会場:新宿 K’s cinema
登壇者:韓英恵 笠井しげ 井上淳一 片嶋一貴<監督>

10月15日、ネットや各種メディアでは賛否両論の話題作と取り上げられた、『アジアの純真』が初日を迎えた。
劇場のロビーは開場を待つ人で賑わっており、期待値の高さがうかがえた。

本作のメガホンをとった片嶋監督は、若松孝二・井筒和幸・村上 龍・岩井俊二などエッジの利いた作品を送り出す監督達の助監督を勤めたきた経歴の持ち主である。
今回の『アジアの純真』も、在日朝鮮人の問題や日本人拉致問題などシビアな問題を取り扱いながら、気弱な男子と強気な女子がある復讐を成し遂げようとするロードムービーに仕上がっている。

上映前には主演の韓さん、笠井さんと脚本を手がけた井上さん、片嶋監督が登壇し初日を迎えた喜びを語ってくれた。
主演である韓さんは、「本作出演後は自分自身に真っ直ぐ向き合うことができました。自分はハーフで22歳までに国籍を決めないといけないのですが、この作品に出会えて見つめ直すことができました」と自分を強く投影した役を演じたことを、しっかりと力強く語ってくれた。
また「この作品は2年前に撮影されたもので、まだ10代でピュアだった時にこの作品に出会えたことに感謝している」と本作への強い思い入れも語ってくれた。
気弱な男子高校生を演じた笠井さんは「劇中は2年半くらい前の自分で顔や演技も今とは全然違います。そこを楽しんでいただければと思います」とはにかみながら語っていた。

海外の映画祭でも好評を得た作品となっており、実際に世界を回って映画祭に参加した井上さんは「国内映画祭では難色を示す映画祭も多くあった中で、海外の映画祭ではどういう反応をされるのであろうか不安ではありました。上映後のティーチインでは、海外の場合ダメだと思われたらすぐ席を立ってしまうのですが、残ってくれた方たちからは好意的な意見がたくさん出ていました」と海外での反応も上々だったことを報告した。

本作は監督である片嶋さんが代表も勤めるドックシュガー(映像企画制作会社)の完全自主映画でもある。
そのような立場でもある片嶋監督からは「低予算でこのような内容のものが、現在ではなかなかできにくい感じにはなってきている。ドックシュガーの中でもドックシュガーアバンギャルドというレーベルを作って、自分達の作りたいものを作り配給までしちゃおうという企画の第一弾がこの作品です。日本・海外問わずに映画界に必要なのは多様性だと思うので、いろんな映画を作れる・観れる環境が必要になっていくのだと思います」と映画界が進むべき道を片嶋流に語ってくれた。

本作は全編で白黒の映像となっており、その質の高い映像も特徴である。
近年では、光と影の美しさが際立つ白黒映像を堪能したことが無い人たちも多いと聞くため
モノトーンの美を広める作品として、世の中に広まれば良いなと思う。

(Report:有城裕一郎)