父の遺した“エンディングノート”が開かれる、その時まで。人間味あふれる父とその姿を見守る家族を娘が描いた、感動のエンターテインメント・ドキュメンタリー映画『エンディングノート』が本日より公開となりました。先ほど、新宿ピカデリーにて満員御礼の中、初日舞台挨拶を行いました。

膨大な映像記録から「家族の生と死」という深淵なテーマを軽快なタッチで描き出したのは、大学在学中よりドキュメンタリーを学び、卒業後はフリーの監督助手として是枝裕和らの映画制作に従事、本作が初監督となる砂田麻美。プロデュースに、『誰も知らない』『奇跡』など映画監督として第一線を走り続ける是枝裕和。そして主題歌「天国さん」はハナレグミの新曲、劇中音楽全編もハナレグミが制作。

■日 時:10月1日(土) ■場 所:新宿ピカデリー スクリーン6 (9F) 

■砂田麻美監督(33):本日は、主人公が遠いところにおりまして・・・(笑)代わりに、私からご挨拶をさせていただくと、もし、父がここにいたら、「私事でお騒がせして申し訳ありません」と言うと思います。私も父も、こんなにたくさんの方に観ていただけるとは想像していなかったので、多分、父は驚いているだろうと思います。父が亡くなって3か月たってから編集を始めたんですが、これが人目に触れるということは全く考えていませんでした。大事な人を亡くされた方というのは、それぞれ自分の方法で変わっていくと思います。私の場合は、それが編集するということでした。自分のためであったり、家族のためであっても、それ以外の世界中の人に見せるものであっても、自分の中での作品の作り方は変わりません。父と娘の物語に終わらせたくなくて、自分が一人の人間を見送った時に、見て、感じた、哀しさだったり、不思議さだったり、その色々な感情を普遍的な物語にしたいと思いました。父のキャラクターがぶれないというか、最後まで変わらなかったことにある種の感動を覚えました。人間なので、身体の変化とか気持ちの変化で、もっと新しい父親の側面が見えることがあるんじゃないかと思っていたのですが、几帳面で熱血サラリーマン、自分で色んなことを把握していたいという性格は旅立つまで変わりませんでした。父の「生」に向かっていくエネルギーみたいなものを、皆さんと共有できたらうれしいです。

■是枝裕和プロデューサー(49):
すごく小さい作品として産み落としたのですが、本日、足を運んで下さった皆様のおかげで素晴らしい初日を迎えることができました。今日、スタートなのでここからできるだけ多くの人に、遠くの人に、この映画を届けていきたいな、と思います。(作品をプロデュースしたきっかけについて)この映画が、父と娘の物語に閉じてしまっていたら、「いいお父さんだね、じゃ、仕事しよっか」となったと思います(笑)。初めて観た段階で、もう今の形にほぼ出来上がっていたので、笑って泣けて、泣けることよりも笑えることが中心にあって、非常にエンターテインメントとして観てもらえるものに仕上がっていました。これは劇場公開できるようにきちんと応援しなければと思いました。(編集についてのアドバイスは)ほとんど出来ていたので、僕が言い続けていたのは「もういじんなくていいよ」ということを言い続けていたんだけど、まあ、いじるわいじるわ(笑)。監督ってそういうものなんですけどね、親子でもないのに、嫌なところばかり似るんです(笑)。だけど、その粘りには頭が下がる。根っこにあるのはお父さんへの愛情だと思うんですが、それが太いというか、しっかりしているのかな、とこの作品を観て思いました。お父さんの性格を受け継いだお兄さんが登場するシーン、ほっとしますね。「もう思い残すことないね」とか時々残酷なことを言ってるんですが(笑)、救われる。お兄さんが帰国して、自分の子供に母校を見せているシーンがすごく好きです。お父さんが亡くなったあとに続いていくものに対する意識、ああいう編集が癪にさわるほどうまいですね。