人間関係が希薄になりつつある現代社会の中で生まれた「遺品整理業」という職業を通して、成長する若者の姿と、「生と死」という切実なテーマを真摯に描いた「アントキノイノチ」(さだまさし著、幻冬舎文庫)が、遂に映画化されました。
本作は、8月18日(木)よりカナダ・モントリオールで開催中の第35回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門へと正式出品され、現地時間19日(金)に、監督・キャストが現地にて記者会見およびプレミア上映会に出席致しました。

<記者会見>
【日時】8月19日(金)15:35 ※現地時間(←日本時間20日(土)朝4時35分頃)
【場所】Complexe Desjardins
【登壇者】岡田将生(22)、榮倉奈々(23)、瀬々敬久監督(51)

登壇者挨拶
瀬々敬久監督
今日はありがとうございます。
この映画はここモントリオールが世界で最初の上映になります。
皆さんの反応がすごく楽しみです
この美しい街で僕たちの映画が上映されることを光栄に思っています。
Merci Beaucoup(メルシー・ボクー:どうもありがとうございます)

岡田将生
今日はありがとうございます。
このような世界的なモントリオール世界映画祭に呼ばれたことを、とても光栄に思っています。
あまり緊張せず楽しく出来たら良いなと思っています。
Merci Beaucoup(メルシー・ボクー:どうもありがとうございます)

榮倉奈々
Bonjour(ボンジュール:こんにちは)
久保田ゆきを演じました榮倉奈々です。
この作品に出られた事も光栄ですが、この作品でモントリオールに来られたことがすごく嬉しいです。
すごく緊張していますが楽しんで帰りたいと思います。
Merci Beaucoup(メルシー・ボクー:どうもありがとうございます)

平野隆プロデューサー
Thank you for coming today. My name is Takashi Hirano, Producer of this movie.
(今日はお越しくださりありがとうございます。この作品のプロデューサーの平野隆です。)
モントリオール世界映画祭に招待いただき大変光栄に思っています。今の日本は大変な状況なのですが、私たちはこの映画で今の日本を描いたつもりです。映画をご覧になった皆様がどう感じて頂けたのかとても興味があります。この映画を世界中の人に見ていただきたいと思っております。まだ、ご覧になっていない方には、ぜひ、ご覧頂き、僕たちに感想を聞かせて欲しいです。

質疑応答
記者1
最初に、今回の映画は「アントキノイノチ」ですが「モントリオールのイノチ」(モントリオールの人々を引き付けるという意味で表現された)と言ってもいいと思います。監督の作品を今まで拝見してきて、すばらしい作品がたくさんあります。
今回の作品では、「イノチと精神的暴力」が内容に扱われていました。なぜ、このテーマを盛り込んだのでしょうか。

瀬々監督
2000年代に入って最大の悲劇は9.11があると思います。復讐から復讐へ繋がるという社会になっていきました。最近では日本でも津波という大きな災害がありました。それは、僕たちの誰が悪いわけでもないのに、突然起こった災害でした。僕たちはこういう世の中に生きているのだと考えています。
そういった厳しい現実、暴力的な世界がありますが、そういう中でもより良く生きたいと常に思っていますし、実際に生きていこうと思っているのが人生だと思います。先ほど9.11の話をしましたが、これからは憎しみの連鎖が繋がるのではなく、命が繋がっていくことをテーマにしたいと思いました。この映画はそういうテーマの映画です。ですので、一方で暴力を描かなければ、もう一方の命の繋がりが見えないと思い、本作の中では暴力も描きました。最終的に映画で描きたかったのは、新しい生が誕生すること、命が次の世代に繋がっていくこと、より良く生きていくにはどうしたらいいかを探っていこうとした作品です。

質問2
ストーリーの構成についての質問です。フラッシュバック(回想)が入る構成を取り入れていますが、どういったところに配慮して構成を考えましたか?

瀬々監督
この映画では岡田さん演じる高校生の話が、現代に挿入されてきますが、それは回想ということではなく、過去も現在も同時に今この場で行われているような映画体験になるように組んだつもりです。回想は、過去を思い出しているのではなく、現在も過去も同時にスクリーンで展開しているように作ってみました。

質問3
俳優2人への質問です。今までの日本のドラマを見ると言葉が多く、言葉でいろいろ伝えようとしているように思えますが、本作の場合余り言葉を使わず、言わないことで何かを伝えようとしているに見えたが、苦労があったのではないか
岡田さん
言葉で言うことは伝えやすくて、僕自身も言葉にすればすぐに伝わるのにと思っているのですが、今回は心が傷ついた青年役で、言葉に出せない役柄でもあったので、とても苦労しました。僕の表情で伝わっているのかどうか毎日毎日監督に確認していました。

榮倉さん
確かに言葉で表せてしまえば伝わりやすいと思いますし、言葉での切り返しが多い子供や家族で楽しむコメディドラマは私自身も大好きです、ひとつのエンタテインメントとして。でもやっぱり自分たちの生活の中では、育った環境や今ある状況によって同じ単語でも違った意味に伝わることはあると思いますし、言葉や行動がすべてではないと思っています。だからたくさんの人に伝えるのはすごく難しいと思いましたが、監督やプロデューサーに中に伝えたいことの芯があったので、それを信じてやっていきたいと思いました。確かに難しかったです。

質問4
映画を見て一番感心したのは人物像の描き方が素晴らしいと思ったことです。人物同士の関係をうまく描いていると思いました。すべての人物に役割を与え、人物同士の関係でストーリーをうまく引き立たせていました。

瀬々監督
観ていただきありがとうございます。この映画を深く観ていただいていると思います。
この映画では、出来るだけその場所の空気感を伝えようとしました。ただ2人が話しているだけでもある雰囲気が伝わるような映画にしようと思いました。言葉ではなく、空気みたいなものを感じてもらえれば嬉しいです。

<プレス試写会>
【日時】8月19日(金)11:00 ※現地時間(←日本時間20日(土) 深夜24時頃)
【場所】Cinema Imperial (819)

ご覧になったお客様のコメント
>30代男性
Q映画について
素晴らしかったです。この映画における孤独や死についての考え方がよかったと思います。
Q演出について
静寂な場面もあり、登場人物の感情がゆっくりと移り変わっていくさまが素晴らしかった。
Q俳優について
最初はお互い静の感情ですが、話が進むにつれて、自分たちの感情をさらけ出し始めるところがよかったと思います。

>50代女性2名
Q映画について
女性A)素晴らしかったです。演技も素晴らしく、脚本も最高でした。当たり前なことですが、生と死について沢山考えさせられる映画でした。こんな見応えのある映画を完成させた皆様に対して、おめでとうございますと言いたいです。
女性B)私も彼女と同意見で、映画の素晴らしさに感銘を受けました。人のリスペクトすることや皆がつながっていること、  そして、今ある関係を大事にし、お互いを大切にすることに感銘を受けました。
Q演技について
右女性)完璧でした。本当に素晴らしかったです。
左女性)完璧でした。本当の本当に素晴らしかったです。

>インド人女性
Q映画について
非常に興味深い映画でした。私は今までに、日本の伝統的な社会を反映した映画を沢山みてきました。この映画は二人の若者の視点で描かれていましたね。この映画で最も重要な点は、遺品整理業はカナダにない仕事なので、これから私は家に帰って掃除しようかなと思いました。(笑)
それは冗談にしろ、映画は本当によかったです。特に視点が北米と違っていたところですね。それではまた。