エンターテイメント大作『オーシャンズ13』から、アカデミー賞監督賞受賞の社会派サスペンス『トラフィック』まで幅広いジャンルを手がけ、世界で最も目が離せない監督の1人となったスティーブン・ソダーバーグ。

全米初登場1位を記録した待望の最新作『コンテイジョン』は、新種ウィルスの見えない恐怖と、その恐怖に翻弄される人類の姿を、世界規模のロケーションと、マット・デイモン、マリオン・コティヤール、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレットなど、いずれもアカデミー賞常連の超豪華キャストで描いた超一級品のサスペンスです。
そして、本作の11月12日(土)の全国公開に先立ち、本日、本作のメガホンを取ったスティーブン・ソダーバーグ監督が、来日記者会見を行いました。

日時:11月10日(木) 13:00〜
会場:グランドハイアット東京(六本木)
登壇者:スティーブン・ソダーバーグ監督

【会見】

Q:まずはご挨拶をお願いします。

■スティーブン・ソダーバーグ監督:
日本には3年ぶりに来ました。今年3月に日本で大変な出来事が起こりましたが、早く日本のみなさんが以前までの生活に戻れるようになって欲しいと思っています。

この作品は、人間は、究極の状態に置かれた時、どう対応するのかを描こうと思って作りました。

Q:マット・デイモンに脚本を送った際、読み終えたら「手を洗うように」と伝えたそうですが、現場でも何か対策を取ったのでしょうか?また監督も撮影後、何か変化はありましたか?

■ソダーバーグ監督:
この作品に関わって、ウィルスのことを考えないのは、やはり不可能だと思います。私自身も忘れたわけではないですが、閉鎖された飛行機の空間やトイレなどは、やはり少し怖いですよね。でも、もちろん人と普通に握手はしますよ(笑)。

ただ、映画として考えた時に、目に見えないウイルスを敵として描くのはいいなと思いました。例えば「トラフィック」であれば、麻薬は避けようと思えば避けられますが、ウイルスは、全ての人に関係してきますからね。
ですから、映画のテーマとしては凄くいいなと思いました。

Q:とても豪華なキャストが出演していますが、出演はどうやって実現したのですか? また配役は難しかったのでは?

■ソダーバーグ監督:
今回の作品はアンサンブルで沢山のキャラクターが登場しますが、どちらかと言えば、その分、各自の撮影期間も短くなるので、忙しい俳優たちも出演してくれたのではないでしょうか。

何より重要なのは、映画自体がスピードある展開なので、映画を観ている観客が、そのロープに掴まってストーリーに付いて行ってもらうために、演技力のあるスターが沢山必要だったんです。

Q:WHO(世界保健機関)など、実在の機関や研究者に綿密なリサーチを行ったそうですね。

■ソダーバーグ監督:
大規模な調査を行って、膨大な量のシーンを撮影したのですが、映画のリズムを加速させ、スピーディーに展開させるために、その中から1時間はカットしました。

映画を何本か作るか、あるいはミニシリーズにも出来たかもしれませんね。

Q:とてもリアリティがありましたが、どのように撮影を行ったのですか?

■ソダーバーグ監督:
1つ例を挙げると、マット・デイモン演じる夫が、集中治療室で医師から妻の死を告げられるシーンがあります。そのシーンの撮影はなかなか上手くいかなかったので、撮影コンサルタントとして参加してくれていた、ER(緊急救命室)の医師に、そういった場面での反応を聞きました。

彼の話だと、悲しみに耐えられずに興奮するか、もしくは亡くなった事が信じられずに、「実際に話をしてもいいか」と医師に聞く場合の2つのリアクションがあるそうです。

今回の映画では、コンサルタントにヒアリングをした上で撮影しているので、他の作品とは違った作品に仕上がったのではないかと思っています。

Q:映画では、ウイルスよりも恐怖状態に陥った人々の恐怖を描かれていたのが印象的でしたが、演出する上で難しかった点を教えて下さい。
また、監督自身が恐怖を感じるのは何ですか?

■ソダーバーグ監督:
生きてはいるけど、説明しても説得できないものを敵として描くのが難しかったですね。

僕自身が恐怖に感じるのは、自分が感じている感覚が、他の人が感じている現実とは違うことが分かったら、混乱してしまうでしょうね。

Q:マット・デイモンをはじめ、本作に出演した役者たちが、ソダーバーグ監督の作品だから出演したと発言していますが、どうしてみんながそう言うのだと思いますか?

■ソダーバーグ監督:
こういうと驚くかもしれないけれど、僕は俳優たちが好きなんだ。

世の中には俳優を嫌っている監督もいるみたいで、俳優たちから信じられないような話を聞くこともあるけど、自分自身をさらけ出すという、怖い仕事をしている彼らの努力に対して、僕自身は敬意を払うし、お互いに尊重しているから、例えばマットとも6回目の仕事が出来たんだと思います。