ドイツ本国で200万ドルを超える大ヒットを記録、多くの人々の心を揺るがした世界最高峰の山ヒマラヤを舞台にした衝撃作『ヒマラヤ 運命の山』が、8月6日より日本公開されます。
7月6日(水)にはドイツ文化会館ホールにおきまして本作の原作者であり、世界屈指の登山家ラインホルト・メスナーが来日記者会見を行いました。

満員の会見場の壇上に「超人」メスナーが登壇すると男性記者を中心とする列席者から大きな拍手と歓声が上がった。最初に、日本でメスナーの書籍の多くを発行している山と渓谷社から登山家として作家としてのメスナーの功績に関して、感謝状が贈られ、メスナーは「大変ありがとうございます。自分の本が日本語で出版されていることを嬉しく思います。日本のアルピニストの方々とも交流していますが、これからも自分自身向上していきたいと思います」との挨拶。続いて日本トレッキング協会理事を務め、登山が趣味という女優の市毛良枝さんも花束をもって登場、初めて会うメスナーに「世界の山々で素晴らしい功績を残すメスナーさんに会えて光栄です。山の映画を観る度に、どうやって撮っているのかな、と思っていました。『ヒマラヤ 運命の山』は、メスナーさんご自身の今までの歴史をご自身の目を通して残したいということで撮られた映画だと思いますので、拝見して胸に迫り、大変感動しました」と語った。

ラインホルト・メスナーとの質疑応答
◆映画の原作となった「裸の山 ナンガ・パルバート」を執筆された理由を教えて下さい
「40年前に弟と登ったナンガ・パルバートで私と弟が経験した悲劇の後、このことを書き留めたいという内的要求がありました。凍傷で足の指7本を失って入院していたので、その時間を使って書き留めました。今回ドイツのフィルスマイヤー監督からこの話を映画化したいというお話をいただいて、私はナンガ・パルバートの頂上のことも良く知っているので協力できますと言いました」
◆映画撮影の現場はいかがでしたか
「映画の舞台の大半がパキスタンで、多くをナンガ・パルバートの頂上付近で撮影しましたし、時には山の頂上近くを歩く危険を伴う撮影でしたので、当時60代後半だった監督らの安全が心配でした。下山に使うヘリコプターが悪天候のために着陸できずに、別ルートをとって下山するなど、危険な場面もありましたね。私は撮影を背後から見ていましたが、俳優の様子を見ていることなどもとても勉強になりました」
◆完成した映画を観てどのような感想をもちましたか?
「とてもエモーショナルなものでした。自分の経験に基づいた映画なので、現実は快いものばかりではありませんが、この映画は現実のストーリーを再現したもので、すぐれた監督と俳優が揃ったので見事再現できたことだと思います。弟や当時のことに思いを馳せました」
◆8000メートル級の山を14座、無酸素で登頂するという偉業はまさに超人だと思いますが、ご自身の記録についてどう思われますか?
「私は超人などではありません。多くの失敗も経験しています。8000メートル級の山14座を制覇したことは事実ですが、自分ではその記録が重要だとは思いません。自分で定めた目標を実現することが大切ですし、自分なりの方法、自分なりの登り方を追求するためには精神力も重要です。むしろ失敗から学ぶことの方が多いとも思います」
◆いままで最も危険を感じたこと、死について考えたことはありますか?
「20代の時のアルプス登山では、まだ経験が無く、問題が起こってもそれを解決する能力がありませんでした。ナンガ・パルバートの壁も最も危険な場所の一つです。私は奇跡的に助かりましたが、弟は犠牲になってしまいました。8000メートルの山では氷が割れて一緒に行った人が落ちたこともありました。頂上付近は酸素が足りなくて空気が薄いですから、そういう劇的な場所で分裂症的な限界まで追い込まれたことは何度もありました。ナンガ・パルバートでもビバークしているときに自分の上半身が見えました。浮いているような感じでした。下山のときには目の前に人影が見えて私にルートを導いてくれました。でもそれは霊的なことではなく、脳に酸素が回らないため精神的な状況もあいまって超自然的なものが見えたのではないかと思います」
◆いま日本は登山ブームで、多くの若者も山に登っています。山を目指す人々にメッセージをお願いします
「日本は昔から山に登る方が多かったですし、50年代から山ブームがあったと思います。いま登山に関する歴史を執筆していますが、たとえば田部井淳子さんのような女性のアルピニストも昔からいらっしゃって、世界的にみても進んだ活動をしていると思います。趣味で登山を楽しんでいる方がたくさんいらっしゃると思いますが、登山が単なるスポーツになってしまわないこと、自分の物事の経験となるものになってほしいと思います。そして自分の限界を知ってほしい。注意深くひとつずつ限界を超えて、次の目標に向かってほしいと思います」

最愛の弟を失った過酷なナンガ・パルバート登攀を映画化した本作『ヒマラヤ 運命の山』は、この世のものとは思えないヒマラヤの風景を圧倒的な撮影力で見せる大迫力の映画です。天空にそびえる山の威容とそこに立ち向かい限界を目指す男たちの戦いをぜひスクリーンで堪能して下さい。山の映画が大ヒットを記録した日本に、遂に本物の山、本物の登山家の映画が登場します!