「父はカメハメハ大王の末裔。母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ。結婚すれば米軍から結婚支度金5千万円・・・」かつて、このようなデタラメを並べて、女性たちから推定1億円を騙し取った男がいた。
映画『クヒオ大佐』は、そんな実話を基に創作した一大エンタテインメント映画だ。

主演は、『クライマーズ・ハイ』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』、『南極料理人』の堺雅人。“つけ鼻”をした“エセ”アメリカ人に扮し、今まで見たことのない魅力を発揮している。

彼を取り巻く女優陣にも、個性溢れる顔ぶれが揃った。クヒオに献身的に尽くす弁当屋の女社長永野しのぶ役に『容疑者Xの献身』、『余命』の松雪泰子。

そんな個性派俳優陣から、絶妙な演技を引き出すのは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』でエッジのきいた演出を見せた吉田大八監督だ。滑稽だけど、どこかチャーミングなクヒオ大佐を独自のテンポ感で演出。また、クヒオ大佐と女性たちが繰り広げるドラマを、単なる詐欺師と被害者という関係を越えた、それぞれのラブストーリーとして見せていく。

本作の初日舞台挨拶が都内で行われ、吉田大八監督、堺雅人、松雪泰子が登壇した。

□質疑応答□

Q脚本を読んだ時の印象を教えて下さい。

堺雅人「初稿を読んだ時の印象は、中年男の美しく、哀しい物語でした。しかし、脚本が深まるにつれてクヒオ大佐の印象がますます変化していきました。今でも、クヒオ大佐はつかみどころのない存在です。」

松雪泰子「とてもシュールな笑いがこみあげてくる作品です。とても面白いと感じました。」

Q監督から見て、お二人の演技はどうでしたか?

吉田大八監督「堺さんは、和気あいあいと撮影に参加してくれていると思ったのですが、共通の友だちから、堺さんが映画の撮影を不安で苦しがっている、と聞いて。(笑)解り合えなかったのでしょうか・・・。」

堺雅人「そんなことないです!!(笑)」

吉田大八監督「お二人から出てくる自然な演技を信頼していたので、その分、苦労されたかもしれませんね。」

Q本作は笑わせるための映画ではなく、自然と笑みがこぼれてしまうような演出が多かったと感じました。

吉田大八監督「クヒオ大佐を観客の皆さまが好きになってもらう事が前提としてありました。その結果としての笑いの演出であり、ウケを狙っているわけではないですよ。」

Q監督からみて、お二人はどんな俳優さんであると思いますか?

吉田大八監督「お二人とも想像以上でした。《クヒオ大佐は本当の事を言っているのか、嘘をついているのか…。》観客にとって、そこがどうでもよく感じてしまう堺さんの演技力はすごいと思います。松雪さんは、初めてクヒオ大佐をパッと見て笑うシーンの演技が、とても印象的です。この表情から始まるんだ、という驚きがありました。」

Q最後に一言メッセージをお願いします。

堺雅人「独特で、ユニークな映画です。ある意味、恋愛映画ですが、ある意味ファンタジーでもあります。とても面白い映画ですので、気に入ってくれそうな方がいらっしゃったら、ひろめてみて下さい。」

松雪泰子「淡々とシーンが重なり、またジワッと笑いのこぼれる映画であると思います。本日は本当にありがとうございました。」

吉田大八監督「男性でも女性でも、色々な受け取り方のできる映画です。是非劇場まで足を運んでみてください。また、堺さんは腕立て伏せを一体何回しているのかも観に来て下さい(笑)」

やがてほころび始めるクヒオの嘘。次第に膨らんでいく女たちの疑念。果たして、クヒオは!?
そして、女たちは!?そこに、本当の愛は存在しなかったのだろうか!?
映画『クヒオ大佐』は渋谷シネクイント、新宿バルト9ほか全国ロードショー

(Report:椎名優衣)