韓国の実話を基にした今夏一番熱い青春映画『ホームランが聞こえた夏』(8月27日公開)。本作は、天才ピッチャーと評されながら後発性難聴に冒され聴覚を失った高校生と、度重なる不祥事を起こし、プロ野球界から追放寸前のエースピッチャーが、韓国のろう学校、ソンシム高校の野球チームと出会い、全国大会1勝を目指し奮闘する、心温まる熱い青春映画です。
本作の内容に大変感銘を受けられ、オピニオンとしてプロモーションにご協力をいただいている「耳の聞こえない私が4ヵ国語をしゃべれる理由」の著者、金修琳さんを8月6日(土)立川ろう学校にお迎えし、特別講義イベントを開催しました。

立川ろう学校の生徒・保護者に向けた上映会の後、涙を拭う人も多く、感動の余韻が残るなか、金さんが登場すると会場は温かい拍手で包みこまれました。
金さんは「私は今、このように普通に大勢の前でスピーチをしていますが、みなさんと同じように聴覚障害をもっています。この映画を観て、ものすごく共感をし、感情を越えて涙しました。」と挨拶すると、「私は韓国で生まれ、6歳になるころに聴覚を失いました。この映画のピッチャーと同じように、後発性難聴です。耳が聞えなということを周りに受け入れてもらえず、健常者として育てられてきました。理由もきかされないまま、小学六年生のころに日本に連れてこられ、四苦八苦な毎日でしたが、今では4カ国語を話し、会社勤めをしています。でも、これは私がスペシャルということではなく、努力してきたからこそであり、今は結婚もし、子供にも恵まれた生活をおくることができています。」と自己紹介をしました。それから、「聴覚障害というものは健常者に理解してもらうのにとても忍耐を要します。偏見と向き合わなくてはなりません。偏見というのは悪意から生まれるものばかりとは限らない。映画のなかでも、聴覚障害をもった子供たちに野球をやらせるべきではないと議論するシーンがありますが、あれも悪意があるわけではなく、本人たちの立場になっていないですよね。大切なのは“戦うスピリット”、“ハンディに負けない、ハンディを理由に逃げない”ことです。ハンディキャップを受け入れ、人と違うということを受け入れる。困難なことにもしっかり向き合い、何ができるかを模索することが、社会に出るうえで重要です。」と語り、4カ国語を話すきっかけ、さらに苦労談を交えながら、これから社会にでる生徒たちにむけてアドバイスをしました。そして、「ただ待っているだけでは、自分が望むような環境にはなりません。相手に理解してもらおうとチャレンジすることは、トラブルが起こることもあります。でも、先につながることもあります。(どんなかたちであれ、)心から伝えたメッセージは必ず伝わると信じています。」と熱く語りました。生徒から、「手話を身につけようとは思わないのですか?」と質問されると、「家族は手話ができないので、覚えるきっかけがありませんでした。でも手話は習得しやすいので、もし手話ができるようになったら5カ国語目をマスターしたことになりますね(笑)」と笑いを誘いました。最後に「みなさんによりよい未来が待っていることを、心から祈っています。」と、生徒たちへの激励の言葉で締めくくりました。