学生が主催の映画シンポジウム開催されるパレスチナ・イスラエル映画祭?こどもと明日と未来を考える

震災から4カ月。私たちはまるで戦場のがれきのような風景を脳裏に刻みながらの、初めての夏を迎えようとしております。しかし戦争はいつの時代にもあり、いまもまさにどこかの国で争いが絶えることはありません。とくにパレスチナの和平は遠く、その根深さは解決への糸口を見出すことさえ難しい状況にあります。

そんな中、生命の尊さを、子供の生命力を、そして教育が与えうる成長の物語を、パレスチナという地で見せようとする映画が今夏3作品続けて公開となります。絶望のなかにあっても、それが戦争という極限のなかにあっても、希望の灯は灯され続けていくことを、わたしたちはこの3作品を通し、「戦争の季節」にもう一度思い起こすことになるでしょう。戦争がもたらす問題、しかしそこから再び立ちあがっていこうとする生命力を、遠くて近い存在であるパレスチナ発の映画を観ることで、得ることができるのではと思います。
この度は東京外語大にて3作品を通して両国の和平や子どもたちの未来、教育の必要性について考える機会を設けたいという意思のもと、学生たちの主催で大変意義深いシンポジウムが開催されました。

◆7月20日(水)当日のパネリスト◆
臼杵陽先生(日本女子大学文学部史学科 教授/中東地域研究)
古居みずえ監督(ジャーナリスト、『ぼくたちは見た』監督)
村田信一氏(写真家)、山本薫先生(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究員)

『いのちの子ども』

◆学生 今井花南さん(アラビア語学科3年)
「人間の多面性が描かれていると思いました。それぞれの人の中で色々な葛藤があり、決して簡単な二項対立で語ってはいけないと思いました。また、私は爆撃のシーンや、パレスチナ人の母親がイスラエル人に対して感情的になるシーンなどを見ても、どこか彼らに共感出来ない部分があり、もどかしさを感じました。」

◇村田
「現地を知るために一番良いのは一度現地に行ってみること。とても美しい土地です。そのもどかしさを感じるきっかけとなったことが良かったと思います。」
◇古居
「メディアが発信するパレスチナのニュースは印象の強いものばかりで私も共感は出来ません。でも、その地には普通の人たちがいて、彼らの生活部分が見えることによって共感できると思います。」
◇山本
「(この映画は)感動的なヒューマンドラマというよりも、2国間のとても複雑な関係を医者やジャーナリスト、母親を通じて描いた作品であると思います」

『ミラル』

◆学生 神田春奈さん(アラビア語学科4年)
「暴力以外の和平的な方法で、パレスチナ人としての誇りやアイデンティティを見出していく映画。パレスチナの社会では女性が弱いイメージがありましたが、この映画では男性社会の中での女性の存在が普通に描かれていました。ミラルたち女性の生き方から、誰にでも通じる普遍的なことが伝わってくるのではないかと思います」

◇古居
「パレスチナの女性は意見をはっきりと言うし、家では父親を尻に敷いていたりします。その逞しさが私は好きです」
◇村田
「この学校がまだ本当に存在していることに意義があると思います。しっかりとした教育を行うことはとても大事だと改めて思いました」
◇臼杵
「新しいパレスチナ女性像を上手く描き出していると思います」

『ぼくたちは見た-ガザ・サムニ家の子どもたち-』

◆学生 西方真帆子さん(アラビア語学科3年)
「子どもたちが辛い経験をしながらも、それを忘れずに生きていく姿に人間としての強さを感じました。残念なのは、ガザの子どもたちがイスラエルへの恨みをずっと抱えて生きていくことで、両国の和平に向けて考えると、このことが障害になるのかと思います。政治的な面で進む和平よりも人々の意識から変える必要があると思いましたが、それはとても難しいです」

◇村田
「和平に関して、アメリカや国連、パレスチナイスラエル両国が進める和平に則っている間は本当の意味での和平はないと思います。一人一人の意識を変えていくことが大事で、その為には教育が一番必要です。」
◇臼杵
「20年、30年後、本人達がこの映画を見たときにどう思うのか、この作品は彼らにとって、とても大事なアーカイブになると思います」
◇古居
「この出来事が遠い国のもののように感じていた方もいらっしゃったと思いますが、今の日本では他所の国で起こっていたようなことが起こっているんです。これは不幸なことですが、この経験をした日本人一人一人が、外の国で起こったことの痛みを感じられるようになっているのではないかと思います。今こそこういった映画を見て欲しいと思います。悲しいだけの映画ではなく、生きるための映画です」