この度9月19日より全国公開されます映画「カムイ外伝」が完成し、本日7月22日、完成披露試写会が、東京・有楽町の丸の内ピカデリーで開催されました。

会場には、崔洋一監督、脚本の宮藤官九郎さん、そして主演の松山ケンイチさんが駆け付け、舞台挨拶を行いました。

【ご挨拶】

崔監督:今日はようこそ、ありがとうございます。

宮藤:あ、だうも……だうもって言ってしまいました(笑)。
今日はみなさん「カムイ外伝」を見ていただけるということで、最後まで楽しんでいってください。

松山:みなさんこんばんは。
今日は来ていただいてどうもありがとうございます。

【製作までの経緯】

崔監督:
話せばうんと長くなってしまいますが、丁度5年経ちます。
5年前に「血と骨」という作品が終わり、何をするか考えていたのですが、私ががやりたいことと、プロデューサーが私にやらせたいことがうまくクロスしなくて、どうしようと思っていた時期に、プロデューサーが電話で、『「カムイ外伝」みたいな作品はどうだろう?』と言ったときに、「やる!」と即答しました。

それから準備をしたのですが、時間がかかりました。企画が決まってから、誰と組むかというのが一番大切だったのですが、『「カムイ外伝」の世界を描けるのは誰かな』と考えた結果、ここにいる2人がいます。
天は我々にたっぷりの時間を与えてくれたのではないかと思っています。

【オファーを受けた時は?】

宮藤:
日活の食堂でラーメンを食べながら話を聞きました(笑)。
「カムイ外伝」の名前は知っていたし、イメージは持っていたが、『映画するのにどうして俺なんだろう?』と思いました。
その答えが自分でみつかるまで少し時間がかかりましたね。

【なぜ宮藤さんに脚本をお願いしたのですか?】

監督:
掛け合わせることの化学反応を考えた。最初に宮藤に会ったのが東映の撮影所。そこで、包帯だらけで眼帯をした人間が寄ってきて、いきなり挨拶された。それが宮藤でした(笑)。それから、どこかで会えば挨拶を交わす仲になりました。

「カムイ外伝」を映画にしようと思った時、大きな流れとは違うところに立ち位置があって、エッジがきいている宮藤官九郎が好きで、強烈に宮藤にお願いしたいと思いました。
掛けるということが、カムイ外伝にとって力になると確信しました。

【膨大な原作で大変ではなかったか?】

宮藤:
最初に監督から「スガルの島」のエピソードを映画化したいと聞かされていたので、そこに自分なりにスポットを当てて書きました。

原作を知らない人が見たときにわからないと困ると思って、「カムイ伝」も読んでみたのですが、忍者があまり出てこないんですよ
(笑)。でも、「カムイ伝」を読んでおいてよかったと今は思います。
あれがあったから「カムイ外伝」という作品が出来ました。

【共同作業をなさってみていかがでしたか?】

宮藤:
今までやってきた作品の流れとは明らかに違ったので、最初はなかなかつかめず苦労しましたが、どこかでそれを自分も望んでいた部分があった。

最初は「崔さんと打ち合わせしてるわ〜、すごいわ、自分」と思ったりしてましたね(笑)。脚本は色々と書きました。エピソードを入れ替えたり、オリジナルの部分を足したり、何度も書き直しています。

【オファーを受けた時のことは?】

松山:
忍者の映画で時代劇。前に一度だけ時代劇をやりましたが、日本に生まれてこういう仕事をやっているからには、本格的な時代劇をやりたいと思っていたので絶好の機会だと思ってやらせていただきました。

しかも忍者の役なので、普通の侍の刀さばきのようなものとは違うので、良い挑戦になると思いました。監督が崔洋一ということで、僕の周りではすごく怖がられている存在で、巨匠という言葉が出てくる監督ですが、そういう監督とぜひ一緒にやらせてもらいたいな、と思いました。

【実際の監督は?】

松山:
僕は自分が実際に見たり触れたりしたものでなければ本当のことは分からないと思っているのですが、やっぱり最初に会うときはビクビクと緊張しました(笑)。だから、衣装合わせで最初に会ったとき、ずっと口を閉じていたのですが、監督がいきなり『じゃあ、けんちゃん、これ着てみて』、と一発目から言わました。

きっと、僕の緊張を見透かして、わざとそういう言葉をかけてくれたんだと思うのですが、すぐに『信頼できる監督だなぁ』と思いました。
現場では、一番安心させてくれるのが崔監督でしたね。きっと僕以外のキャスト、スタッフの皆さんもそう思っていたと思います。

【松山さんを選んだ理由は?】

監督:
具体的になった時から、カムイ役は松山ケンイチしかいない、と思っていました。松山が参加してくれなかったら「カムイ外伝」はやめようと思っていたし、それは公言もしてました。今、カムイをやれるのはこの人しかいないな、という僕の強い主観ですね。

原作者の白土三平さんと3人で会う機会があったが、白土先生がケンイチを見て、『本物だ。ここにカムイの本物がいる』と、感動してました。大変、白土先生が喜んでいたのは、一生忘れないです。

松山:
原作者の先生に認めてもらえて、これ以上の幸せはないと思いました。
原作のある作品は、既に出来あがったキャラクターを生身の人間を通してやるということで、オリジナルと向き合って戦っていくという作業が追加されるのですが、不安になるときがあります。そういう部分で、監督にお世話になったり、脚本で宮藤さんにお世話になったりしました。
カムイをやらせてもらえて本当によかったと思ってます。

【宮藤さんから見た松山さんのカムイは?】

宮藤:
「あ、カムイだ」って感じです。原作では子供から大人になるときに、絵のタッチが急に変わるのですが、その時のカムイによく似てるんですよね。
大賛成でした。

【アクションシーンについて】

松山:
1年くらい練習しました。アクションをやるのはほぼ初めてだったのですが、1年間くらいトレーニングさせてもらえたのは幸せでした。1〜3か月ほど訓練して、あとは現場で、という感じではなかったのでありがたかったです。
忍者の動きは、現代の動きと全く違うので苦労はたくさんありました。

【俳優のみなさん体力の限界までがんばっていますよね?】

監督:
僕がそれを肯定してしまうと悪人になってしまいますが(笑)、俳優はよく頑張ってくれました。ケンイチは、7、8メートル助走をすれば、壁を横歩きできるんですよ。それを見て『そのまま忍者じゃん!』と思った。
アスリートに近いが、ただちょっと違う。カメラの前にそういった瞬間を持ってくるのがすごいなぁと思いましたね。

【見どころ】
宮藤:
原作では、カムイは人を殺したくて殺しているのではなく、生きるためにやっているというのが印象的で、生きることに対する執念が新鮮だった。
僕が本を書くのは、その答えを探すための時間だったので、そういう部分を感じてもらえるとうれしいですね。

松山:
原作は40年くらい前の作品ですが、『なぜ今映画化するのか?』と、いうのは、とても意味があるからだと思います。今生活している中で、必要なものは忘れていたころに出てくる。そういうことは、みなさんの周りでよくあることだと思うし、僕の周りでもよくある。この作品もそういうことだと思う。

監督:
まずは自分とスクリーンを向かい合わせて、正直な感情で見て頂くのが一番です。

ある意味、人の生き方を、人が生きていくことのしんどさを描いているが、ときには、楽天的で、人が生きていくのは悲しみばかりではない。
ただ、みなさんに特に感じていただきたいのは、壮大なアクション。
ほとんど役者自身がやっているというところ。

途中おっかないものも出てくるが、それはお楽しみにして下さい。
今までのスーパーヒーロー、ダークヒーロー、アンチヒーローではない、松山が演じた新しいヒーローであるカムイ像をしっかり見届けて下さい。
完全無欠なヒーローではなく、これからのヒーローとしての、決して強いだけではないヒーローを見てほしい。カムイが松山ケンイチで、松山ケンイチがカムイです。