本日、6月11日(土)より公開となりました是枝裕和監督最新作『奇跡』。公開を記念いたしまして、キャスト・監督が登壇し、舞台挨拶を行いました。巨大クラッカーを打ち鳴らし公開を祝うとともに、満席となった会場にてファンと登壇者により更なる大ヒットを願いました。

■日時:6月11日(土) 12:30 (初回上映前)
■場所:新宿バルト9 スクリーン8【座席数251席】(新宿区新宿3-1-26新宿三丁目イーストビル13F)
■登壇者:前田航基(12)、前田旺志郎(10)、大塚寧々(42)、樹木希林(68)、是枝裕和監督(49)

MC:まずは一言ずつご挨拶をいただきましょう。
監督:雨のなか沢山お集まりいただきありがとうございます。去年の9月に撮影をスタートさせたこの映画は本当に奇跡的な色々な出会いに支えられて、とても素敵な映画になったと思います。今日皆さんにお届けできるのを本当にうれしく思っています。撮影では少し遅れた夏休みといった楽しい時間を過ごしたんですが、この映画を通して皆さんにも感じていただけたらと思っています。
航基:本日はお休みのところ、またお足もとの悪い中、こんなにたくさんのみなさんにお集まりいただきありがとうございます。お昼間の(上映)時間だから、みんな食事とかしていてなかなか来てくれないんじゃないかな?と思いましたが、こんなにたくさんの方に集まっていただいて嬉しいです。たのしくて、でも感動もできる素晴らしい映画です!
旺志郎:こんなにたくさんの方に集まってもらえて嬉しいです。旺志郎が出ている場面をぜひ見てください!よろしくお願いします。
大塚:雨のなか、本当にありがとうございます。この作品は本当に子供たちがキラキラと輝いている映画です。映画の中に温かいまなざしがあふれていますので、ぜひ何回も観てください。
樹木:この3月12日に九州新幹線が開業するというというときにちょうど九州におりました。本当に各駅で盛り上がっていたのですが、そのお祝い事が前日の11日の震災ですべてなくなりました。その後の原発などの状況などの話を聞くにつけ、子供たちの元気な姿を見ていて「本当に(この子たちの将来は)大丈夫なんだろうか?」と不安に思っています。どうしていいか分からないから、私はこうしてリュックしょって、いつでも逃げられる準備をしているわけですが(笑)映画は新幹線の開業に向けて並行して作られ、今日こうして日の目を見ました。この映画からきっと何かを感じていただけると思っています。

★質疑応答★
MC:日本人初のカンヌ国際映画祭最優秀男優賞をもたらした「誰も知らない」から7年、ふたたび子供を主人公にした映画を撮られましたが、子供たちの演出で気をつけられることは何ですか?台本を渡さなかったと聞きましたが?
監督:撮影現場で「あれはしちゃいけない、これをしちゃいけない」など、あまり制約を設けないで子供たちが自由にできる環境を整えてゆくというのが、今回の僕のやりかたでした。台本は書いていたんですが、子供たちには渡さず、その場で「お母さんがこう言うから、こう言ってね」というやり方で進めました。
MC:この作品、実は13カ国で上映が決定しています。このニュースを聞いていかがですか?
航基:そうなんですか??今初めて聞きました!
旺志郎:嬉しいです。今初めて聞きました。たくさんの方が見てくれるのはうれしいです!
監督:世界中で観てくれる人がいるというのは励みになりますし、日本のローカルな場所の家族の物語がどのくらいグローバルに伝わるのかというのが、楽しみではあります。
MC:今回、本作で映画初主演ということですが、撮影はいかがでしたか?大塚寧々さんがお母さん役で、樹木希林さんがお祖母さん役ということですが、共演されていかがでしたか?
航基:めっちゃやさしかったです。大人の皆さんは台本があって、いろいろ覚えることも多いのに、休み時間にUNOを一緒にしたりと遊んでくれて、やさしいなぁ・・・と思っていました。大塚さんは怒らなければいけないシーンで、ちょっと前まではとても優しかったのに、急に「わー!!!」っと怒り出して、めっちゃびっくりしました。「人間て、こんなにかわれるん?!」って。
樹木:おばあちゃん(樹木さん)はどうだった?
航基:おばあちゃんはこんな感じ(樹木さん)のマイペースな人で、おばあちゃんのいるシーンは「もうリハーサルいいんじゃない?」みたいな感じでポンポンポンと進んで行きました。でもそういわれると、きゅっと引きしまって、わりかしすっと行けたりするんです。(場内笑)
MC:お兄さんの航基さんと一緒に主演を見事に演じられましたね。お母さん、お兄さんと離れて、オダギリジョーさんが演じられるお父さんと二人で住んでいる役ですが、オダギリさんは共演されていかがでしたか?
旺志郎:イケメンですらっとしていて、どこに脂肪が付いているのかな?と思っていました。「あまりしゃべらないかもしれないな」と思って話しかけたら、いろいろしゃべってくれて、すごく面白くてやさしい人でした。
MC:まえだまえだのお二人に役者としてのアドバイスなどありますか?
樹木:ずいぶんしましたよ。普段もまえだまえだの二人は、ひっきりなしにうるさいんですよ・・・(笑)それじゃあだめだと。漫才でも“間”が大事だと。大人として、きちんとアドバイスしました。でもなかなか直さないのに「ありがとうございます」とお礼だけはしっかり言うんですよ(笑)
MC:撮影前に、樹木希林さんとお食事に行かれて、何かアドバイスがあったとお聞きましたが?
監督:ご飯に誘っていただき、大人は背景だから。背景でもきちんと演じられる役者の皆さんなので、さらっと描いてもらえればいいから。と僕のスタンスをお伝えしました。
樹木:私みたいにくどい役者は、子供の背景くらいにとっていただければいいんですが、この映画を観た本木さんが「今までの映画で樹木さん一番出来がいいんじゃないですか?」とほめられました。でもさらっとしたきれいな役者さんだったら、出てるか出てないか分からないまま終わっちゃうんじゃないかと心配になりました。
MC:監督、最後に見どころをお願いします。
監督:子供たち7人が笑ったり、走ったり、寝ていたりという姿が本当に魅力的な映画になったなと思います。でも子供たちが自由にこの作品で息づくことができたのは、樹木さん、大塚さんはじめ周りの大人の役者のみなさんが、台本を渡していない子供たちにつきあって、現場でのやりとりの時間を楽しんで、子供たちの自然な表情を引き出して頂いたということが、もうひとりの画面に映っている演出家という感じで支えていただいたと思っています。
樹木:子供を描くのが得意な監督の次の作品が、不幸な子供を描くような作品になってほしくない。日本が、そういった国になってほしくないですね。