2月19日(土)、新宿K’s cinemaにて公開したジョニー・トー監督「MAD探偵 7人の容疑者」(配給:彩プロ)のスペシャル—トークイベントが行われた。客席には男性客だけでなく若い女性客も多く見られ、初日から多くのファンが駆け付けた。その初日12:45の回上映後、ジョニー・トーファンを公言している映画監督の松江哲明さんと、映画評論家の宇田川幸洋氏をゲストに本作や香港映画の魅力について語りつくしてもらった。

トークでは「MAD探偵〜」がいかに変な映画か、そして香港映画がいかに面白いかが話題の中心になり、ジョニー・トーファンにはたまらない内容で盛り上がった。
予想もつかない展開で初めて見た観客の多くが驚きの声を隠せない「MAD探偵 7人の容疑者」。
まず最初に本作について松江監督は、「僕は大好きな映画だけど、ガチのジョニー・トーのファンはびっくりする作品だと思いました。この映画って、映画でしかありえない表現でしょ?」とコメント。ラウ・チンワンが犯人の気持ちになり撃たれてカット・バックするシーンや人格が見えてしまうというアイディアはすごい、と細かい部分での魅力について熱く語った。
これに対し香港映画の評論も多く書かれている宇田川氏はジョニー・トー作品の魅力について、「スタイリッシュな、いわゆるノワール系のアクション映画も多く撮る一方で、気の狂ったコメディなどすごい変な映画も撮っている。元々職人監督でコメディやメロドラマを作っていて、男性的なアクションが好きだとわかったのはずっと後。今回も変なことやるなと思いました。」と改めて評価。幅広いジャンルを手掛けるトー監督は、香港では人気のコメディ作品を撮ることで、次回作品の資金作りをして製作にのぞんでいるのではないか、と香港映画業界の様子などについても語った。
本作では人の死をきっかけに話が展開していくのだが、宇田川氏は同日公開のイーストウッド監督作の「ヒア・アフター」と比較して「アメリカ映画など、死とかそういうものの考え方が西洋とは違うなと感じた。」とコメント。本作を見ることでジョニー・トー、そして香港の思想などを感じる事が出来るかもしれない。
最後に香港映画の魅力について、松江監督は、「ジョニー・トーの変な映画を出来の良し悪しで評価しちゃいけない。映画とは文化を知るためのものであって、良し悪しではない」、それを受けて宇田川氏も「香港は変な笑いが好き。僕はこういう悪い映画が見たい。良識的な意味で「悪い」映画が香港にはたくさんあるので、逆に悪くて面白い映画が見たい」と語り、場内の観客も深くうなずいていた姿が印象的だった。