映画祭4日目の15日(土)。“コンペティション”部門では、マイク・リーの『アナザー・イヤー』が公式上映された。ロンドンで医療コンサルタントをする初老の女性ジェリー(ルース・シェーン)と彼女の夫(ジム・ブロードベント)と息子、そして彼らのまわりを囲む人々の人間模様を春から冬へといたる季節ごとに描写した滋味あふれる人間ドラマで、実に見応えがあった。マイク・リーは1996年の『秘密と嘘』でカンヌを制したイギリスの名匠だが、本作も完成度の高い素晴らしい作品で、役者陣の見事なアンサンブル演技に見とれてしまった。なかでもジェリーの女友達メアリーを演じたレスリー・マンヴィルの演技は出色!
 ウディ・アレンが監督業に徹した招待作品『ユー・ウィル・ミート・ア・トール・ダーク・ストレンジャー』には、ナオミ・ワッツ、アントニオ・バンデラス、ジョシュ・ブローリン、アンソニー・ホプキンスという豪華キャストが出演。上映は11時半、17時、19時半の3回、パレ・デ・フェスティバルの大ホール、リュミエールで行われたのだが、プレス試写も兼ねた11時半からの上映でさえ、30分前に満員御礼となる人気ぶりだった。
 公式上映が深夜0時45分からというミッドナイト上映作品、グレッグ・アラキ監督の『カブーム』は、中規模会場ブニュエルで16時から行われたプレス試写で鑑賞。ゲイのカレッジ青春白書かと思わせた物語は、サイキックなSFモノに発展、しまいにゃ人類滅亡へといたるという怪作であったが、いやぁ最高に面白かった。いつも思うのだが、グレッグ・アラキは起用する男優の趣味が実にいい。今回の主演俳優トーマス・デッカーも輝いてました!

 映画祭5日目の16日(日)。“コンペティション”部門では、フランスのベテラン、ベルトラン・タヴェルニエ監督の『モンパンシェのプリンセス』と、マハマット=サレー・ハルーン監督のチャド映画『スクリーミング・マン』が、特別上映部門ではドキュメンタリー映画2作品が上映された。
「クレーヴの奥方」で知られるラファイエット夫人の短編小説「モンパンシェ公爵夫人」を映画化したコスチューム劇『モンパンシェのプリンセス』の主演は、ランベール・ウィルソン。メラニー・ティリー、ギャスパー・ウリエル、グレゴワール・ルブランス・ランゲら人気の若手俳優が宗教戦争時代の歴史に名を残す実在の人物に扮している。
 
◆インターナショナル・ビレッジ内のジャパン・パビリオンで15日(土)、15時〜18時に行われた“Happy Sake Hour”をキャッチ!

 映画祭の期間中、各国の映画機構が出展し、自国映画をプロモートするパビリオンが立ち並ぶ映画村(インターナショナル・ビレッジ)が海岸沿いに出現するのだが、今年のジャパン・パビリオンは、財団法人日本映像国際振興協会(ユニジャパン)、東京国際映画祭(TIFF)、日本映像振興株式会社(TIFFCOM)、JAPAN国際コンテンツフェスティバル(CoFesta)が共同で出展している。
 このインターナショナル・ビレッジでは、映画のプロモーションを円滑にするためか(笑)、色々な趣向を凝らしたミニ・カクテル・パーティが、毎日どこかのパビリオンで行われている。映画祭に登録したバッチを身に付けていれば、入場OKなので人気の交流の場となっている。昨日14日の夕方には、ロシアのパビリオンでウォッカベースのカクテルが振る舞われて人だかりができていた。
 もちろん、我らが日本酒のパワーも絶大で、15日の15時から始まった“Happy Sake Hour”にも大勢の人が押し寄せ、芋ノコ状態の盛況となったが、間が悪いことにパーティの中盤以降は大雨に見舞われてしまい、猛烈な寒さに身を震わせてしまった。

◆続く16日(日)には、各国セラーのブースが立ち並ぶリヴィエラで、日本の会社18社がイベント“Sake Night”を共同で開催!

 カンヌは映画祭と併行して、世界最大の映画見本市マルシェが開催されることでも有名だ。映画祭の期間中、世界中の映画会社のセラーとバイヤーたちが交渉を繰り広げる商談の場となっているのだ。ハリウッドのメジャースタジオが高級ホテルにブースを設ける一方、メイン会場パレ・デ・フェスティバルに隣接する会場リヴィエラにも各国のセラーのブースが立ち並んでいる。日本の映画会社やTV局の多くも個別に海外セールス用のブースを出して自社の映画の宣伝と売り込みを行っているのだ。
 そこで、カンヌ映画祭に参加している日本の会社が互いに協力し合い、日本映画をPRしようと、揃いのハッピを着て日本のビールや日本酒を振る舞い、日本独得のおつまみを提供するイベント“Sake Night”を16日の夕方にリヴィエラ内のブース(A11&A14)で開催。珍味を味わえる思いがけないチャンスを得た外人客に大ウケであった。共催したのは東映、東宝、松竹、角川ピクチャーズ、日活、NTV、TBS、ギャガ、ジェネオン・ユニバーサル、東北新社、ショウゲート、円谷プロダクション他の全18社。
 なお明日、17日の18時からは、パレ・デ・フェスティバルの地下に設置された“ジャパン・ブース”でもミニ・カクテル・パーティ“ジャパン・カクテル”が催されるというから楽しみだ!
(記事構成:Y. KIKKA)