この度、7月18日(土)より公開中の映画『湖のほとりで』の公開記念といたしまして精神科医・名越康文さんのトークショーを実施いたしました。
本作は、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『ライフ・イズ・ビューティフル』でも成しえなかった、イタリアのアカデミー賞と言われるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で史上最多の10部門を独占し、イタリア本国で口コミで240スクリーンに広がり、驚異の大ヒットを記録しました。
銀座テアトルシネマでも公開初日から連日満席が続く大ヒットとなっております。

日時■7月25日(土) 13:10トークショー開始
会場■銀座テアトルシネマ(東京都中央区銀座1-11-2 銀座テアトルビル5F)
ゲスト■名越康文(精神科医)
MC:精神科医から見たこの映画の感想をお聞かせください。
名越:皆さんは映画を観に来る前にインターネットでこの作品の情報を色々と目にしてきたかもしませんが、どれも間違っていると私は思いました。
僕自身も間違ってるかもしれないのですが(笑)。それは僕も精神科医というある意味での偏見を持った色眼鏡で見てしまっていると思うからです。
人の感性はみなバラバラで、自分が経験したことのあることに対して反応しているのです。
気分がハッピーなら、ハッピーな映画に共感し、苦悩していればそこに共感する。この映画がイタリアでヒットした理由ですか?難しいですね…。
陽気そうに見えるが、イタリアは社会的に苦悩しているんだと思います。
MC:名越さんが一番共感した役、印象に残ったシーンは?
名越:あまり言ってしまうとネタバレになってしまうけれど、知的障害者の男性とその父親にはどちらの気持ちも分かる気がしました。
分かり合えないながらも、父親は息子をとても愛しています。また、認知症のお母さんが、とても美しく描かれていたのがとても印象的でした。
僕は同じ病気の人たちをたくさん見てきてとても悲しい病気だと知っていますが、あそこまで美しく描いているのはこの映画の救いの部分ではないかと思います。

その後も、精神科医という観点から、「愛は10分で憎しみに変わる。誰もが一番愛した人を一番憎んでしまう。皆同じだけ苦しんいてその感情は自分だけではない。
あなたも私も皆一緒なのです。すべての人がそうなんです。だから、この映画を見るとどこか共感してしまう気持ちが湧いてくるのではないかと思う」と、
映画全体を深く追求した。客席からは同意の声や拍手が起り、温かな雰囲気の中、上映がスタートした。
【名越康文】1960年生まれ。精神科医。97年より、ラジオDJで人気者となり、その後もソフトな語り口と親しみやすさで多数のメディアに出演。
精神科医からみた、映画・音楽評論など、雑誌を中心に幅広く活躍中。