祭日の13日から4連休となったことで、高級ホテルが並ぶビーチ沿いのメインストリート“クロワゼット通り”は、観光客や映画ファンが詰めかけ、朝から晩まで大賑わいに。やっとカンヌらしい華やかなムードとなったが、相変わらず天気は芳しくなく、ちょっと残念だ。

◆中田秀夫監督がメガホンを取ったイギリス映画『チャットルーム』が“ある視点”部門で上映

 『リング』シリーズで世界の人々を戦慄させたジャパニーズ・ホラーの旗手、中田秀夫監督が『ザ・リング2』に続き、海外でメガホンを取った『チャットルーム』が、現地時間14日の22時半から公式上映された。
 あいにく中田監督は、家族の病気のために現地入りせず、上映会場のドビュッシー・ホール前に敷かれたブルーカーペットを歩くことは叶わななかったが、「バーチャルな世界におけるコミュニケーションは、恐怖や怒り、欲望や不安といった要素を増殖させる危険性をはらんでおり、自殺や人殺しさえ起こす原因になりかねない」というコメントを寄せ、出演したイギリスの若手俳優たちが客席入りしたことで、会場は大いに盛り上がっていた。
 『チャットルーム』は、インターネットのチャットルームで出会ったロンドンの5人のティーンエイジャー(両親や出来のいい兄から疎まれ、孤立している裕福な家の次男坊ウィリアム、幼い頃に家を出た父親の面影を追い続けるひ弱な一人っ子少年ジム、友人の妹に密かに恋心を抱く黒人少年モー、それぞれに家庭や友人関係に不満を抱く少女エヴァとエミリー)が、死のムードが色濃く漂う仮想世界と現実世界で揺れ動き、彼らの心の闇が悲劇を招いていく様を描いた心理サスペンス・スリラー。アイルランド人劇作家エンダ・ウォルシュの戯曲の映画化で、原作者自らが脚色。音楽は押井守作品で知られる川井憲次が担当している。ホラー色はほとんどなく、巧みな色彩設計とバーチャル世界の斬新な造形が光る作品だが、自殺する日本人少女のセリフ(もちろん日本語)に全く字幕がついておらず、その点が解せなかった。キーポイントとなるシークエンスだけに、何か演出意図があったのだろうか?
(記事構成:Y. KIKKA)