トラブル続き!?それでも満席の客席から拍手喝采
海外映画祭も続々出品決定!

公式上映(「Midnight Madness」部門)■日本時間9月17日(土)

上映  / 日本時間 12:59 [現地時間 9/16(金)23:59]
ティーチイン/日本時間 15:00 [現地時間 9/17(土)2:00]

□ 会場:RYERSON THEATRE(Public1)
出席:石井克人監督

「悪人」で日本アカデミー賞主演男優賞を受賞した、妻夫木聡主演最新作「スマグラー おまえの未来を運べ」が、第36回トロント国際映画祭で、石井克人監督出席のもとワールドプレミアを行った。出品された部門は、「Midnight Madness」部門で、エンターテインメント性と作家性が高い個性的な作品が選出される目玉の部門の一つである。一般の目の肥えた観客が審査することもあって、アカデミー賞の前哨戦とも言われる。映画祭の会場は華やかでブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、マドンナなどハリウッド勢からの参加も多い。

上映は、1230席の大会場で行われた。上映後、『鮫肌男と桃尻女』(99)で同映画祭へ出品して以来の参加となる石井監督のティーチインを行った。観客は徹夜で『スマグラー おまえの未来を運べ』の上映チケットを買い求め、チケットは速効でソールド・アウト。熱狂的な映画ファンが会場に詰め寄り、世界的映画監督の新作のお披露目に注目が集まっていた。男性ファンが多いように思われる石井作品だが、妻夫木聡や安藤政信といった、世界で活躍する映画俳優が集まった本作ということもあり、男性女性の比率は半々。年齢も映画祭ならではの、若い人から年配の方までで幅広い年齢層となった。『茶の味』(04)ではカンヌ国際映画祭の監督週間で日本映画初のオープニング上映を飾り世界中の注目を集める、世界レベルの映画監督の登場とあって、満席の会場内は上映前から熱気に包まれていたが、なんと上映機材の問題により上映開始が1時間も遅れるトラブルが起こった。現地では25時という深夜の上映ということもあり、一瞬不安な様子になった関係者たちだったが、その心配をよそに観客は誰1人席を立たずに石井作品の新作を今か今かと待っていた。世界の石井の人気を裏付ける決定的な瞬間となった。

実は、この日の監督は当日の現地入りもフライトの問題により3時間遅れで入国。到着後すぐに会場入りした監督は入場前のレッドカーペットでファンにサインをせがまれたり、取材陣からもコメントを求められたりしていた。入場の際には大きな拍手で迎え入れられ、石井監督も「こんな遅い時間にきてくれてありがとうございます。今回は結構マジメに作りましたので楽しんで下さい!」と満席の会場にほっとした様子。

上映が始まると、オープニングクレジットの妻夫木聡、永瀬正敏、安藤政信の名前がでる度に歓声があがり、石井監督のクレジットではそれまでで一番大きな拍手がわきおこった。体を張ったアクションシーンや妻夫木聡が窮地に追い込まれるシーンなどは、固唾をのんでスクリーンに釘付けの様子だが、緊迫したシーンの合間でおこるコメディシーンや、砧のダメっぷりには笑いもおき、石井克人作品のブラック・ユーモアが伝わった様子。
エンドロールでは観客からの拍手喝采で、トロント全体に響き渡るような熱気に包まれた。上映後には、「ブラボー!」「ファンタスティック!」の声がおこった。

ティーチ・インでは、「漫画と映画で変えた所があるのか」「漫画の内容を映画で表現できたか」など真鍋昌平の原作漫画への質問も多く、監督は「今回のテーマは原作にあるので、内容など大きく変更した部分はない。そもそも原作が映画的で素晴らしいため、そこを大切に表現できたと思う」と力強いコメント。
国内でも話題を呼んでいるラスト38分からの衝撃シーンへの質問も出るなど、国際映画祭ならではの熱い質疑応答が続いた。
会場の外には石井克人目当てのファンが集まり、「アクションシーンが美しかった!どうやって撮影したのか?」や、ハイスピードカメラを使用した印象的なシーンに対して「なんのカメラを使っているのか?」など興奮冷めやらぬ様子で監督を囲んでいた。サインを求めたり映画の感想を伝えるファンも多く、映画祭関係者曰く「他の監督以上に、ワクワクして楽しそうな顔をしているファンが多い」とのこと。毎作品ともスタイリッシュで革新的な映像を撮る石井監督の、ファンの期待を裏切らない作品の完成度の高さに「今回も新しい世界を体感させてくれてありがとう!」という想いと、常に先の世界へ観客を連れて行ってくれる映像作家への尊敬の眼差しなのかもしれない。

本作はトロント国際映画祭への出品を皮切りに、第16回釜山国際映画祭、Fantastic Fest in Austin 2011、第44回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭、第47回シカゴ国際映画祭、第31回ハワイ国際映画祭、第8回香港アジアフィルムフェスティバル、第22回ストックホルム国際映画祭、第48回台湾ゴールデンホース国際映画祭、などへの出品が決まっており今後の世界の評価に期待が高まる。

北米でのワールドプレミアを終え、いよいよ22日(木)には日本での完成披露試写会を迎える本作。妻夫木聡が初めて挑戦したアクションエンターテイメントの完成と妻夫木を始めとした豪華キャストが集まる舞台挨拶にも注目が集まること必至。

また、映画祭全体の観客賞(People’s Choice Award)、Midnight Madness部門での観客賞の受賞の可能性があり発表は日本時間19日(月)深夜を予定している。受賞した場合には、日本映画では北野武監督の「座頭市」が2003年に受賞して以来8年ぶり史上2本目、また部門での観客賞を受賞した場合には、日本映画初という快挙になる。国際映画祭での日本映画が受賞ラッシュの中、「スマグラー おまえの未来を運べ」の受賞へも大きな期待が寄せられている。