来年年明けに公開となります映画「愛する人」が、第7回ラテンビート映画祭にてジャパン・プレミアを迎え、37年間、会うことがなかった母と娘の物語にちなみ、安藤和津さんと、映画監督である安藤モモ子さんによる母娘対談なる、舞台挨拶が執り行われました。母として、娘として、そして奥田瑛二さん安藤サクラさんご家族の事などを語って頂きました。和津さんが自身の母親の事を思い出し涙を流す一面もありました。

[日時] 9月17日(金) 13:15〜[場所] 新宿バルト9 (9F シアター8) [ゲスト] 安藤和津さん & 安藤モモ子さん 

Q映画についての感想をお聞かせ下さい?
和津さん : とても深く、愛という事を考えさせてくれる映画でした。監督が男性と聞いてビックリしたのですが、私が女として62年間経験してきたこと、感じたことが全部この映画に詰まっていました。
自分の実体験とも重なって・・・。実は私の母も、映画と同じ様に子供(和津さんの兄)を産んですぐに手放さなくてはならず、45、6年間会えなかったんです。ずっと息子がどこにいるのか考えながら生きてきた母の想いを知っているので、映画で描かれている、会えない子供に対する母親の気持ちが、心に突き刺さっちゃって(涙を流す)。自分の母を重ね合わせて映画を観てしまったものですから、泣けて泣けて・・・。すいません、涙脆くて。

モモ子さん : 映画を観るときは、映画監督ではなく一人の観客として鑑賞するようにしています。でもそんなことを意識しなくても、この映画はあまりに素晴らしすぎて、親子の関係が3世代に渡り描かれていて、女性として生きていく中で考えられることが全て書かれている。今までのロドリゴ・ガルシア監督の作品の集大成です。皆さんには、何の先入観も無く観て欲しいです!

Q母として、娘として、互いへの見方や想いが変わった時、またそのきっかけは?
和津さん : 彼女が監督として世に出た時ですね。「ああ、これで同じ社会に、女性として同じ立場で向き合えるな」と思いましたね。
モモ子さん : 娘として、母への想いはずっと変わることなく、そしてこれからも変わらないものだと思います。特に妹のサクラも含め、私たち母娘は、日常でよく会話をするので特に大きな変化ということはないかもしれないです。例えば私がもの凄い辛い時などにふと「ああ、私はこんなに母に頼っていたんだ」と強く思うことがあります。常日頃から「母」の存在には頼りきっていますね(笑)。年を取るにつれて、母の存在のありがたみが大きくなります。

和津さん : でもたまには母娘の関係が逆転することもあるんです(笑)。私はすぐにカーッと熱が入るタイプなので、それを娘たちがなだめる時もありますね。

モモ子さん : うちの家族はみんな同等な関係だと思いますね。「母」「父」ではなく、「カズさん」「奥田さん」て呼んでますしね。

Q母娘という関係性についてどのように考えていますか。
モモ子さん : 基本的に生きていくモチベーションって誰かに必要とされることだと思うんですね。子供にとっては母親しかなくて、それこそ究極の幸せと言えますよね。血が繋がっていなくても、例えば、親がいない子供がいれば、子供がいない親もいて、その両方がいるということは、世の中うまいパズルになっていて、そういうところが組み合わされているし、だからどんな人でも家族を築くということは結局可能なんだなと、誰かに必要とされることは人としての究極の幸せなんだなと考えています。

和津さん : この映画を観て思ったんですけど、人間ってやっぱり小さな粒くらいでも愛があると、それが人生を生きていくなかでの何かの火種になっていくんです。よく考えたら、この世の中って全員母親から産まれてきているんですよね。だから、愛(母性)の小さな火種がこの世の中を作っているんだな感じました。この子を産んで、こんな思いをして子供を産む母親達は神様だと思いました。私も子供によって成長させられましたし、今この世の中に欠落しているのが、その言うことを振り返ることじゃないかなと思って、私にはこの映画は本当に衝撃でした。

Q最後に一言お願い致します。
モモ子さん : さっきから素晴らしい素晴らしいと言ってばかりですが、きっとこの映画を見た後は、皆さんいろんな心のヒダをつつかれていると思います。私も心境がこの映画を観て変りました。映画を一本観ることは、人生観が変ったり、一つの経験だと思っています。監督していない私が言うのもなんですが、素晴らしい作品です。是非楽しんで下さい。

和津さん : 母の介護を10年間やってきて、4年前に見送ったんですが、この映画を観て、その母に産んでくれてありがとうと思いました。そして、娘の2人に私の所に来てくれて本当にありがとうご思いました。いつか産まれてくるであろう、孫にも。産まれてこないかもしれませんが(笑)。こうやって命ってバトンタッチしていくんだなと、自分の中にある何かが残って行くんだなと思いました。本当に細かい所にまでメッセージが散りばめられた映画だと思いますので、たっぷり楽しんいでいただきたいなと思います。