鬼才シルヴァン・ショメのイリュージョンに、杏さんもうっとり!『イリュージョニスト』DVD&BD発売記念特別試写会トークイベント
10/8(土)より“三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー”レーベルで発売する『イリュージョニスト』DVD&ブルーレイディスク発売記念特別試写会を行ない、モデル、女優の杏さんと三鷹の森ジブリ美術館館長の中島清文さんをお迎えしてトークショーを行ないました。
本作は、第83回アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートを果たし、数々の映画祭で絶賛されたフランスのアニメーション作品。
老手品師タチシェフと少女アリスの心の交流を描いた、儚くもあたたかい人生の物語です。
下記、9/15に行われました。
日時 9/15(木)18:30?19:00
会場 スペースFS汐留
登壇 杏(モデル&女優/25歳)、中島清文(三鷹の森ジブリ美術館館長/48歳)
◆ご挨拶をお願いします
杏:『イリュージョニスト』を拝見させて頂いた時に、これは今までみたことのないような味や匂い、湿度を感じる映画でした。今日はみなさまとこういう場でご一緒させていただけて光栄です。どうぞよろしくお願い致します。
中島:数年前からジブリ美術館ではアニメーション文化の普及啓蒙活動の一環として、宮崎駿監督や高畑勲監督が影響を受けた作品、そしてスタジオジブリと同じ志を持ったスタジオや監督の作品を、各国から集めて紹介する活動を行なっています。今回は、フランス発のアカデミー賞にノミネートされた作品をご紹介できて光栄です。どうぞよろしくお願い致します。
◆館長へ、どうして日本で公開しようと思われたのでしょうか?
中島:『イリュージョニスト』を監督したのは、フランスのシルヴァン・ショメさんという方なのですが、彼の前作『ベルヴィル・ランデブー』がとても素晴らしい作品で、我々としては次回作をぜひ映画の公開時から関わりたいと思っていました。しかし、彼はなかなか作品を作らないんですよね(苦笑)。完成までにすごい時間がかかったんですが、やはり前の作品と同じように、手書きで2Dの技術的に最高峰の作品だったのですぐに決めました。
◆杏さんはこの映画をご覧になっていかがでしたか?
杏:外国の映画で世界観がありますが、せりふがほとんどないんですよね。だからこそ世界中の人に受け入れられたんだなと思いました。せりふがないのに、こんなに伝わるものがあるんだ、ということに衝撃を受けました。ひとつひとつのディテールをみていくと、細かいところの表情や、心の変化や成長を姿勢や目つきで描いているんです。言葉なしで描いているのが、本当に驚きと感動でした。
◆第83回アカデミー賞に『トイ・ストーリー3』などに並びノミネーションされた作品ですが、その理由とはなぜだと思いますか?
中島:アニメーションとしては質がすごく高い作品になっています。まず背景美術でびっくりすると思います。ロンドンからパリへ、そしてスコットランドから移ってエジンバラへたどり着く。その山並みや湖、奥に見える山々の風景や、エジンバラの街に入ってくれば細かい1950年代の街並を再現していて、良く描きこまれています。さらに言えば、アニメーションの核といえる動きで全てを表現していて、ストーリーも良いとなれば、本当にオスカーをとってほしかったですし、それに値する作品だなと思っています(笑)。
◆杏さんへ、好きなシーンは?
杏:人と人との絆やつながり、コミュニケーションを深めるのは食が大事だなと思っています。私自身もお芝居していて好きなシーンは家族の食事のシーンや夫婦で晩酌しているようなシーンです。その時に生まれる絆や共有したものが重なって、強い太い絆になっていくと思います。それがこの作品の中でも少女とタチシェフの食事シーンがあって。小さなテーブルを2人で囲んで食事をするシーンで、すごく嬉しそうな表情はおいしそうだなと思います。決して豊かな時代や背景の二人じゃないからこそ、よりいっそう食の幸せが際立っていて、だからこそ今これを食べられる幸せ、共有できる幸せが描かれていて好きだなと思いました。あのシチューのシーンはおなかがすいちゃいました(笑)。
中島:宮崎監督や高畑監督も、リアリティを出すという点で、生活に密着した部分をきちんと描かないといけないと考えているんですよね。
◆パリからエジンバラへうつりゆく街並や、蒸気機関車などの風景などが、ひとつのキャラクターとして重要な役割を果たしていますが、いかがでしたか?
杏:スケッチブックに描いた水彩画がそのまま動いているかのような気がしました。それがまた作品の湿度を感じさせるところかもしれません。エジンバラやパリの50年代の風景とあいまって、統一感が懐かしさを感じさせました。旅行しているような気持ちにもなるし、どこかなじみのない外国なんだけど、懐かしさを感じるなと思いました。
中島:昔からスコットランドは、ケルトの神話や言い伝えが残っているような場所なので、イギリスの児童文学はスコットランドとか妖精などから来ているものが多いんです。エジンバラという街自体がファンタジーというか、古いものと新しいものが混在している街なんだと思います。光や空気感が特殊で、まさに『イリュージョニスト』にはその空気感が出ていると思いました。
杏:『イリュージョニスト』の中には、ここから文明的なものが一般的になっていく時代なんだなと感じるものが多かったです。私たちが当たり前のように感じている電気を初めて知る瞬間を見たり。暗さを知っているから明るさの喜びを知っているんだな、と思うと普段私たちが忘れかけていることが、たくさんつまっている作品だなと思いました。
中島:お話の舞台として、例えばシャンソンからロックへ移り変わるような新しいものと古いものが交錯する時代を描いているんですよね。時代の交差点、といえる時代を選んでいす。そして年老いた手品師のタチシェフと、これから人生が拓けて行く女の子のアリスも出会いと別れが描かれていて。2重の意味での新しいものと古いものが出会ってどうなるのか、というところはぜひご覧頂きたいですね。
◆『イリュージョニスト』は“三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー”レーベルから発売しますが、杏さんがこのレーベルで気になった作品はありますか?
杏:昔から何度も観ているのが、『雪の女王』です。『イリュージョニスト』にも通じる手書きの温かさがあったり、可憐な少女の恋、冒険たんがすごく好きです。大人になって何回みてもおもしろくて、良いものは次の世代にも託したいと思いますが、そういう作品がジブリ作品やこの『イリュージョニスト』にも感じられる、とても良質な作品が揃っていると思いました。年齢を経ても良い作品はずっと残ると思います。
中島:このレーベルでは、アニメーションとしての質の高さ、テーマ的にジブリもそうですが、普遍的なテーマをきちんと描いているものを選んでいるので、嬉しいですね。
◆杏さんもジブリ作品がお好きですよね。
杏:はい、大好きです。言えばどこかで叶うんじゃないかと密かに思っているのですが、いつかジブリ作品にお仕事でも関わってみたいなと思っています。
◆最後に一言
杏:最初から最後まで、道ばたの小石ひとつからこだわって書いているんだろうなという世界観が凝縮されています。心の奥底まで響くような世界をどうぞ楽しんでください。
中島:とにかく絵が素晴らしいので、アニメーションファンの方もご納得いただけると思います。またジャック・タチというフランスの有名な方の脚本ですので、ストーリーも素晴らしく詩的であり切なさなどいろんなものが凝縮されていますので、ぜひ最後まで楽しんでください。
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『イリュージョニスト』DVD&ブルーレイディスク
発売日:10月8日(土)より発売&レンタル開始
発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
レーベル:三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー
2010年/イギリス=フランス/本編約80分
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