8月4日(木)東京・赤坂(WOWOW本社試写室)で、医師であり作家の鎌田實氏と、現役の福島県立高校の教師であり、詩人の和合亮一氏との対談が行われた。
これは、本年度のアカデミー賞外国語映画賞及びゴールデングローブ賞の外国語映画最優秀映画賞をw受賞したスサンネ・ビア監督の『未来を生きる君たちへ』(デンマーク映画)公開記念として行われた。
震災後twitterで詩を発信し続けた福島在住の和合亮一氏と、医師として福島でのボランティア活動に従事してきた鎌田氏、ふたりならでの「未来」を生きていく人々に向けてのメッセージとなった。
『復讐』を原題に持つ本作は、全く異なる二つの国を舞台に人間の本質、暴力・憎しみの連鎖といった現実を描きながらも、少年二人の、アフリカで無邪気に手を振る子供たちの、その輝く笑顔に希望を見出し、未来を託す映画である。

 和合亮一氏:震災後まだ混沌としていた時に初めて観た映画が『未来を生きる君たちへ』だった。これを観たときに「人間の生活には映画があるんだ!」と改めて気付いた。震災後、娯楽に全く興味が向かず、むけどころのない気持ちを抱えていたが、この映画を観た時に〈憎しみ〉を脇に置いて〈赦す〉ことの大切さに気付かされた。
震災後、twitterで詩を発表したのはまさにやり場のない<怒り>のせいだった。でもそれだけでは世の中はいい方向に変わっていかない。震災後すぐに泣いてしまう。心を守ろうとしての防衛本能が働いている気がする。この映画の中でも、ある少年がラストになってようやく涙をみせられるようになったが、今の日本の子どもたちも同じ状況だと思う。大人たちは、その「泣きたい」子どもたちの気持ちを受け止めてあげる力を持たなくては。
映画を見終えて、邦題がさらに響いてきて、改めて泣きました。

鎌田實氏:女川に巡回診療に行った際に、子どもを亡くした母親から「周りが全員同じ状況だから泣けない」と言われた。泣くことは、とても大事なことなので、〈泣く場所〉として〈映画館〉は最適な場所である。デンマークの映画なので、もちろん震災には直接関係ないが、この映画の持つあたたかさ、やさしさ、そして〈赦す〉ことの大事さを気づかせてくれテーマは、震災後1本目に観るのに最適な映画ではないかと思います。この映画をみながら
泣いてほしいと思います。