園子温監督最新作『恋の罪』が、11/12(土)より、テアトル新宿ほか全国にて公開いたします。本作は、渋谷区円山町ラブホテル街で起きたエリート女性殺人事件からインスパイアされた、園子温が大人の女性を描いた、美しき極上エンターテインメント。
公開に先駆けて、作品の舞台である円山町で監督・園子温、水野美紀、冨樫真、神楽坂恵が登壇しての完成報告会見を行いました。クランクアップ後の打ち上げ以来、4人が初めて一堂に会して行われた記者会見が行われた。

■日時:11/2(水)
■場所:オーディトリウム渋谷(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS2階)
■出席者:園子温、水野美紀、冨樫真、神楽坂恵

冒頭挨拶:
水野美紀「やっと公開ということでワクワクしています。前からファンだった園子温監督の作品に出られるというのは自分にとって大きくて、この作品に参加できて幸せです」
冨樫真「この作品の中で生きられたことがすごく幸せです」
神楽坂恵「私にとってとても思い出深い作品で、いずみという役柄になりきれなかったら、女優をやめようかと思ったぐらいの気持ちで臨んだ作品です」

水野さんは、仕事と家庭での充実を得ながら満たされない女性・和子という、これまでのイメージを覆すようなチャレンジングな役柄について「最初に脚本を読んだ時から特別な人という気がしませんでした。でも、取材を受ける中で、女性の記者はキャラクターに対して、女性はそういうものという“共通言語”を持っているのに対して、男性は“この役はすごく役作りが難しかったのではないか”と聞いてくる、その違いが面白かったですね」と答え、長年ファンだった園監督の作品への念願の出演について、「オファーをいただいたのは『愛のむきだし』を観た後で、嬉しかったけど、ドキドキしました。いつも画面の外側で観ていた園監督の世界の中に、自分が出てくるのが不思議な感じがしました」と感慨深くコメント。

冨樫さんは、昼と夜のふたつの顔を持つ美津子というキャラクターが憑依したかのような強烈な印象を与える演技について「憑依してたのかもしれないです。役作りも、何をしても半端になる気がして、現場の空気感を大事にして、自分で変に作りこまないようにしていました」と振り返りました。
ベストセラー作家の妻から大きく自分を解き放ったいずみを演じた神楽坂さんは、ハードだった撮影を振り返って「リハーサルがすごく厳しくて、『冷たい熱帯魚』の時も今回も、すごく追い込まれましたが、監督の求めるものがさらに大きく、強くなっているので、それに応えられるように頑張りました。自分に嘘を付かないで向き合い、もっと知ることを学んだし、それが私にとっての役作りでした」と全身全霊で作品に臨んだことをコメント。

園監督は、『恋の罪』の製作に当たって二重生活をする女性たちを実際に取材。その感想として「取材の中で浮かび上がってくるのは、社会や家庭、性といった女性ならではの抑圧で、それが中心になる映画を作ろうと思いました。抑圧と、それからの解放についてですね」と着想を得たとのこと。日本版SEX and the CITYと呼ばれていることについて「この映画を作り始めた頃、人に聞かれたので、分かりやすく “日本のSEX and the CITY・・・の裏通りバージョンかな”と答えたんです。SEXと円山町、という。若い女性の映画は日本に沢山あるけど、成熟した女性を赤裸々に描く映画は今は少ないから」とコメント。
 
作中、冨樫真さんと神楽坂恵さんの共演シーンが多く、全く異なるキャラクターふたりの対比も見もの。
神楽坂さんが「冨樫さんと一緒だった全てのシーンは記憶に残っています。冨樫さんは芝居に限らず真摯な方なので、私も新人として見習って、もっと頑張らなきゃと思いました」とコメントすると、冨樫さんは「時間も一緒に長く過ごして、お互いの痛みを知っているというか。神楽坂さんの涙の数が印象的でした」と神楽坂さんを気遣うコメント。

一番大変だったシーンについては、「遺体解剖のシーンですね。本物のウジ虫を這わせてるんですが、独特の匂いに血糊の匂いなどが混ざってすごい匂いで、その動きが意外と速くて撮影中飛んだりするので、皆で捕まえて戻したりして・・・(笑)」と水野さん。冨樫さんは「喋るときにすごく喋る役柄だったので、その言葉が嘘にならないように心がけました」とコメント。

水野さん扮する和子の愛人役として強烈な印象を与える児嶋一哉さん(アンジャッシュ)について、水野さんは「電話で話すシーンがあるんですが、声がすごく役にマッチしていて・・・。普通にしていても、普通じゃない人に見えて、児島さんとのシーンは楽しんでできました」と振り返り、園監督は、オーディションで純粋に演技が素晴らしかったことが起用理由と語りました。

また、この度の園監督、神楽坂さんの婚約報道について、園監督が「私の“恋の罪”でお騒がせしてどうもすみません」という絶妙なコメントで記者たちを沸かせる一方、神楽坂さんは「園監督とは『冷たい熱帯魚』『恋の罪』という2作品を通して人としても女優としても成長させていただきました。これからも精進して頑張ります」とコメント。

本作は、第64回カンヌ国際映画祭での熱狂のスタンディングオベーションに続き、先日行われた第44回シッチェス・カタロニア国際映画祭ORBITA部門において最優秀作品賞を受賞いたしました。
今後は、台湾で12月に公開されるほか、香港、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア・・・等々30ヶ国以上での公開が決定しております。こうした評価について、園監督は「外部的な評価は気にせずに、淡々と撮り続けていくだけです」とマイペースに制作していくことを宣言しました。