20代にしてアカデミー賞にノミネートされるなど世界の注目を浴びながら、やがて全ての栄光を捨てホームレスとなった奇蹟のアニメーション作家、ライアン・ラーキンの短編と関連作を集めた映画『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』が19日遂に初日を迎えた。満席で入場できなかったファンもいるほどの大盛況に沸いたライズX(渋谷)では、公開記念として、最終回上映終了後、ライアン・ラーキンと同じくアカデミー賞ノミネート経験を持ち、これまでにも同作家を日本で紹介すべく尽力してきたアニメーション作家の山村浩二氏(『頭山』『カフカ 田舎医者』)と、書籍「ライアン・ラーキン やせっぽちのバラード」の訳者であるアニメーション評論、土居伸彰氏によるトークショーが行われた。

ゲスト:山村浩二さん(アニメーション作家)土居伸彰さん(アニメーション評論)

土居氏は、今回、約4年の時をかけて上映が実現したことに触れ「こういった短編アニメーションが、通常の劇場で公開されることはとても難しい。素晴らしい作品を、みなさんと共有できる機会ができたことを本当に嬉しく思います」と感慨を語った。一方、山村監督は「(ライアンの)作品を初めて観たのはもう20年くらい前の学生時代。構成としてはフワフワとしていて最初はあまりピンとこなかったが、何度も観るうちにドンッと来るようになった。人によって早かれ遅かれ、最終的には必ずドンッとくる。そういう力を内包している作家。」とその魅力を解説した。「ライアンは言ってみれば“天然”。構成に縛られない作風は、束縛が嫌いで、気ままに自由に生きた彼の人生そのもの」しみじみとそう語った山村監督の言葉の中に、ドラマティックな生涯を送った天才作家の奔放な生き方と、観る者を魅了する圧倒的な作品力の原点が伺えた。

計7作の短編、上映時間44分という特殊な興行形態で上映される本作。ライズXでは、入場料一律1,000円で気軽に鑑賞できるほか、10月10日まで毎週土曜日に、ゲストを招いてのトークショーも予定されている。この機会に、忘れられた天才作家が遺した“奇蹟”を、ぜひ体験してもらいたい。

『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』 <公式HP> http://www.ryan-animation.com/
監督:ライアン・ラーキン ほか
<上映作品>「ライアン」(2004年)/「ライアン・ラーキンの世界 特別版」(2004年)/「シランクス」(1965年)/「シティスケープ」(1966年)/「ウォーキング」(1968年)/「ストリート・ミュージック」(1972年)/「スペア・チェンジ 小銭を」(2008年)
(1965-2008/カナダ/計44分/スタンダード、アメリカン・ビスタ/ステレオ/デジタル上映)