『未来の食卓』ジャン=ポール・ジョー監督が、
リオの伝説のスピーチで知られる環境活動家セヴァン・スズキをはじめとした、
傷ついた地球を見つめ続ける人々を追ったドキュメンタリー。

今回の来日では、新作の撮影のために福島や山口県上関の祝島、そして6月11日に新宿で開催された大規模な脱原発デモを既に訪れているフランスのジャン=ポール・ジョー監督は、祝島で地元の人から譲り受けた「原発絶対反対」と書かれた鉢巻きをして恵比寿の東京都写真美術館ホールに登場。来場の観客へ感謝の意を伝えるとともに、客席からの質問に答えた。

まず監督は福島第一原発の事故の後、多くの海外からの来日がキャンセルされるなか、今回招聘されたフランス映画祭2011にも自分を含め4人の監督しか来日しなかったことに触れ、「今だからこそ日本に来て支援する必要があると思った」と語った。

そして頭につけている鉢巻きついて、「祝島の島民たちは30年間毎週月曜日にデモをし、島の4キロ先に〈怪物〉である原発が作られるのを阻止するために戦い、計画をストップさせることに成功しています。そして今週の月曜日は1,100回目のデモでした。原発のある日本、フランス、アメリカの人たちみんなが、祝島のおばあちゃんのように毎週月曜日この鉢巻きをしてデモをすることを願っています」と、祝島の人たちとの連帯を強調した。

客席から、来年リオで開催される地球サミット2012にあたって活発な対話を行うためのヒントについて質問を受けた監督は、
「20年前の1992年、リオの地球サミットで12歳のセヴァン・スズキは、世界へ向けてSOSを発信しました。『あなたたち大人がやっていることのせいで、私たちは泣いています』というスピーチの内容は、いま一層の重みを持って私たちに届きます。しかしそれ以降、どれだけの両親が、どれだけの世界的なリーダーが彼女の絶望的な問いかけに対して答えてきたでしょうか。そして92年のスピーチではまだ原発について触れられていませんでしたが、今回彼女は映画のなかで「原発はまるで人類が悪魔と交わした契約です」「原発というのは次世代への究極の犯罪だと思います」と言っています。このことが来年の地球サミットの大切なテーマになるのではないでしょうか」と続けた。

最後に監督は、「映画は自分が考えていることを肉体的に伝える道具だと思っています。インターネットや携帯電話やテレビなど、バーチャルなコミュニケーションの時代と言われていますが、そうした時代においても、映画館に足を運ぶことは、全く知らない人の隣で同じ映画を観るという体験を共有できるかけがえのない手段です」と、人と人との交流の場所としての映画について述べ、舞台挨拶を締めくくった。