3月5日(土)より、大阪歴史博物館にて開催しておりました「おおさかシネマフェスティバル2011」。
6日(日)は、2010年度おおさかシネマフェスティバルの【ベストテン発表&表彰式】が開催され、満席
のお客様と華やかなゲストの登場で、会場は多いに盛り上がりました。

▼受賞結果  (★印:来場ゲスト)
監督賞 ★三池崇史(十三人の刺客)
主演男優賞 ★堤真一(孤高のメス)
主演女優賞 ★吹石一恵(ゲゲゲの女房)
助演男優賞 ★桐谷健太(オカンの嫁入り)
助演女優賞 ★谷村美月(おにいちゃんのハナビ、十三人の刺客、ボックス!)
新人男優賞 ジャルジャル(ヒーローショー)
新人女優賞 水原希子(ノルウェイの森)
脚本賞 ★呉美保(オカンの嫁入り)
撮影賞 ★辻智彦(キャタピラー)
音楽賞 ★川井郁子(トロッコ)
新人監督賞 石井裕也(川の底からこんにちは)

映画賞 ★真利子哲也(イエローキッド)
特別賞 高峰秀子 ★福本清三 (座頭市 THE LAST大奥、十三人の刺客、桜田門外ノ変、最後の忠臣蔵)
★日本映画1位:『悪人』 
★外国映画1位:『インビクタス/負けざる者たち』

【主演&助演、ベテラン特別賞】
年々ゴージャスに盛り上がる「おおさかシネマフェスティバル」2011は3月6日、大阪・谷町四丁目の大阪歴史博物館で行われ、今年は主演男優賞・堤真一(孤高のメス)、主演女優賞・吹石一恵(ゲゲゲの女房)、助演男優賞・桐谷健太(オカンの嫁入り)、助演女優賞・谷村美月(おにいちゃんのハナ ビほか)ら豪華メンバーが顔をそろえ、発売初日(2月5日)午前中に完売、追加発売も即完売の人気で、場内はぎっしり満員の盛況となった。
スタッフ関係も監督賞・三池崇史(十三人の刺客)、脚本賞・呉美保(オカンの嫁入り)、撮影賞・辻智彦(キャタピラー)、音楽賞・川井郁子 (トロッコ)と全員が顔をそろえたほか、特別賞にも「5万回斬られた男」福本清三が選ばれるなど、質量ともに最強の充実メンバーとなった。
ここ数年、授賞式を盛り上げている名物司会者・浜村淳氏が今年も絶口調で、蕭秀華さんとともに爆笑式を盛り上げた。本映画祭の特色のひとつ、自主制作映画対象の「インディペンデント映画賞」の真利子哲也監督もこの日、東京から駆けつけ、大阪でただひとつの映画祭の充実ぶりをみせた。
授賞式の最後に登場した堤は西宮出身であることから、いきなり「今年の阪神タイガースは?」と聞かれ「そんなん知らんわ」「今年はパリーグが 面白い」と話して会場を爆笑させた。受賞作『孤高のメス』については「いい話だし、医者だし、オペシーンだと顔が映るのでやることにした。内臓は美術さんの苦心の作で、糸を結ぶ練習はしっかりとやりました。不器用でもう老眼なんで糸見えなくて苦労した。撮影では映らないから、とちょっと太目にした」と意外な苦労話も披露。「映画の出来より、自分に対する不満の方が多かったかな。僕はあんなええ人間じゃないし」と本音も。完璧な“信念の医者”が手術シーンで都はるみの曲をテープで聴く微笑みシーンは「あれは監督のアイデアで、本当に演歌を聴きながら手術する医者がいたらしい。その人は石川さゆりが好きで僕もその方がよかったけど」。完璧に近いヒーロー像には「僕は自分に甘く、人に厳しい」と意外な自己批判だった。
NHK朝ドラとは異なる『ゲゲゲの女房』で主演女優賞に選ばれた吹石一恵は前作の『THE LAST MESSAGE 海猿』とは180度異なる演技内容に「海猿はほとんど水浸しでしたからねえ」。「『ゲゲゲ 〜 』は自分の 結婚観、夫婦観とは違うのですが、数年前まではそれが当たり前だった、と聞いて……。撮影は朝ドラの放送前だったのでよかった。気にする人なので。クドカン(宮藤官九郎)さんとはいつかご一緒させていただきたい、と思っていたので、決まったときはなんて素敵なキャスティングだろうと思いました。若いころ
の水木さんとそっくりだったんですよ。でも、映画は順撮りで、シーンを追うごとに貧しくなっていくし、リアルに映される監督さんなので楽しくはなかったですね」とこちらも意外な撮影秘話。最後に「吹石にやらせてみたら、といわれるようになりたいですね。生まれた大阪で賞をいただけたのがうれしい」。
若さで勝負の桐谷健太は前夜、大阪の実家に泊まって会場入り。午前中に「受賞記念」として上映された『オカンの嫁入り』後のトークショーに呉美保(お・みぽ)監督(脚本賞)とともに参加した。「脚本は1カ月前に読んだ。呉監督は自分で脚本書いてるから全部分かっていて指示も的確で、たいていワンテイクで出来た。」また、「人生初の賞を大阪でいただけるのがうれしい。でも、これからあと100個ぐらいは(賞を)取っていきたい」と壮大な目標を語っていた。
新人賞、助演女優賞に続いて3年ぶり3度目の受賞となる谷村美月は『おにいちゃんのハナビ』をはじめ、『ボックス!』『十三人の刺客』『行きずりの街』と立て続けに出演。谷村は「『おにいちゃん〜 』は自分の中にあるものですね。病気を感じさせない明るさが分かる。(闘病シーンの)髪の毛は剃りました。映画見て泣きました。脚本でも泣きました。たくさん出させていただきましたが、20歳になったので、女優として女性として成長して、大人の女を演じられたらと思います」と語っていた。
特別賞の“斬られ役”福本清三は「スターはみなさん、“斬り方”を工夫しています。一番は萬屋錦之介さんですね」と斬られ役の芸術的な型を実演 して会場を沸かせた。大ヒットした米映画『ラスト・サムライ』ではあのトム・クルーズと共演したことに「今思ったら夢のようですねえ。ホンマにあったことなんかなあ、と。2ショット撮ったことがあるので、現実にあったんだと思いだすことがある」と語って人柄を思わせた。

【スタッフ関係】
初挑戦の映画音楽『トロッコ』で見事受賞した音楽賞の川井郁子は撮影の舞台になった台湾には一度も行かなかったが「風景写真をみてたら自然にニ胡(にこ=中国の伝統楽器)の曲のようなメロディーになりました。初めての映画音楽で賞をもらえて光栄です。これをきっかけに、映画とのコラボをやっていきたい」。前日3月5日公開された『COLD SLEEP』はヴァイオリンの女神・川井が、ロシアバレエの至宝ファルフ・ルジマトフと競演した画期的な試み。受賞を機に映画と音楽のコラボが川井のライフワークになりそうだ。
脚本賞の呉美保監督は「自分で脚本書く方が自分の思いを伝えやすい。1年ぐらい準備した。そんなに長いわけではないけれど、ひとつひとつが濃厚な思い出ですね。呼んでいただけたことにありがとうございます。浜村淳さんにお会いできたことがかなり嬉しかったし、上映もしていただけてうれしい」。
和歌山出身の撮影賞・辻智彦は若松孝二との偶然に出会い、今では若松組になくてはならぬキャメラマンになったいきさつを語り「大阪は子供のころからあこがれの地。大阪のゆかりの賞をもらえてうれしい」。
日本映画“最多”の三池崇史監督は「これまでに100本ぐらいは撮ってますかね。短いのも入れて。一番ヒットしたのは『ヤッターマン』と『クローズゼロ』」。受賞作『十三人の刺客』では「稲垣吾郎の役はプロの俳優じゃない人を探した。切れてるようなやつを。東京から撮影にやって来て、小便するシーンだけ撮って帰るなんてもったいないかもしれないけど、彼はちゃんとやった。小便はしなかったけど」と裏話。「20年やって来てアカデミー賞にまで呼ばれたけど、居心地は悪かった」と本音で語れる“おおさか”にほれ込んだ様子。大阪・八尾出身で「18歳の時、横浜に出たけど、大阪は子供の時になくしてしまったものが今もある。スイッチを切り替えるとその場所へ帰れる。」
編集中の仕事に区切りをつけて急きょ参加した真利子哲也監督は少しタッチが似ている三池監督を前にして緊張気味。「大阪出身の監督はつぶしていかなきゃ」とジョークをとばす三池監督に苦笑しきりだった。【安永五郎】