11/19(土)、大阪市北区中崎町にあるPlanet Plus Oneにて、映画『ハイパーミニマルムービーズ!in Osaka』初日トークショーが行われた。ドグマ96主催の中川究矢監督を中心に『オカルト』『バチアタリ暴力人間』の白石晃士監督、『デメキング』『マリア様がみてる』の寺内康太郎監督が撮り上げた自主制作映画群をに加えて村上賢司監督の旧作を加え一挙上映するプロジェクトだ。
初日トークショーに登場したのは中川監督と白石監督の2人。プラネット プラス ワンの代表・富岡邦彦氏が進行を勤めた。

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■■ドグマ96とは
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富岡:『進化』と『ぱんいち夫婦』は中川さんのプロデュース作品なんですね。ドグマ96はどういうプロジェクトなんですか。

中川:約2年前に始めたんですが、基本的に撮影を1日に限定しているプロジェクトなんです。普段僕は映画を仕事にしているんですけど、息詰まり感がハンパない状態で、企画が通らない。業界自体の風通しが悪い。大前提としてお金が廻らなくなっている。

白石:それと、賭け事として商売をしつつ作品を見る目、監督とかスタッフの資質を見抜く目、両方供えてるいいプロデューサーに会ったことがないんです。それだったら自分たちでやった方がいいってことで。

中川:ただお金は掛けられないんで、逆にそれをルールにして、1日だけで面白いことをしようって。短い作品でも何本か集まったらこういう形で上映できるんじゃないかってことで進めて行きました。
僕も将来プロデュース的なことをやっていけたらいいと思ってるんで、それを証明するためにも俺らに小銭を与えれば1日でもこれくらいのことが出来るんだからっていうのを見せたいってことですね。

富岡:中川さんはプロデューサー的な立場でこれまで何人かに振ってきた?

中川:僕の作品以外では2人で、次3本目を作りたいと思ってるところです。

白石:僕もドグマシリーズの中で撮ろうと考えていて。

富岡:白石さんは『超・暴力人間』を自主制作で撮る一方、『オカルト』といった商業映画を撮っていますが、自主制作をもう一度やりだしたのはごく最近のことですか。

白石:99年のぴあフィルムフェスティバルの作品とその後に短編は撮ったのが最後で、11、2年ぶりの自主映画でしたね。

富岡:企画が面白くないとおっしゃってましたけど、DVDのリリースがたくさんあって、その流れでホラー系の作品をたくさん撮られた訳ですね。風通しがよくないなと思い始めたのはここ数年のことですか?

白石;元々思ってたんですけど、経済的に悪化して行くことで当然映画なんてなくてもいいものは制作費を削られて行くので、我々のギャラもどんどん削られていく。少ない予算でやるのにそんな保守的なことでギャラもこれだけしかもらえない。配分おかしくない?ってよりその辺が浮き彫りになって来たっていうか。

富岡:それなら自分たちでやってみようと。『進化』でいうと、その部分をいろんな監督に聞いていったんですね。

中川:将来有望な若者が撮影中に亡くなったというのがきっかけにあったんですけど、みんな何を思ってやっているのかを聞いてみたいなと思って作った作品ですね。今度11/23にやる『放電』は『進化』の同時期に撮った作品なんですけど、自主映画は7、8年ぶりでした。

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■■デジタルビデオの普及と自主制作映画の可能性
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富岡:『進化』の中で村上賢司さんがデジタルビデオが出始めてって話をしてますけど、皆さんデジタルビデオで作品を撮るようになったのが2000年前後くらいですよね。そのタイミングとDVDで低予算で作品を作らせたら商売になるんじゃないかっていうところが重なった。若手の白石さんみたいに映画祭で賞をとったことのある監督に低予算で映画を作らせていくという流れはここ10年くらいですよね。その中で予算はどんどん減ってきている訳ですね。

白石:その代わりハード面でどんどんカメラが進化して来て、一眼レフのカメラで撮れるようになってきました。インディペンデントでも我々よりもちゃんと金をかけて、商業映画として劇場で公開されているものもある時代になって来ました。

富岡:商業映画と変わらないクオリティの機材が自主制作でも使えるようになって来たと。

白石:そういう意味でも、普通に劇場公開されているものに匹敵するクオリティで作ることはできるなっていう思いがあってやっています。

富岡:丁度デジタルビデオが普及して10年くらいですが、ここ1、2年でDVDの販売の小さい会社が倒れたりしてますから、もう無理だなと。それなら自分たちで管理して、自分たちで面白いものを作って上映していこうということですね。

中川:あと7、8年くらい前だと単館系の映画がもうちょっと盛り上がってたんですよ。『ピンポン』とか中島哲也さんの『下妻物語』とか。あの頃だったら本数も多かったので作ったとしてもクオリティ的にきついんじゃなかってところもあったんです。今だと、元気のある単館系でやってる映画って、あることはあるんですけど本数が違う。当時だと東京の単館系でやっている映画は大体分かったんですけど、今は何処で何をやっているか正直知らないですもんね。そんなこともあって僕らの映画もいけるんじゃないかと思ってやっています。

白石:あと、足掻きですね。収入がどんどん減って行く中で、何かしらの突破口を見出したいということで我々としては又作るしかないんで。これが評価されれば更に先につなげていくことができるんじゃないかって思いです。未来を考えた場合にこれを持続させるのが目的じゃなくて、きちんと金の儲かる状態にしたい。金を得て面白い映画を作っていくという風に広げていきたいんです。

富岡:それは自分たちで作って行くというのとは違うんですね。

白石:いやちょっと迷ってるんですが、その可能性もありますね。自分たちで会社にしてやって行くのか、インディペンデントで自分たちで配給する力をつけていくのか。その辺も模索中ではありますけど。

富岡:もっと若い監督たちがそれに近いことをやり始めていて、東京で言うと『サウダージ』が話題になっていたり。彼は世代的には白石さんたちと同じくらい?

白石:ちょっと上ですね。『サウダージ』もそうですけど、僕らより先にそういう事に手をつけ始めて時間を掛けてやっている人たちはたくさん居ます。東京では自主映画を作っている人たちは多い。上映スペースとか小さい劇場で毎週何十本と自主映画が上映されていて、短編中編が多いんですけど、何を見ていいのか分からないくらいの飽和状態になっています。そこから飛び出るために模索しないといけないですね。

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■■各監督の過去作・日替わり短編について
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富岡:中川さんの『放電』は2、3年前の作品ですね。白石さんの初期の作品で『あの子は雲の上』は、Hiエイトで撮ったものです。
寺内さんの『WY』は、僕が主催した映画祭“シネトライブ2002”でカードを2枚引いて、テーマに沿ったものを来年までに撮ってくるって企画から生まれた作品です。当時は山下敦弘さんや本田隆一さんが大阪に居た時で、二人とも10分くらいの適当なものを作って来たんですが、寺内さんだけが1時間もある力の入ったものを撮って来て。『進化』の中でも言ってたんですけど、焦りもあったんでしょうね。大学のときは同じようにやっていた同世代の山下が頭1つ抜け出したってことで。これはシネドライブで上映しただけで東京では1回くらいしかやってないんじゃないかな。もったいないと思ってたので今回はいい機会になりました。

白石:村上賢司監督の『高崎観光ビデオ』は『夏に生まれる』っていうゆうばりでグランプリを獲った作品が東京で上映されるときにおまけ映像としてつけた作品なんですが、実は『夏に生まれる』より笑いを多く取って、僕なんかも村上さんの最高傑作だと思ってます。

中川:半日くらいでさくっと撮った作品なんですが(笑)。

富岡:10年ほど前の作品で、うちでも上映したんですが、某当時話題になった団体を扱ったものでインパクトありましたよね。
村上さんのもう一本『HIHOKAN』はポルトガルのペドロ・コスタに撮らせていたプロデューサーが世界中の若手の監督に制作費10万5分で撮らせたいって言って来て、一本は村上さんに、もう一本は唐津正樹さんにお願いして作ったものです。それぞれの国に元々あったオリジナルの文化が外国の影響によって変化するっていうテーマで企画を出せというもので。唐津さんは“包む”っていうテーマで風呂敷からラッピング、過剰包装に至るところまでをドラマにしました。
村上さんのはちょっと強引だったんですけど、秘宝館をテーマにして(笑)。本来日本では菊人形などをを愛でる文化があって、エロ文化もあった訳です。西洋人が入ってきたときにそういうものを露骨に出しているのは恥ずかしいといったことで無理やり博物館に放り込んで…。これは本当か嘘かは分からない(笑)。初めての上映なので、ぜひ観てください!

白石:最後に『ハイパーミニマルムービーズ』は、名古屋で上映期間中に現地入りして撮影して、その場でそのまま上映した作品です。それぞれ5分前後ずつ、僕の作品で主演しているのは『超・暴力人間』の宇野祥平くんです。

中川:今日は来ていただいてありがとうございました!

(Report:デューイ松田)