韓国で300万人を動員し、社会現象にまでなった大ヒット・ドキュメンタリー映画『牛の鈴音』の日本プレミア上映が、18日、東京国際映画祭提携企画「コリアン・シネマ・ウィーク」(新宿ミラノ2)で行われました。
12月の公開に先駆けての上映とあって、当日券も即完売し、今年の韓国映画界最大の話題作をいち早く見ようと、熱心なファンで場内はあふれかえりました。

『牛の鈴音』は、79歳の農夫のおじいさんと30年も一緒に田畑を耕している老牛、小言を繰り返しながらもおじいさんを深く愛するおばあさんを主人公に、彼らの深い絆を描いた感動作。
韓国では「これを見て泣かない人は人間じゃない」と言われ、「泣ける映画」で有名になったが、日本初上映でも、おばあさんの愚痴まじりのセリフが爆笑を誘った後には、ハンカチを目にあてて、すすり泣く観客の姿が目立ち、韓国同様、涙、涙の感動が場内に。
「泣ける映画」の評判は本物だった!

上映後には、この日の朝に韓国から来日したイ・チュンニョル監督とコー・ヨンジェプロデューサーが登場。
感動さめやらぬ観客とティーチ・インが行われ、イ監督は父親への想いからこの映画を企画したと語った。
コー プロデューサーは、この映画が大ヒットした理由について聞かれると、「韓国も日本同様、経済状況が悪く、職場を失った人も多い。
仕事を失うかもしれないという不安と人に負けてはならないという競争意識、めまぐるしい現代社会で、この映画の<スロー>であることの価値観や忘れ去られたものを思い出すことが人々の心に訴えかけたのではないか」と分析。

「アメリカでもヨーロッパでも、観客は同じ場所で同じように共感し、感動してくれるので、きっと日本の観客にも伝わると思う」と、イ監督は日本での公開に大きな期待を寄せるとともに、撮影中に苦労した点として、主人公のお爺さんがカメラを見ると写真だと思って動かなくなってしまったエピソードや、お婆さんが「カメラが入ると可愛く見せなきゃという気持ちになってしまうようで、やたらにお化粧をしたり着替えをしたり、大変でした」と、主人公の老夫婦の人となりをユーモアを交えて紹介し、観客を微笑ませることも忘れなかった。

◆このたび「牛の鈴音 (うしのすずおと)」の題字は、菅原文太さんが本作の映画世界に共感し、題字を手がけてくださいました。
俳優・菅原文太さんは、2009年10月に山梨県北杜市に農業生産法人を設立。いまや農業人としての活動も期待されています。