、様々な制約があるのを目の当たりにしています。東京ではロケ場所にしても、ものを調達するにしても予算がかかり過ぎるため、日帰りできる地方で賛同してくださる方々に協力していただいて撮影するといったことが多くなってきました。人のつながりを含め東京と地方との大きな差ですね。地方で撮るかまたはセットで撮る映画が増えているのはそういった事情です。

富岡:今後もお二人はインディペンデントで映画を撮って行きますか。また、今の日本映画の状況も含めて、どういうやり方していかないとダメだと思いますか?

月足:僕は大分県別府市で映画を撮って、海外の映画祭に行き今回東京大阪と上映させていただきました。バンドをしている頃からインディーズにこだわりがあり、インディペンデントの持つパワーに引かれて来ました。上映に関しては、海外の映画祭に挑んだ上で日本で上映できればと思っています。これからも地元で地元の仲間たちとリアルインディペンデントのプライドを持って可能性を追求し、地方発でメジャーの映画を凌駕する作品を作りたいですね。

富岡:これから映画の状況はますます厳しくなると思いますが、メジャーの映画がありきたりの風景でしか撮られてない中、地方からここ数年で様々な作品が生まれています。『サウダーヂ』の富田克也監督はトラックの運転手をしながら2年くらいかけて撮っているし、3月10日からの『大阪アジアン映画祭』でやる『ひかりのおと』の山崎樹一郎監督は元々京都にいて現在は岡山で本業のトマト農家を営みながら映画を撮っています。河?直美監督は奈良を拠点にしていますね。大手とは全然別の、こういった地方発の映画を繋ぐネットワークを作っていければ。一般のお客さんに浸透させるために一定レベルのクオリティの作品を提供できるかという勝負はありますが、そういった作品が増えることでいわゆる“邦画”とは別のものが生まれる気がします。

高橋:僕は海外にマーケットを広げることの重要性をこの映画祭に出したことで感じました。日本人の観客から見た“邦画”ではなく、世界の作品でたまたま日本語であったという風に出来ないかなと。日本の商業映画は日本の観客に向けて作られた作品が多く、我々インディペンデントも同様ですが、産業としても何か突破口を探っていくべきだと思います。小さい存在ながら、観客は日本人だけじゃないってことを意識して映画を作ることで、マーケットが広がり資金も回収出来て、より自由度のある作品が作れるようになっていくんじゃないでしょうか。

★シネ・ヌーヴォXにて2/4(土)〜2/10(金)まで上映
(Report:デューイ松田)