先日、第35回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門に正式出品され、見事、イノベーションアワードを受賞した、映画『アントキノイノチ』(11月19日公開)が、この度、第16回釜山国際映画祭にも出品され、主演の1人である岡田将生と瀬々敬久監督が舞台挨拶に登壇いたしました。

岡田将生は、昨年の主演映画『雷桜』(廣木隆一監督)でも釜山映画祭に参加しており、2年連続の主演映画出品ということで、多数のお客様の大声援の中、イベントが行われました。

■第16回釜山国際映画祭 舞台挨拶 概要
【日時】10月13日(木)19時上映開始
21時11分〜41分(舞台挨拶、Q&A)※時差なし

【場所】ロッテシネマ センタムシティー店 SCREEN4
【登壇者】岡田将生、瀬々敬久監督

【会場の様子】

319席の客席は満席を超え、場内は溢れかえりました。上映中には、すすり泣く声も。主演の岡田将生が登場すると、悲鳴にも近い叫び声が発生し、上映終了後、舞台挨拶とQ&A開催のアナウンスが流れると、会場後方の席に座っていた観客がステージ近くに殺到、前方通路は人が通れなくなるほどに。
会場は少しでも間近で岡田を見ようとする人々の熱気で溢れていました。

Q&Aが終了し、司会者が監督と岡田に退出を促すと、観客がステージに殺到、岡田はサイン攻めにあい、韓国での岡田の人気が証明される形となりました。

【岡田将生ご挨拶】

◆岡田将生:
みなさん、こんばんは岡田将生です。映画はいかがでしたか?
心に響くものがあったならとても嬉しいです。韓国最高!釜山最高!
(韓国語で)」

Q:映画の冒頭で杏平が屋根の上で裸で座っていたシーンは、どんな意味があるのでしょうか?また演じられてどんな気分でしたか?

◆瀬々敬久監督:
最初のシーンは岡田君扮する杏平が高校生の時、同級生を殺そうとしてしまった後、心が壊れてしまったということを描いています。

脚本では、ベランダに裸で座っている杏平を、お父さんがやめさせることになっていたんですけれど、ロケハンの際、いいベランダがなかったので屋根にしました(会場笑)。お父さんのシーンも撮ったんですが、それはカットしました。山の重要なシーンがある映画ですので、高いところから街を見下ろすというイメージ繋がればいいなと思ったところもあります。

◆岡田:
とても寒かったです(会場笑)。住宅街だったので、知らない方が撮影現場を通った時にビックリされてました。(会場笑)

Q:(岡田さんに)最も愛着のあるシーンは?

◆岡田:
全部好きですが、その中でもラブホテルのシーンです。脚本では、最後に自分が泣くことにはなっていなかったんですが、なぜか分からないですが、とても感情が溢れてしまいました。だからあのシーンが最も愛着がありますね。

Q:(瀬々監督に)海辺の「元気ですか?」というセリフを入れた思いは?
岩井俊二監督の『Love Letter』を連想しますが。

◆瀬々監督:
韓国では『Love Letter』が有名なので、その質問は絶対に出るだろうと思ってました。私は『Love Letter』も観てます。「元気ですか?」は、日本のプロレスラー、アントニオ猪木さんの決め台詞なので使っています。

そしてこの映画の撮影中に地震が起こりました。今、日本は大変ですけれど、その中でみんなに「元気ですか?」とメッセージを訴えたい映画を作ろうと思いました。「元気ですかー!?」(会場笑)

Q:主人公が心の病気で言葉が詰まるシーンもありましたが、演技中、もどかしかったり大変でしたか?

◆岡田:
それは吃音という病気で、吃音というのはその人によって違いがあって、そのなかで永島杏平という人間の吃音をどう表現しようかとすごく悩みました。
撮影中、僕の中ではセリフをハッキリと言いたいという時に吃音があると、それを忘れてしまったり、逆にやり過ぎてしまうところもあって、とても大変でした。

Q:今年見た映画の中で1番好きでした。韓国でも人と人とのつながりが薄く、冷たい社会になって、お互い嫉妬したりしていますが、無条件に与える友情とか人への関心がもっと増えるにはどうしていけばいいでしょうか?

◆瀬々監督:
非常に嬉しい感想をいただいて喜んでいます。

釜山の前にモントリオールでも上映して、そこでも、カナダやアメリカの人が自分たちの国でも同じようなことがあると言っていました。
今の世界で共通する問題だと思っています。

この映画を作りながら思ったのが、他人の事をどれぐらい思ってあげられるか。
若い頃はみんな、自分の事で一生懸命なんですが、そればかりではなく、他人の事を思い、気づかう。そうする事でもっといい世界になると思います。
人と人との間、国と国との間にもあると思います。日本と韓国も、もっとより良い関係になれたらいいと思います。カムサハムニダ。

Q:日本の映画とても好きで、たくさん観ています。日本の俳優では、岡田将生さんが1番好きです。これまで出演された作品で、1番自分に近い役柄はどれですか?

◆岡田:
僕自身、これまではいつも、今までやってきた役は全部、自分とは違うと思って演じてきました。それは自分を見せるのがとても恥ずかしくて、「あれを自分だと思って欲しくないな」という子供のような気持ちからきたものです。それが今回は永島杏平として見てもらってもいいし、岡田将生として見てもらってもいいと思っています。今回の杏平は、1番僕に近いのではないかと思っています。

Q:「おくりびと」の展開と重なった印象でしたが、この映画の素材に着目されるようなきっかけがあったら教えてください。遺品整理業に着目されたのも気になります。

◆瀬々監督:
これは原作があってそれを映画化したものです。
その原作がおもしろいと思ったのが、孤独死とか無縁死いう高齢者の
問題なのですが、それを若い男女がその事実を見つめているという視点が
おもしろいと思いました。

実際に遺品整理業というのは日本にある仕事です。この映画を企画して脚本を書いている頃は、日本は人と人との関係が薄いといわれた頃で、それはどうしてなのかということを考えようと作った映画です。

ただ撮影中に震災が起こり、震災後のがれきの中で、遺品や写真を探す、ということがたくさんありました。やっぱり人間というのは、人と人とのつながり、関係性を求めているのだという事をあらためて感じました。
人と人とのつながりを大切にするような社会になるように、この映画を観ていだけたらいいなと思います(会場から盛大な拍手が発生)。