コンペティション国際審査委員の皆様をお迎えして公式記者会見が行なわれました。

■ 日時・場所 10月19日(月)、17:30〜 @ムービーカフェ
■ 登壇者 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(審査委員長)、イエジー・スコリモフスキ、キャロリーヌ・シャンプティエ、ユ・ジテ、松本正道、原田美枝子

第22回東京国際映画祭の最終日には世界各国からコンペティション部門に選ばれた15作品の中から、栄えある東京サクラグランプリを始め、各賞の受賞者が発表されます。その審査を担当してくださる6 名の審査委員の皆様をお迎えして、記者会見が行われました。

イニャリトゥさん: 東京国際映画祭の審査委員長を務められることを光栄に思います。素晴らしい審査委員の方々と体験を分かち合えることを楽しみしています。既に昨日から上映が始まっていますが、私たちの仕事はとても難しいものであると実感しています。
色々なジャンルの映画、実験的なもの、若い監督から長いキャリアのある監督の作品と様々です。自分たちの心に響く、これこそベストな作品というものを選んで行きたいと思います。
スコルモフスキさん: つい今しがた煙がもうもうとしている作品を見まして、煙たさがリアルだったもので会見中に咳き込んでしまう審査委員が多くいるかもしれませんが、お許しください!
シャンプティエさん: 撮影監督として、日本で素晴らしい作品をたくさん見せていただけることを楽しみにしています。また、映画愛好家でもある審査委員の皆様とお仕事できますこと、大変光栄に思っています。
ユ・ジテさん: 私が好きな二人の監督、撮影監督、俳優の方、そして映画関係者の方とご一緒できることは素晴らしいことです。とても良い経験になると思いますので、多くを学んで帰りたいと思います。審査についてはベストを尽くします。
松本さん: 東京国際映画祭の歴史の中でシネマテークのディレクターが審査委員に選ばれるのは初めてのことだと思います。従ってコンペティションの審査に、映画史的な視点を導入するという新しい方針を感じています。日頃は古典映画を見ているので、いきなり現代映画の競技場の中に放り込まれた気がするのですが、映画史に残るような審査委員の方々と全作品楽しんで審査したいと思います。
原田さん: 俳優としては、国際映画祭に作品を出品して受賞することは長い間の憧れです。今回は初めてその反対側に回って、裏側から映画祭を見ることになりました。審査委員は、このまま映画にしたら面白いのではないかと思えるようなキャスティングで、とても嬉しく思っています。今年は心の兄であり師である松田優作さんの20 回忌になります。それで特別上映があるのですが、一緒に映画祭を盛り上げる側にいるということを本当に嬉しく思います。作品はそれぞれ力があって面白いです。残り10 本も楽しみながら見せていただきたいと思います。

質問: 昨年は『アンナと過ごした4 日間』で審査委員特別賞を受賞されましたが、今回審査する側として参加することに違和感はありませんか?
スコルモフスキさん: いいえ、とても心地良いですよ。昨年、今年、そして来年もコンペティションに参加したいと思っています。日本は好きですから、映画をきっかけに毎年訪れ、今後も作品とともに来日したいと思っています。

質問: 撮影でも何度か来日していらっしゃいますが、日本の印象についてお聞かせ下さい。
イニャリトゥさん: 日本に対する印象は、矛盾の多い神秘的な文化の国であるということです。少しずつ理解していますが、まだまだ謎めいた、魅惑的な要素が多くあります。それと同時に親しみも感じます。私の母国に似ているところもあります。長い歴史や神話、文化を根底に、若者たちが前衛的なことに取り組んだりしています。二つの対立する要素が、非常に複雑なものを生み出しています。コンクリートや照明、ネオン、表意文字など、芸術家、とりわけビジュアルアーティストにとって東京は、誘惑的で衝撃的な街です。『バベル』の撮影では、その全てを取り込みたいという誘惑にかられ、自制する必要がありました。
何もかもが細部にわたってパワフルです。寿司をひとつとっても、小さくても全てが整っていて美しい。日本の何もかもについてそういった印象を持っています。

質問: 日本の現代社会において、また、日本人の心に映画祭がどのようなことをもたらすことを期待していますか?
原田さん: 日本には自然もあり、美しい心の在り方というものも生きていますが、ゆったりと暮らせない今の生活があります。映画から色々な人生を体験することができます。自分の人生は一回だけですが、映画を通して色々な人生を体感することができます。それを信じてこれまでやってきましたし、本当に心に響くものを丁寧に見つけ出したいと思いますし、1 等賞の作品だけでなく全ての作品にそれぞれの魅力があるので楽しみにしていてください。
ユ・ジテさん: 映画の仕事をしながら感じるのは人が多様であるということです。審査する上でも、審査委員の考え、作品を作った監督の考え、それを見る観客の考えと、立場が違えば見方も違うので、皆さんの意見に注意深く耳を傾けたいと思います。
松本さん: 私のような浮世離れしている人間にとっては、映画を見ると全部良かったり、全部ダメだと思ってしまったりしまうのではないかという不安はあったのですが、今回のセレクションは巧妙に選ばれていますので、15 本観た後にはしっかりと審査できると思います。
シャンプティエさん: 映画は生き物です。いいなと思える日があれば、その数日後には違った見え方がするかもしれません。ですから今週は、集中してしっかりと作品を見て、映画の魂を掴んで行かなくてはと思います。
その後イニャリトゥさんより、日本文化に対する印象を補足するために『バベル』撮影時のエピソードなどが紹介され、フォトセッションを終えて、記者会見終了となりました。