第62回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2009】4
映画祭は早くも後半戦。私たちプレスの試写は朝の8時半に始まり、遅いモノは22時半のスタート。その後にミッドナイト上映やパーティに顔を出すと毎日が午前様。自ら課した”1日4本鑑賞”のノルマも記者会見やインタビュー取材が入るとままならず…。疲労感も増す一方だけど、ここはカンヌ。日常とは切り離された全くの別世界で、気分も高揚してるから寝不足も何のその。さぁ〜て、ガッツで乗り切るぞぅ!
◆20日(水)、カンヌ市長がジャーナリストをランチに招待する恒例の”プレス・ランチ”で舌鼓!
今年も世界中から映画祭に集ったジャーナリストと、長編コンペティション部門の審査員たちをカンヌ市の市長がランチに招き、南仏の伝統料理でもてなした。
会場は市内を一望できる旧市街地の高台にあるカストル博物館前の広場。毎年、地方色豊かな伝統衣装に身を包んだ市民が立ち並んで音楽を奏でる中、市長自らが参加者をお出迎えしてくれるアットホームな雰囲気の催しで、お土産として映画祭のラベルが張られた特製ヴァージン・エクストラ・オリーヴ・オイルが配られる太っ腹なイベントだ。ハードスケジュールをこなさねばならぬプレスにとっては、一息つける楽しい場になっているが、今年の開催日は天気にも恵まれ、気持ちの良い屋外で饗したランチはことのほか美味しく感じた。
◆今年のコンペに選出されたフランス映画は『予言者』『雑草』『イン・ザ・ビギニング』『エンター・ザ・ヴォイド』の4本
昨年は、『クラス』が最高賞のパルムドールに輝き、87年の『悪魔の陽の下に』以来、21年ぶりのフランス映画の受賞となり、地元フランス人ジャーナリストを大いに湧かせたが、今年は4本のフランス映画が長編コンペティションに出品されており、これまでに3本が上映されている。
トップをきって16日(土)に上映されたのはジャック・オディアール監督の『予言者』。1994年の監督デビュー作『天使が隣で眠る夜』でカメラドール、1996年の『つつましき詐欺師』で脚本賞と、カンヌで確実にステップアップしてきた実力派監督が今回、舞台に選んだのは塀の中。6年の服役を宣告された19歳のアラブ系の青年マリクを主人公にして、世間知らずで、読み書きもすら出来なかった臆病な若者が、派閥抗争が激しい刑務所内で、タフに生き抜いていく姿をリアルに描いた青春映画の快作で、爽快なラストシーンが印象的だった。
20日(水)に上映されたのは、86歳の大御所アラン・レネ監督の『雑草』。盗まれた財布が縁で知り合った熟年男女の姿をサビーヌ・アゼマとアンドレ・デュソリエの共演でコミカルに綴ったロマンティック・ストーリー。ヌーヴェル・ヴァーグの時代から現在に至るまで独自のスタイルを追求してきた名匠の軽やかな演出には瞠目させられた。
21日(木)に上映されたのは、1999年の『インタビュー』で短編パルムドールに輝いた俊英監督グザヴィエ・ジャノリの長編4作目となる『イン・ザ・ビギニング』。刑務所を出所後、ケチな詐欺を繰り返していた男が、地方の高速道路建設を騙って一儲けを企むが、建設予定地の住民と関わっていくうちに手を引けなくなり、何と本当に高速道路建設を実現させてしまう。まさに”事実は小説よりも奇なり”を地でいく実話の映画化で、登場人物たちのキャラが立った実に奥行きのある人間ドラマに仕上がっていた。
同日の午前中に行われた公式記者会見に登壇したのは、監督&脚本のグザヴィエ・ジャノリ、主演のフランソワ・クリュゼ、共演のエマニュエル・ドゥヴォス、ソコ、ヴァンサン・ロティエ。そして製作会社ヨーロッパコープのプロデューサー2人という総勢8名。
なお、ギャスパー・ノエ監督が東京を舞台にして描いた『エンター・ザ・ヴォイド』は22日に上映される。
◆日本にもファンの多い俳優グレゴワール・コランが初監督した短編映画が批評家週間のクロージング作として上映!
『オリヴィエ オリヴィエ』『ネネットとボニ』『ビフォア・ザ・レイン』等が90年代に公開され、その美少年ぶりで多くの日本人ファンを獲得したフランスの俳優グレゴワール・コランが初監督した12分の短編映画『La Baie du renard』が21日(木)、批評家週間のクロージング作に選ばれ、上映された。
昨年、自身の映画制作会社”Tsilaosa Films”を設立したコランの満を持しての監督デビュー作で、入江に停泊する豪華ヨットにいる美女に魅入られた思春期の少年(すごく美形!)の姿をミステリアスに描写している。
(記事構成:Y. KIKKA)