7月2日、第11回東京フィルメックスで最優秀作品賞に輝き数々の映画祭に出品された
話題作『ふゆの獣』が初日を迎え監督ならびにキャストが初日を迎えられたことの喜びを語った。

日時:7月2日
場所:テアトル新宿
登壇者:加藤めぐみ・佐藤博行・高木公介・前川桃子・内田伸輝<監督>

都会に暮らす極々普通の男女の気持ちが徐々に絡み合い、もがき苦しむ様を描いた本作は
低予算で製作・脚本がない・ごく少数での撮影など注目するキーワードがたくさんある。
作品に対する賛否両論も各方面で湧き上がる中、そのキーワードについて監督が語ってくれた。

○制作費に関してお聞きしたのですが?

内田監督:
撮影に関する必要なお金を集めて、後々計算したら制作費は110万円でした。
自主映画界ではもっと少ない予算で撮る方もいらっしゃるので皆さんどうしてるか僕が聞きたいです。

○スタッフも少人数とお聞きしたのですが?

内田監督:
撮影はほとんど僕が担当していました。制作・スチール・撮影の斉藤と録音の日高の3人で
撮影を進めいていって、キャスト(4人)も含めると7人で撮影した作品です。

○脚本がないとも聞いたのですが?

内田監督:
基本となるプロットはあり、大まかな道筋はあるのですが細かなところは役者さんたちに
即興で演じてもらい、撮影も即興で進める感じでした。
役者さんたちにはその役のバックボーンを教えて役作りをしていただきました。

キャストに質問が移ると演じる側の苦労話や役作りの大変さなどの話題が中心となった。

○役作りはどういったかたちで進めていきましたか?

加藤さん:
「ユカコ」という役を自分なりに解釈した時に計算できない愛情を持つ女性だと思いました。
自分とそんな「ユカコ」とのギャップを埋めるのに4ヶ月間かけて役作りしました。

○キャストの皆様の演技も様々な所で評価されている点はどう思いますか?

加藤さん:
すごく嬉しいです。フィルメックスのグランプリ受賞も含め、無名な私たちに賞をくださるのは
これからの励みになります。これからも応援よろしくお願いします。

○ロッテルダム国際映画祭に行かれたときの感想は?

佐藤さん:
この『ふゆの獣』はコンペティション部門では唯一の日本作品で、ありがたいことに
4回上映されて全て満席で多くの方にみていただいたんです。
上映後ロッテルダムの街を歩いていると「ヘイ!バットボーイ!!」と役の印象のまま呼ばれ、振り向くと
最初は「カツ上げ」だと思ったんですが、地元の方に演技を褒めていただいたことが印象に残っています。

○男性陣の起用はネットでの交流がキッカケとのことですが?

佐藤さん:
ネット上での役者の募集は結構あるのですが、自主映画界では有名だった内田さんの募集だったので応募しちゃいましたね。

高木さん:
僕がその募集を見たときは締め切りが過ぎていまして、ダメモトで人生で初めての長文メールを内田さんに出したところ熱意が伝わり、今に至ります。

○役作りでチャレンジしたことは?

高木さん:
共演の前川さんに片思いする役なので、前川さんをデートに誘ったんですが断られ、携帯の待ち受け画像を前川さんにするとキモがられ
そんな感じで辛い片思いをする男性の役作りをしていきました。

○現場での監督の演出はどういった感じでしたか?

前川さん:
監督からは緊張感と爆発力が欲しいと言われていて、抽象的でどうしたらいいんだろうと思いましたが
緊張感はこの4人で作り上げていけたらいいなと思い演じていきましたし、爆発力というのは浮気相手というツライ気持ちをどんどん積み上げていって
爆発させたいなと思い演じてきました。

フォトセッション終了後、マイクを使わずに集まった観客へ「どうぞよろしくお願いします」と
挨拶する監督・キャストをみていると、劇場公開された嬉しさと今後への意気込みが伝わってきた。
今後が注目される内田監督だが、7月23日からは新宿K’s-cinema で過去作品である『えてがみ』と
『かざあな』も特別上映される。数々の映画祭で受賞暦のある2作品のため、もちらも注目したい。

(Report:有城裕一郎)