日本とフランスを舞台に、新たな一歩を踏み出す家族の姿を優しく描き出した映画『ユキとニナ』(2010年1月23日より恵比寿ガーデンシネマほか全国順次公開)。
本作は、国際的にも高い評価を受ける諏訪敦彦監督と、フランスの名優イポリット・ジラルドが5年に及ぶ親交を経て、共同監督して誕生させた日仏の国境を越えた感動作です。

このたび、日本公開を前に、フランスよりジラルド監督を迎えて、諏訪監督とそろっての記者会見を行いましたので、

◆まずは、ひとことずつお願い致します。

ジラルド:東京に来て、『ユキとニナ』をご紹介できることをとても嬉しく思っています。
諏訪:我々には両親がいて、この映画にも男性ではありますが、ふたりの親(諏訪&ジラルド監督のこと)がいます。
この映画の誕生に立ち会えて嬉しく思います。

◆共同監督というということで、おふたりには役割分担などはあったのでしょうか?

諏訪:役割分担はせずに、ふたりで撮影にのぞみました。常にふたりで立ち向かいました。
ジラルド:ひとつの“賭け”をしたと思っています。どんな映画になるかわからないで、 取り組んだのですから。“つくること”によって“つくる方法”を学んでいったと思います。

◆ユキ役のノエ・サンピが魅力的でした。
オーディションで選んだ際の決め手は何だったのでしょうか?

ジラルド:様々な条件(日仏の親がいるなど)に合うキャストをパリでみつけるのは非常に難しいことでした。
私はノエ・サンピを選ぶことに複雑でしたが、結果的には良かったと思っています。
諏訪さんの直感ですね。

諏訪:映画づくりにおいて、大きな賭けは俳優を選ぶ時です。
ノエの顔から受ける印象がとても残ったのです。初演技なので、どうなるかわからなかったのですが、私の直感は正しかったと思います。
彼女には惹きつけるものがあります。ノエからたくさんのことを教えられ、成長できたと思います。

◆重要な場所として登場する“森”の持つ意味とは何でしょうか?

ジラルド:森だけが、子どもたちが避難できる場所、唯一自由が存在する場所です。
自らの世界をつくり出し、発明してゆく場所です。
日本とフランスとで、森はそんなに違わないと思います。
全ての人間は皆森から生まれてきました。森とはそういう場所です。

諏訪:社会的なコミュニティから切り離され、自分自身の存在を出会う所です。
また、危機にさらされる所でもあります。少女たちのように森の中で道に迷うことは限りなく危険ですね。常に“私”という存在に出会う場所だと思います。

◆おふたりで共同監督したことについて教えて下さい。

諏訪:発想は、ひとりでするものではありません。さまざまな人が参加することで、
映画が成長してゆきます。私が想像もしなかった形の映画になりました。
ひとりだとラクですが、到達できないこともあります。
これからも共同でものをつくることをしたいと思っています。

ジラルド:私が発見したことのひとつは、映画は長いプロセスによって
できているということです。脚本づくり、撮影、編集、ミキシングというように。
映画には、より自然で人間のルーツにかかわる部分や、
人間の奥底にあるものが出てくるのだと思います。

以上。

2010年1月23日(土)より、恵比寿ガーデンシネマほか全国順次ロードショー