『羅針盤は死者の手に』のゲストをお迎えし記者会見が行なわれました。

■ 日時・場所 10月28日(金) 15:30〜 @ムービーカフェ
■ 登壇者 アルトゥーロ・ポンス(監督)、オスカル・ラミレス・ゴンサレス(プロデューサー)、アンナ・リベラ(衣装)

アルトゥーロ・ポンス監督(以下「監督」): 毎日楽しく過ごしています。先ほどメキシコのプレスから私が今バルセロナに住んでいるからですが、「受賞を約束されてバルセロナを出なくて済むのと、受賞はできないけど日本に行くことができるとしたら、どちらがいいですか?」と尋ねられました。もちろん私は日本に行く方だと答えましたよ!

オスカル・ラミレス・ゴンサレス: 何年も前から是非参加させていただきたいと思っていました。とりわけ他のどの作品でもなく、この作品で参加できることを非常に嬉しく思っています。

アンナ・リベラ: この作品を撮り始めてから素晴らしい経験ばかりで、日本にも是非また戻ってきたいですし、映画制作にも参加したいと思っています。

Q: 愚問かもしれませんが、何故死者が羅針盤を持ったのですか?
監督: 理由は3 つあります。ひとつは、私はファン・ルルフェという作家が好きで、影響を受けています。彼は、物語を書く時に、その最初フレーズを題名に使います。今回僕は、その逆に映画の最後のフレーズをタイトルにしました。二つ目は、「どんな映画?」と尋ねられた時に、「死者がコンパスを持っているという映画」と簡単に答えられること。三つ目は、実は色々とメタファー(隠喩)があるのですが、これについて説明をするには数時間必要になるので・・・
司会を務めていた矢田部ディレクターが「監督は、そのお人柄からもお願いすれば、今夜すぐにでも数時間かけてその話をしてくれそうですが・・・」とコメントすると、監督は笑顔でうなずきながら日本語で「シシャノラシンバン!」と。そして「こういうタイトルだと外国語(スペイン語以外の言葉)のタイトルを覚えられなくて困るけど、邦題はちゃんと覚えたよ。イイネ!」とお茶目なコメントをくださいました。

Q: 映画の中の二つの場面で、主人公が「僕の名前はイノセンシオ、あだ名はチェンチョ」と言いますが・・・
監督: メキシコでは、通常お互いをニックネームで呼び合います。僕の名前はアルトゥーロですが、周囲の人には「チェンチョ」と呼ばれています。チェンチョは、スペイン語で「サル」という意味です。映画の中の主人公の名前はイノセンシオ。「純粋」という意味。ニックネームはチェンチョですが、これには特に意味はありません。ちなみに、彼の名字は「ウルターノ」、「盗まれた」という意味です。つまり、彼の名前に「盗まれた純粋さ」という意味を持たせました。「マルティネス」は、「殉教者」という意味です。

Q: 4 人で始まりどんどん人が増えていくのですが、ほとんど男性ですよね?
監督: 17 番目のシーンで女性たちが男の人たちが皆いなくなってしまったという話をしていますが、あのような状態で移民するのはたいてい男性なのです。あのような条件で旅をしなければならないので、男性の方が多いわけです。

Q: 映画の撮影にもアクシデントはつきものだと思いますが、何かおもしろいエピソードはありましたか?
オスカル・ラミレス・ゴンサレス: すべて順調に、これほどスムースに撮影が進んだ映画はありません。通常は、問題がひとつや二つあるのでしょうが、スタッフもキャストもチーム全体の相性が良くて、何もかも上手くいきました。強いて言えば、チャンゴの撮影の仕方です。私は、撮影初日だけ撮影に立ち会い、その後映画のセールスのためにアムステルダムに行かなくてはなりませんでした。そこで、スタッフに毎日ラッシュを送ってもらうことにしていました。最初に送られてきたのはたったの1 ロール。全部送れと連絡すると、撮ったのはそれだけだと。次の日、やはり2 ロールしか届きません。「もっと接写とか、他に撮るものはないのか。予算は十分にあるからもっと撮って!」と言ったのです。その次の日、4ロール届けられました。観てみると、その半分は彼がスケートボードをしている映像でした。クルー全員を使ってハイスピードカメラで撮ったようです。そして彼からは、「大丈夫。ちゃんとやっているから」というメールが来ました。それ以降は口出ししないで任せることにしましたよ。

監督: スケボーの方の映像は、YouTubeで観てね!