Coccoという、ひとりの人間に肉薄して作った映画。いまだから作る、いましか作れない映画。

イタリアで開催中の第68回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で、9月8日夜、塚本晋也監督最新作『KOTOKO』のワールドプレミアが行われ、満席の観客からのスタンディングオベーションが20分間ほど続いた。翌9月9日朝、公式記者会見が行われ、塚本晋也監督が質疑応答に答えた。

東日本大震災との関係
撮影直前に、大地震がおこった。小さな子どもが出演するので、放射能も心配で、クランクインを断念しようと思った。でも、そのときに周囲にいるお母さんたちの子どもに対する過剰なまでの思いをものすごく感じて、愛する人、大事なものを守るのがいかに大変か、またその愛情の強さみたいなもを肌で感じているうちに、どうしても今撮っておかないと、と思った。今撮れば、とても大事な意義のある作品になる。そう思ってインした。

KOTOKO誕生
Coccoが好きで、その魂を投げ出すような歌を作る人といつか映画を一緒に作りたいと思っていた。昨年の暮れ、Coccoが映画を作るチャンスを与えてくれた。Coccoという人の魅力は様々だが、7年間介護し母親が亡くなって間のなかった僕は、彼女の母親の側面をひとつのキーワードに作っていった。

Coccoに肉薄
脚本は、Coccoにインタビューを繰り返しながら、それでいいです、とCoccoが納得するまで煮詰めた。現場で、Coccoは琴子を自主的に演じてくれた。琴子の像は撮影の前にすべてを構築しておいたから。Coccoのリアリティを内包する琴子の物語を作りながら、自分が大事に思っているテーマがだんだん浮き彫りになっていった。僕にとって初めての始め方と作り方だった。

ベネチア映画祭は9月10日に閉幕。塚本晋也はベネチアからトロントへと向かう。
日本公開は2012年春予定。