現役僧侶で芥川賞作家である玄侑宗久氏の作品『アブラクサスの祭』の映画化が決定しました。
作者の作品では初の映画化になります。主演の僧侶・浄念役には映画初主演のミュージシャン、スネオヘアー。その妻・多恵役にともさかりえ。
住職・玄宗に小林薫と、豪華で個性あふれるキャスティングです。監督は東京藝術大学で北野武、黒沢清の薫陶を受けた、新人の加藤直輝。
昨日、玄侑氏の地元でもあり、この作品の主な撮影場所のひとつでもある福島県・三春町にて、この映画の企画にいち早く賛同し、製作委員会のメンバーとなった福島民報、福島テレビや、地元のマスコミや、サポートして頂く三春町、国見町の方々、そして一般のお客様400名も会場にご来場頂き、盛大な製作発表記者会見が行なわれました。

登壇者:スネオヘアー(浄念役)、ともさかりえ(多恵役)、小林薫(玄宗役)、
加藤監督、脚本家・佐向大、原作者・玄侑宗久

◆スネオヘアーさん
Q:本作が映画初主演とのことですが、出演依頼があった時はいかがでしたか?
「嘘だ!」と思いました。マネージャーにもそう言いました。そしたら嘘じゃないっていうんで。
「躁鬱の分裂症のお坊さんの役だよ」っていうんで「なるほど、そういうことか」って思いました。

Q:これから撮影ですが、ご自身が演じられる浄念というお坊さんについてはどう思いますか?
どこかで破綻している形でありながら、とてもまっ白い紙みたいにピュアというかそのままに生きているというかそういう生き方しかできない感じがします。
役どころとしましては、実は僕は痩せなくてはいけなくて。短期間で20キロ太ってしまったので、それを何とか今、戻そうとしています。
浄念は常に音と共にいるんですが、僕も音楽がないと落ち着かないし、演技とか考えてもしょうがないので監督に預けるしかないのですが、小林さんに見守ってもらいながら、ともさかさんに尻に敷かれ、やっていくしかないと思っています。

◆ともさかりえさん
Q:ご出演のお話があった時、脚本を読まれていかがでしたか?
ありきたりな言い方ですけど、とても面白くてキャラクターそれぞれの関係性というかアンバランスみたいな感じが面白くて、二つ返事でお受けしました。たまたま福島で撮影で、たまたま父が地元なのでこれは運命だなと。勝手に一人で奮い立っていましたが嬉しいです。

Q:ともさかさんはご自身もミュージシャンとして活動されていますが、ミュージシャンの旦那さんをもつ奥さん役どころはいかがでしょう?
ミュージシャンの奥さんという、このフレーズだけだととても美しい感じですけど、今回浄念さんと多恵さんの中にある愛情の形というのはとても独特だと思いますが、それがうまく伝わるようにコミュニケーションとって、いい作品につなげていけたらと思っています。

◆小林薫さん
Q:ご出演のお話があった時、脚本を読まれていかがでしたか?
私の役は隣に座っているスネオヘアーさん演じる浄念さんをずっと見守り続ける僧侶であります。
文字通り見守ってるだけの僧侶でございます。ただ見守っているだけを続けるのはなかなか難しいなと。
つい我々程度の人間ですと、口出ししてしまいますよね、「こうした方がいい」「それはまず」などと。
ただ見守っているだけという人ですが、撮影中含めてそのようにこの作品も見守り続けたいと思っています。

Q:ご住職を演じられるということで、先日、お寺での生活を体験されたそうですが。
体験と言えるほどの体験ではないですが、僕は住職の役を演じるのは初めてで、それで住職さんの暮らしってどういうものかっていうのがわからないものですから、そういう意味では非常に面白かったのと、(お寺の方々には)本当に良くして頂きました。
一宿一飯の恩義という言葉がありますけども、二泊もさせて頂いて、三度の食事も頂いてそういう意味では言葉通り一宿一飯の恩義を授かったなと思います。

◆加藤直輝監督
Q:なぜこの作品を映画化しようとしたのでしょうか?
きっかけは本屋でたまたま文庫化されていた「アブラクサスの祭」を手に取ったところから始まりました。読み始めると言葉で表現されていることが、僕の頭の中でたくさんのイメージが浮かんできました。くっきりと映像で浮かびあがってきたり、いろんな物音や人の話し声などもリアルに響いてきて、玄侑さんが書かれている文章が

僕にイメージを湧き起こさせたんです。そういう風な具体的なイメージを喚起させてくれる小説というのはなかなか出会うことがなかったので、こういった読んだ時の体験もありますし、それが一番最初に映画化できるのはないかと思ったきっかけだったと思います。

◆佐向大さん
Q:アブラクサスの祭」を脚色していくにあたって一番難しかったことはなんでしょうか?
監督の方からこの作品に対するものすごい意気込みなどいろいろお話頂いたかと思いますが、僕の場合は若干ニュアンスが違っていまして、一番始めに松田プロデューサーからお話を頂いた際に「お坊さんがロックをする話」と聞いて、てっきりコメディかと思っていたんです。
それでなんか面白そうだなぁって思って。それから原作を読んでみたら笑える個所もありますが、しっかりとした真面目な話で正直、自分が脚本化する立場としては「困ったな」と思ったんです(笑)
中心に描いているのが浄念という人の心の動きがメインだったので、それを映像化するのはものすごく難しいことで、全てセリフや行動で表現していかなければならないので、いかに浄念の心の中を表現していくかっていうところが、一番難しかったところです。

◆玄侑宗久さん
Q:初の映画化になるそうですが、ご自身の書かれた作品が映像化されるということについては、どう思われましたか?
よりによって「アブラクサスの祭」というのには驚いたのですが。私の作品を読んで連絡を下さる方がいらっしゃいますが、この作品を読んで感銘を受けたという方は、小説がよっぽど好きな方か、アブナイ方が多いですね(笑)加藤監督はどっちなんだろうと拝見してましたら、どうやら両方のようです。
しかしながら大変に読み込んで下さって、脚本家の佐向さんと協力して、素晴らしい脚本になっていると思います。
今回の作品の場合は音楽というのが非常に重要だと思います。スネオヘアーさんが出演して下さっているので、音楽という点ではもう一つ期待しています。
原作というのはきっかけでありまして、加藤監督を始め、みなさんの作品になりますので、私も一観客として楽しませてもらいます。