──黒部さんご自身は、放送開始から45 年を経て今なお続く『ウルトラマン』の魅力は何だとお考えでしょう?
黒部●子供たちの気持ちを掴んで放さない、ウルトラマンという素晴らしいヒーロー像と、なおかつ同時に「人間というものはこうして生きていくんだよ」という、子供たちへのメッセージ性も含まれているところじゃないでしょうか。遊びもそうですが、子供の成長過程において「ヒーロー」というものは絶対に必要だと僕は思うんです。そういう部分でも『ウルトラマン』は満足を与えていたということなんじゃないかな。ただ、何よりいちばん大きな要素はファンの存在です。ファンあっての45 年。そういう意味では、僕らはファンの方々に対して感謝感謝、ただそれのみです。ありがとうございます。この先もぜひ、『ウルトラマン』『仮面ライダー』を支持していただきたいと思います。

──藤岡さんは、40 年間脈々と続く『仮面ライダー』の魅力はどこにあるとお考えでしょうか?
藤岡●それはやはり、ヒーローとしての条件が、仮面ライダーにはすべて備わっていたからではないでしょうか。ヒーローはどのような困難な状況であろうともそれに打ち勝つ、逃げない、曲げない、屈しない、そんな決意で戦う。そして『仮面ライダー』は、善と悪が象徴的に描かれた非常にわかりやすいドラマでした。改造されて二度と人間に戻れないという大きな哀しみを背負いながらも、前に向かって生きてゆく。そして自分のためではなく皆のために、自己犠牲の精神で戦い続ける。これが子供の心を揺さぶるんですね。子供の心は純真ですから、深いところに響いて、残っていくわけです。
そしてその時の感動が、大人になっても練り込まれ刷り込まれ、魂の奥底に残ってゆく。私は全世界100 ヵ国近く回りましたけど、どの国の子供たちもヒーローを求めているんですね。またどの国にも、歴史的ヒーローがいらっしゃる。ヒーローっていうのは、子供たちにとってかけがえのない存在です。
仮面ライダーも、国境を越えて全世界の子供たちに愛されている感がある。世界中どこへ行っても、子供たちに「Masked Hero!」「Masked Rider!」って言われて、びっくりさせられます。「そうか、子供の夢というものに国境はないんだ」「いい仕事をさせていただいたな」と感謝するのはそういう時ですね。本当に『仮面ライダー』に出逢えてよかった。本当に心から感謝しております。

──両作品とも、当時から大変な人気でしたが、子供たちに声援を受けた、あるいは囲まれたといったエピソードがあれば教えてください。
黒部●今でも、電車に乗っていてサインを求められることがあります。子供たちだけでなく、大人の方も、恥ずかしげに降り際で手帳を差し出されたりする(笑)。オンエア当時から現在まで、ファンの方々の気持ちはずっと続いているんですね。子供たちが登下校時に小さい紙を持って、私の家の前で並んでいたりすることもあります。大人になったファンの中には、「ハヤタさんに会った!」って涙を流す方までいらっしゃる。そんなことが45 年間続いている。本当に嬉しく思います。
藤岡●中近東へ行った時、飛行機の中で立派な紳士の方が、いきなり「Masked Rider!」と握手を求めてきた。様々なところでそういう体験をしまして、そのたびに「ああ、ヒーローものに国境はないな」という思いを新たにしたものです。日本でも、かつての子供たち、今では社会の中核として立派にお仕事をされている大人の方々が、「夢でした!」「本郷猛にお会いできて嬉しいです!」と喜んでくださる。そういう方々を見ると、責任を感じます。そういう人たちを裏切ってはいけない。ヒーローというものは、一度演じた以上、その責任を一生背負っていくんだなと思いますよ。
黒部●いやまさしくね。仰る通り、自分を律していかなければいけない。ヒーローを演じた方たちが、それを背負っていくのは運命なのでしょうね。飲酒運転とか、誰かを殴ったとか、ヒーローは絶対にそんなことで騒がれてはいけない。僕も絶対にそんなことにならないよう、生きていきたいと思っています。ですから実は我々、大変窮屈な人生を送っているということを、ご理解いただきたいですね(笑)。
藤岡●本当にそうですね(笑)。たしかに耐える、我慢するという気持ちは人一倍強いです。子供がどこかで見てるんじゃないか。それはいつも頭の隅で意識していますよ。でも、それはかえって良いことですよね。やっぱり子供は、大人の姿を見ていますから。私なんかが絶えず身体を鍛え続けるのも、そんなところに理由があるのかもしれない。子供が見ていると思うからこそ、恥ずかしい姿は見せらませんから。
黒部●あなた、大変だね(笑)。
藤岡●それが健康の源だからって言うよりは、やらざるを得ないところに追い込まれている気がしますね(笑)。でもやっぱり、良いことだと思いますよ。子供の夢を裏切ってはいけないという責任を背負っていることは確かですから。

──本作に収録されている1993 年当時の新撮映像『スーパーバトル ウルトラマンVS仮面ライダー』は、ご覧になりましたか?
黒部●実は私はまだ見ていないんです(笑)。
藤岡●私は拝見させていただきました。これは子供たちにとって、まさに夢の共演だろうなと思いますね。たかだか10 分ですけど、子供たちはたまらないだろうなと。2大ヒーローが協力して戦うわけですから、これは最高の思い出になるだろうなと感じましたね。『ウルトラマン』も『仮面ライダー』も、これからも子供にとっての象徴的な存在として続いてもらいたい。またそうしたヒーローものを、心ある大人たちによってもっともっと作っていただきたいですね。子供は地球の財産です。子供の心の中に、夢や希望や愛を残してやる。そして本当に安心できる、信頼できる、頼れる存在=ヒーローはあるんだということを、子供たちに信じさせてあげたい。私自身、そんなヒーローの一人を演じられて、本当に良かったなとあらためて思いますね。

続くフォトセッションでは、ウルトラマンと仮面ライダー、2大ヒーローの立像を背に、黒部進さんと藤岡弘、さんが再び登壇。両者が固い握手を交わすと、会場からは歓声が上がり、フラッシュと拍手の嵐の中、盛況のうちに記者会見は終了しました。