日程:4月26日(火)
会場:よみうりホール
登壇者:新海誠(監督)、金元寿子(声優、アスナ役)、井上和彦(声優、モリサキ役)
MC:伊藤さとり

『秒速5センチメートル』から4年。デジタル・アニメーションを革新した鮮烈なデビュー作『ほしのこえ』以来、“心の距離”を丹念に描き続け、若者の絶大な支持を得てきた新海誠の最新作『星を追う子ども』が、5月7日(土)より、シネマサンシャイン池袋、新宿バルト9ほかにて、ロードショー!

4月26日(火)よみうりホールにて催された特別試写会の上映後、新海誠監督、主人公・アスナ役の金元寿子さん、モリサキ役の井上和彦さんが登壇しました。

——金本さんは今回初めて新海監督に出演し、いかがでしたか?

金元:新海監督の作品は繊細で柔らかいイメージがあり、私にそういう心の動きが表現できるのか緊張していました。しかし、実際にアスナを演じてみて、段々と楽しくなっていきました。またアニメの監督というと怖そうなイメージがありますが、新海監督と初めてお会いして、なんだか「怒」っていうものがないような(笑)、優しくて繊細な方で、リラックスして演じることができました。

——井上さんは『ほしのこえ』以来、新海監督とは二回目の出演となりますが、いかがでしたか?

井上:新海監督は、アフレコ監督の隣に座って、とことんこだわって、こだわって、こだわりぬいて、収録を進めていきました。繰り返すうちに収録もどんどんよくなっていくように感じました。普通、何回も繰り返すとへこんでしまうこともあるのですが、そういうこともなく、(作品を)良くしていこうという欲にかられました。

——実際にお客様に作品を観てもらいましたが、どんなお気持ちですか、新海監督?

新海:誰かに観てもらいたいという気持ちでこの2年間ずっとやってきました。ようやくその仕事が終わったんだな、という心境です。

——モリサキの役柄を、井上さんをイメージして作られたと聞きましたが。

新海:そうですね。脚本を書いてる段階から、この声は井上さんかな、と。モリサキは複雑なキャラクターで、主人公はアスナですが、影の主人公はモリサキなんですよね。子どもから大人を見たときの未知な感じ。大人って何考えてるんだろうっていうような、複雑な感じを井上さんならできるんじゃないかと思って、(井上さんを)当てにしてました。

井上:はい、とっても難しかったです。

一同:(笑)

——金元さんはアスナというキャラクターをどのように思います?

金元:アスナは子どもの割にはしっかりしていて、自分とかけ離れた子ども時代だなと思ったんですが、物語が進むにつれて、いきいきしてくるのが印象的でした。別れのセリフなどが難しいな、って思いながらも、大事にやらなきゃなと思い、演じました。

新海:アスナってキャラクターは子どもということもあり、自分が何をしたいのかわからない。だから行動を起こして突っ走って物語を進めていく。最終的には寂しかったんだなということに後になって気付くのです。

——井上さんはモリサキというキャラクターをどのように思います?

井上:モリサキは一見大人です。しかし、彼の奥さんを想うやさしさや切なさ、不器用さを感じつつ、演じました。

新海:モリサキはアスナと違って、自分が何をしたいかはっきり分かっている。この映画のキャラクターたちはそれぞれがバラバラな方向を向いていて、少しずつ近づいたり離れたりをしているのです。

——この物語の発想が、昔からあるって聞いたのですが。

新海:小学生の時に読んだ本がきっかけで、地下世界アガルタを知りました。ただ、その本が未完のまま作者が死んでしまい、他の方が補足したエンディングを読み、これは自分が読みたいものと違うなと感じ、自分だったらどんなエンディングを描くのだろうと考えたのが、ひとつのきっかけになっています。また、ロンドンに一年間滞在していた時に、本作の脚本を書いていました。ロンドンのどよんとした雰囲気と、自分が何かに沈んでいくような当時の心情が脚本に反映しているのかもしれません。また、小学生に読んだこの本を通して初めて人が死ぬっていうことがどういうことなのかを意識するようになりました。自分がやり続けてきたことが途中で終わってしまうんだなと。

——「喪失を抱えて生きる」っていうセリフが印象に残りましたが。

新海:人間が永遠に生きることができないっていうのは当たり前なことなのです。だから、大切な人がいなくなり、喪失を抱えて生きるっていうのも当たり前なことなのです。シンが「生きているのが大事だ」っていうセリフがあります。私が伝えたいのはメッセージというよりも、あの時にほとばしった、アスナを想うシンの気持ちなのです。

——最後に一言どうぞ。

井上:この後何年も何十年もいろいろな人に観てもらいたいです。

金元:普段考えられない生や死についてをストレートに考えさせられる作品です。

新海:私が作品を作り続けられる理由は、周りのスタッフやみなさんのおかげだと考えています。それにかなう作品を作れたと思います。これを受けてどのように感じたかネットで書いて欲しいと思います。是非、検索するので。

——ありがとうございました!