大邸宅で暮らす裕福な家族と、忠実な使用人との人間関係の矛盾を斬新なカメラワークであぶりだす作品です。監督はじめキャスト、スタッフをお迎えして、上映後Q&A・ムービーカフェにて記者会見が行われました。

質問: 邦題は「ボリビア南方の地区」ですが、具体的にどこのことなのでしょうか。
ヴァルディヴィア監督: 首都ラパスの南の地区はお金持ちの人たちが多く住んでいる地区です。通常ボリビアでは、北にはリッチは人たち、南には貧しいな人たちが暮らしていると言われています。また、地球規模でも、南半球に比べて北半球の方が生活水準の高い国が多いですね。でもラパスでは逆で、南にリッチな人たち、そして北の山の上の方には貧しい人たちが住んでいます。そう言った皮肉と言いますか、言葉の遊びのような意味も込められています。

質問: 映画の中で母親が家を売ってしまった理由は?
ヴァルディヴィア監督: 家を売るということは、全てを手放すということを意味しています。家は階級のシンボルであるだけではなく、家族の生活の全てにおいて中心的な役割を果たしています。ただ、パンを買うお金すらなくなり、召使にお金を借りてしまうなどの状況に直面します。結局は、地元の人が家を購入するわけですが、つまりこれまでの階級が崩壊し、権力と富を手にする新たな人たちが台頭してきているという現実を表しているわけです。現に、ボリビアでは原住民の人が首相に選ばれるなど政治的な変革も見られます。これまでの古いライフスタイルがやっと現代に追いついて、これまでの階級や人種の社会的立場が変わって来ています。

質問: 撮影がとても素晴らしかったのですが、室内はセットだったのでしょうか?
ポール・デ・ルメンさん: 3 種類のレンズを使って、それぞれのシーンをワンショットで撮影できるように、室内を調整しました。
ホアキン・サンチェスさん: 人々の心理的な部分に影響を与えるためだけでなく、物語にとって個々のものが重要であるという考えから、物や空間のディテールを大切に扱いました。

質問: 映画を通して、カメラがかなりアクロバティックな動きをしていましたが、その狙いは?
ポール・デ・ルメンさん: 正にそれが映画のコンセプトを表している点で、時間は線ではなく円状に動いているものであると考えています。そのことを表すために、カメラも輪を描くように動かしています。私が尊敬するドイツの哲学者でソロという人が、環境や雰囲気の中に生活があるというようなことを言っていますが、そのようなことを映画の中に描きたいと思いました。ですから話を伝える順序も重要です。

質問: 大変計算され尽くした撮影だったと思うのですが、その中で演じる側の難しさはありましたか?
ニノン・デル・カスティーヨさん: 役柄というよりも、国の現実をどう描いていくのか、それを自分の物語としてどう語って行けばいいのかということに難しさを感じました。変化をしている国の中で、受け入れがたいことも受け入れざるを得ない、そういったことの表現に苦労しました。