『ラストサムライ』『硫黄島からの手紙』のワーナー・ブラザースが、今度は日本人の目で、日本の魂そのものだといわれる史実に真っ向から挑んだ『最後の忠臣蔵』。本作の公開を記念し、「北の国から」シリーズの杉田成道監督と「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督という日本の映画・ドラマ界の巨匠、お二人の対談が実現致しました。今回はより多くの方々に観て頂くため、USTREAMでの生中継を実施。杉田監督の大ファンだと言う本広監督との対談は大いに盛り上がり、日本を代表する監督お二人の撮影論から演出論にいたる多様なお話を伺うことができました。その後、桜庭ななみのメイキング特番“大石可音(おおいし・かね)になるまで”を配信。お話を聞き足りない様子の本広監督は杉田監督とUSTREAM配信後も大いに話しこんでおられました。

日時   2010年11月12日(木)20:00-21:30
会場   ソフトバンク渋谷 USTREAMスタジオ
登壇   杉田成道監督 「北の国から」シリーズ
本広克行監督 「踊る大捜査線」シリーズ

本広克行監督
まず「最後の忠臣蔵」、べらぼうに泣きました。忠臣蔵でこういうストーリーが観られるのか!と。初めは男のハードな話かと思ってたら、物語が進むにつれてだんだんと嫁を送り出す父親の話になっていって・・・。誰でも楽しめる作品だと思います。杉田監督の現場は日本一厳しいと言われてますから(笑)、それだけのこだわりがあって、「最後の忠臣蔵」のような作品ができるんですね。

杉田成道監督
私の現場はそれほど厳しくはないよ。リハーサルはたくさんするけど、撮影自体はワンテイクかツーテイクですよ。

本広克行監督
僕は「北の国から」シリーズが大好きで、ビデオからDVDから全部持っているんです。「初恋」は10回以上観ましたね。「踊る大捜査線」にも影響を受けてるシーンが実はあるんですよ(笑)。杉田監督の映像って、お客さんに観たいものを観せることができると思うんです。「踊る〜」にもカット割りなど、めちゃくちゃマネしてるところがあったりします(笑)。

杉田成道監督
やめたほうがいいよ(笑)

本広克行監督
桜庭ななみさんの涙が頬を伝うシーンはきれいですね。彼女の起用は大抜擢だと思いますが、どのような経緯で決められたんですか?

杉田成道監督
キャスティングのときに、吉永さゆり、夏目雅子、宮沢りえが出てきたときのような女の子って注文を出したんです。でも以前「北の国から」で倉本さんに「新人を起用するにはそれなりの覚悟が必要だ」と諭されたんです。それがすごくインパクト強くて、今でも気をつけているんだけど、桜庭ななみの写真を見て一発で決めたんです。

本広克行監督
今回は、巨匠の映画スタッフさんとしかも京都の撮影所でやられていますよね。

杉田成道監督
美術の西岡さんは88歳のベテランで、その周りのスタッフの皆さんもみんな80代の方々でした。瀬尾孫左衛門(役所広司)の家の柱は、何回も焼いて古さを出して、1ヶ月くらい掛かって作っているんです。撮影監督の長沼さんは『たそがれ清兵衛』を撮っているし、衣装も黒澤明監督のお嬢さんの黒澤和子さんにお願いしました。当時の風合いを出すために昼間のシーンは、スタンリー・キューブリックの「バリー・リンドン」で使ったレンズを使用して、ほとんどノーライトで撮ってくれとお願いしたんです。ナイトシーンはロウソクの明かりを生かすために、ほとんどライトを使わないようにしました。衣装も、この生地は実は洋物を使ってるんです。この映画のために作ったほぼ1点もので、厚い重みのある良い質感が出てますよね。和物だと逆にサラっとしてしまうところを、上手く厚みを出して頂けたと思います。

本広克行監督
劇中に出てくる芝居小屋は「金丸座」ですよね。あそこは、僕の地元なんですよ。近くの高校に通ってましたから。

杉田成道監督
香川だったの?あのシーンでは地元香川のエキストラの人にお願いしていたから、本広監督に出てもらえばよかったね(笑)

本広克行監督
あの役所さんと佐藤さんが刀で対峙するシーンはすごく良かったですね!洋画みたいで、ススキの間を駆け抜けるシーンがすごく良かったです。演出はどのようにされていたんですか?

杉田成道監督
二人はスケジュールが合わなくて、リハーサルはあまり出来なかったんだけれど、寺坂吉右衛門(佐藤浩市)が橋の上で話すシーンは50テイクくらい撮ったよ。よく声がつぶれなかったな(笑)。浩市も「こんなに撮ったことはない」って言ってたよ(笑)。

本広克行監督
どうしたら杉田監督のような映像が撮れるのでしょうか?

杉田成道監督
ねちねちしつこく撮ることだね(笑)

以上