12/4(土)、『ヘブンズ ストーリー』が十三の第七藝術劇場にて関西公開の初日を迎えた。
ピンク映画から、『感染列島』『フライングラビッツ』といったメジャー作品まで、振れ幅の広いフィールドで活躍する瀬々敬久監督。社会的題材をモチーフにした作品づくりをライフワークとし、国内外で高い評価を得て来た。『ヘブンズ ストーリー』は光市母子殺人事件をモチーフに、総勢20人以上の登場人物の10年を全9章に渡って描くことで、復讐の先を描いた瀬々監督渾身の作品だ。

上映後の舞台挨拶に瀬々監督、山崎ハコさん、大島葉子さんが登壇。4時間38分にも及ぶ旅を終えた観客に、3人からねぎらいの言葉が贈られた。
瀬々監督は「皆さん本当にお疲れ様でした。余韻に浸っている中、ズカズカと参りまして申し訳ありません。ありがとうございます!」と、力強く挨拶した。

■瀬々敬久監督「自分の中に明確な答えは見つかってない。だからこそ考えたい」
観客から「ラストシーンの意味は?」という質問が寄せられた。
瀬々監督は、「この映画は2006年に企画を考え始めて、2008年の夏に撮影に入り、1年半かかって撮影しました。第9章は非常に悩みました。答えのようなものを導びこうと考えて考えて試行錯誤して、ああいいった形になったとしか言いようがない。
今でも自分の中ではある意味明確な答えが見つかってないんですよ。
こういう世の中に映画を作ることで物事を考えることが大切な気がしました。この映画を観ていただくことで、お客さんも一緒に今の時代、今の社会、人生を考えていくことにつながるんじゃないかと思って。最後のところはしゃにむになってやりましたね。
ハコさんが観る等身大の人形芝居は、百鬼どんどろの岡本芳一さん。他のシーンにも出ていただくのに一緒に構成も考えたんですけど、岡本さんが骨髄性の病気にかかりまして、実際やられているのはお弟子さんの森田晋玄さんです。岡本さんは7月に亡くなりました。色々な人生が集約して、この映画に大きな力を与えてくれました。すみません。答えになってないんですけど」

■山崎ハコ「35周年にして、まだ初めて挑戦できることがあったのが嬉しい」
歌手として活躍してきた山崎ハコさんは、今回初めて本格的な映画出演となった。瀬々監督のオファーを、最初は音楽のことだと思ったと言う。
「監督から“いえ、違います。その存在です”って言っていただいて。個人的な話ですが、長生きだった大好きなばあちゃんとのお別れや色々なことがあって、寂しくなっていた頃で。「存在」という言葉で、ばあちゃんやみんなを引き連れて映画に出られる気がして。私は音楽しか取り柄のない女ですが、「やろうか」って急に思いました。
デビュー35周年にして、「まだ初めて挑戦できることがあるんだ!」って嬉しさもあって、この映画の中で“恭子”って人を生き抜こうと思いました。
出演にあたっては一杯勉強しました。歌も少しずつ変わるかもしれません。35年目にして一人の人間としての宝をもらいました。瀬々監督に知ってもらえたし、本当に“恭子”じゃないですが、生きて来たことを心から肯定できます。ありがとうございました」

■大島葉子「この作品に関われたことが光栄です!」
河瀬直美監督の新作『朱花の月』の撮影で関西入りをしていた大島さんは、急遽この舞台挨拶に駆けつけた。「いろんな意見がある映画だと思いますが、この作品に関わった瀬々監督、スタッフ、役者全てのみんながかけがえのない体験をしたと思っています。私はその中にいられたことがとても幸せで…」ここで関西出身の大島さんが感極まって涙ぐむハプニングが。「大阪で公開されたことが凄く嬉しく思っています。ありがとうございました」

最後に第七藝術劇場から3人に花束が贈られた。支配人の松村氏は「若松孝二さんに花を贈ったら「金くれ」って言われましたね」会場から笑いが起こる。瀬々監督も「僕もお金の方を!」と笑顔を返した。

■瀬々監督の旧作特集上映も開催!
第七藝術劇場では、12/31まで上映予定。12/18〜12/24は『ヘヴンズストーリー』公開記念として、<瀬々ワールド/実録・犯罪・事件>と題した特集上映が組まれている。この機会に旧作から『ヘヴンズストーリー』への流れも体感してみよう。

(Text:デューイ松田)