長崎の高齢被爆者が暮らす「恵の丘長崎原爆ホーム」を舞台に自分たちの体験を若い世代に伝えたいという被爆者の想いを描いた、来春公開予定のドキュメンタリー映画『夏の祈り』。原爆の日の9日を前に撮影地の長崎にて、坂口香津美監督、出演者の本多静子さん他による記者会見、および特別試写会が行われました。

【イベント概要】 『夏の祈り』 記者会見、特別試写会
【日時】 8月8日(月) 記者会見 17:00〜    特別試写会舞台挨拶 18:45〜
【場所】 長崎市民会館(会見:第五会議室、試写会:文化ホール)
【登壇者】 坂口香津美監督
赤窄ゆみ子さん(恵の丘長崎原爆施設長)
本多静子さん(恵の丘長崎原爆ホーム利用者)
谷口稜曄さん(長崎原爆被災者協議会会長)
朝長万左男さん(長崎原爆病院院長)

【記者会見】  ※お名前の横の( )は、読み方です。
長崎原爆の日の9日を前に忙しい出演者の皆さんが揃い、静かに会見がスタート。監督より説明を挟みながら皆さんより一言ずつ言葉を頂きました。以下、コメントおよび質疑応答内容です。

坂口香津美監督 (さかぐち・かつみ)
「この映画は、原爆ホームに住む本多さんとの出会いから導かれるように、2年に渡って撮影をし、完成しました。タイトルの『夏の祈り』は、ホームに辿る道々の木々のなか、ふと浮かびました。祈りの強さが人を生かしていく、そのことを撮影通じ、学ばせて頂きました。」

赤窄ゆみ子さん (あかさこ・ゆみこ)
「この映画は、恵の丘長崎原爆施設ホームの記録になるわけですけれども、撮影にあたり、とまどいもありました。ただ、監督の熱心な熱意に押され、取材を受けました。」

本多静子さん (ほんだ・しずこ)
「養護施設にて育てて貰い、そこで被ばくしました。今はホームに来て、みんなにお世話になり、とても幸せです。観るかたには、戦争がないようにと感じてほしいです。」 

  谷口稜曄さん (たにぐち・すみてる)
「66年前の広島、そして長崎。今、その真実を知らせなきゃいけない・・・と思いました。」
 
  朝長万左男さん (ともなが・まさお)
  「これから拝見しますが、素晴らしい映画が出来たことを期待しています。原爆当時に0歳だった方が、今年で66歳になられるわけですが、被ばくに関していまだ研究の途上にあります。この映画には、まだまだ明らかにされていない内部被ばくについて描かれています。注目して頂きたい。」

■映画化のきっかけは?
監督「最初は、映画ともテレビ企画とも考えず模索しながらの撮影でしたが、撮影するうちに少しずつホームの内へと入らせて頂き、より多くの人に繰り返し観てもらいたい、と強く感じていきました。これは映画にしたい・・・と。そして、完成させたのです。」

■撮影時期は?
監督「2009年から今年の春、まさに3.11の直前まで撮影していました。ホームへは、年に10回くらい、春夏秋冬撮影に訪れました。」

■本多さん以外の出演者は?
監督「ホームで暮らす方は、本多さん以外に女性お2人が出演されていますが、本多さんが基軸になります。」

■医学的な部分が映画に描かれていますが・・・?
朝長さん「原爆ホームは、昭和45年に設立され、医者として日々たくさんの方々を診てまいりました。原爆から50周年が迫る頃、ホームの皆さんが調子悪くなられたのです。特に、悲惨な体験をされた方ほど…。何が原因なのかと精神科の医師と相談しながら模索していたところ、いわゆるPTSDを起していたことが分かりました。
例えば、[体に受けたダメージが大きい人ほど精神的影響が大きい][肉親を亡くした人][家を無くした人]
[財産を無くした人]など。これらは、福島でもすでに起きていることでもあります。
この映画では、(自分が)医者として感じたことをどうとらえられているか、と同時に66年をこえての怒りの言葉だけではなく、被ばく者にも日常があり、監督がシーズン通して大事なものを映してきたことを、より多くの人に観てほしいと思っています。

【試写会舞台挨拶】
坂口監督、出演者の総勢18名が舞台に登壇。出演順にお名前が呼ばれ各方軽く会釈された後、代表して監督、赤窄さん、本多さん3名がご挨拶されました。そして、主役である本多さんへ花束贈呈があり、舞台挨拶は終了しました。

坂口監督
「ご協力頂けた方皆さんに深く感謝しています。この映画は、記憶の探索であり、そこからわき水のように染み出るものを感じてほしい。特に、新しい世代に観てほしいと思っています。」

赤窄ゆみ子さん
「タイトルは『夏の祈り』ですが、長崎の祈りだと思っています。平和への祈りをこめて、皆さんに観て貰えればと思います」

本多静子さん
「祈りを込めた映画です。ぜひご覧ください。」