( 上映前舞台挨拶 )

第10回東京フィルメックス映画祭のオープニング作品となったのが、ルーブル美術館の依頼で作られたツアイ・ミンリャン監督の映画『ヴィザージュ』。
「今回の作品、映画『ヴィザージュ』長編の第10作品目となる作品なんですけど、東京フィルメックスが大10回という事で、この作品を10回目のフィルメックスで上映して頂く事を、本当に嬉しく思っています。」と嬉しさを隠しきれない様子だった。作品について、「この映画はですね、いささか難解な映画なんですけども、観客の皆様は試されるかもしれません。どうぞ途中でですね、席を立たれないように・・・。もう一言付け加えると、この作品は本当に心から、映画を愛する人の為に撮られた映画です。」と挨拶。
女優のチェン・シャンチーさんは、「私は4・5年前ですかね、東京フィルメックスに参加させて頂いて、ここに参りました。この東京フィルメックスは私にとって、本当に一番親しみを感じる素敵な映画祭ですね!!。今回監督と一緒に仕事をし、またフィルメックスに戻ってくる事ができました。本当にうれしいですね。審査員もしっかりやり遂げたいと思います。」と語ってくれた。

( 監督とのQ&A )

上映後には、監督とのQ&Aも行われた。

・撮影する際に、ルーブルから使用条件とかあったのでしょうか??。

ーまずルーブル美術館の方から、私にオファーがあったのが2005年の時でして、調度ある映画祭で、トリュフォーの回顧展がやっていたんですね。ですのですごく奇遇だったわけですね。その時ルーブル美術館の方から言われたのは、200名の監督の中から私を選んだそうです。そしてルーブルの収蔵映画にしたいと言われました。ルーブルの方からは、特に条件も出されませんでした。ルーブルで撮っても撮らなくても構いませんと言われました。その頃映画『ダヴィンチ・コード』の撮影がルーブルで行われいましたが、その際には、相当な使用料をとったという事だそうです。しかし私に対しては、全く無料で撮っていいという話だったんで、私は即座に決断したわけです。

・撮影の場所は、下水道はじめ、ほとんどルーブル美術館近辺で撮られたんですか??。

ーロケ地の70パーセントは、ルーブル美術館の内外で撮りました。下水道のロケは、ルーブル関係の消防の人達が教えてくれたんですね。ルーブルの人達もあるとは全く知らなかったみたいですね。そして私は約3年かけて様々な角度から、じっくりと細かく観察をしていきました。建物の角度・修道院について、12世紀に建てられたルーブル宮殿もよく観察しました。私にとって観察を通して面白いと思ったのが、普段目に見えない部分が見えました。

・フランソワ・トリュフォー監督でお馴染みのジャン=ピエール・レオさんと撮影する事は監督にとって特別な事だったのでしょうか??。

ールーブルから”どういう作品を撮りたいのですか??”と聞かれました。私が答えたのは、「ジャン=ピエール・レオさんと撮りたい!」でした。大学生の時に、マレーシアから台湾に、大学に進学した時に、はじめて、トリュフォーの作品の中で、ジャン=ピエール・レオに会えたわけですね。20年経ち、彼にようやく会えました。2000年になって1本映画を撮ったわけなんですけど、『2つの時2つの時間』。その時ジャン=ピエール・レオさんは、ゲスト出演をして下さいました。彼はすでに60歳でした。その時彼と色々話したわけなんですけども、彼は非常に年をとって見えました。老いる速度が早いように見えました。それはおそらくトリュフォーが亡くなってしまってからですね。”非常に寂しかった。”のだと思います。ですから老いが早く来てしまったのではないでしょうか。その後私は、ずっと彼を撮りたいと思っていましたが、彼を撮る理由はなかなか見つかりませんでした。私はフランス人でもなく、フランスで撮る理由もなかなかないわけです。なので、ルーブル美術館から、オファーが来た時には、私は即座に”彼を撮りたい!”と言っただけです。

1つ1つの質問に丁寧に答えてくださった監督の作品、映画『ヴィザージュ』。カンヌ映画祭コンペティション部門で上映されており、豪華共演陣には、ジャン=ピエール・レオ、ファニー・アルダン、ジャンヌ・モローほか多数出演している。まだ日本での公開日が決まっていないのが残念だが、24日(火)にもまた上映されるので是非見に来てほしい。