7月20日、月曜日。

映画祭もいよいよ最終日。
今年も全ての作品が素晴らしく、選考には大変な苦労を要したようだ。
多くの観客が集まる中、表彰式が行われた。
はじめに主催者代表の埼玉県の上田清司知事と総合プロデューサーの八木信忠氏が挨拶し、短編国内コンペティション部門と長編国際コンペティション部門の各受賞作品が発表された。

<短編国内コンペティション部門>

●最優秀作品賞/川口市民賞(100万円)
 『太陽の石』監督:遠藤潔司

遠藤監督は「国境や時代、言語を越えて観てほしいという思いで作りました。この作品は僕だけではできませんでした。製作に共感して手伝ってくれた皆さん全てのおかげです。代表者としてこの賞を受け取れることがとても嬉しいです」と述べた。また、本作で主人公の少年のシルエットを演じた高岩彩を壇上に呼ぶ微笑ましい一面も見られた。

●奨励賞/川口市民賞(2作品)(各50万円)
『電信柱エレミの恋』監督:中田秀人
『金魚』監督:岡田茂

中田監督は「数々の素晴らしい実写作品がある中で人形のアニメを招待していただきありがたいです。こつこつやってきて良かったと思います。」と語り、8年かけて製作した本作が受賞した喜びを見せた。

岡田監督:「海外、国内からの監督が集まる中、スクリーンにかかるチャンスを貰えて嬉しいです。この受賞を糧にこつこつ頑張っていければと思います。」

●審査員特別賞(2作品)(賞金なし/主催者賞のみ)
『遺品整理屋 未来堂』監督:土田豪介
『ミリモ・センチモ』監督:耳井啓明

土田監督:「昨日沖縄から参りました。このような立派な賞をいただけて良かったです。」

耳井監督:「この映画祭で上映されることが目標だったので、嬉しいです。この作品の撮影を行った香川県の方々を始め、スタッフ、キャストに感謝します。」

<短編審査委員長の桝井省志氏による総評>

桝井氏は各受賞作品と惜しくも受賞を逃したノミネート作品について触れた。また、「短編の応募作品の中には1時間近い作品もありました。特に審査員特別賞の2作品はストーリーを作ることに格闘していただけたと感じました。映画作りでは、ストーリーを考えるのが大変なので、それに果敢に挑戦してもらいたいです。そして地元に根ざした作品にも感銘を受けました」と審査員特別賞選定の理由や映画作りへの思いを語った。

<長編国際コンペティション部門>

●最優秀作品賞(ソニーDシネマアワード 600万円)
『あなたなしでは生きていけない』監督:レオン・ダイ

脚本・製作・主演を務めたチェン・ウェンピンが登壇し、「この受賞は台湾映画にとっても、弱者にとっても光栄なので、嬉しく思います。この作品は実話に基づいて改変したものですが、どこの世界でも起こりうることです。今後、弱者にとって良い世界になるように願っています」と笑顔で述べた。

●監督賞(ソニーDシネマアワード 200万円)
『ジョニー・マッド・ドッグ』監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール

撮影監督のマルク・コナンクス:「この映画祭に監督から送り込まれた時には、この場でスピーチをしてと言われていなかったので、今困っています(笑)。暴力的な作品ですが、日本人の皆さんが興味を持ってくれたことに感銘を受けています。」

●脚本賞(ソニーDシネマアワード 100万円)
『ノラの遺言』監督:マリアナ・チェニッリョ

マリアナ監督:「作品上映後のQ&Aで観客の皆さんから素晴らしい質問をもらいました。ストーリーやキャラクターへの愛情や深い理解が伝わってきました。お客さんに感謝しています。私の家族の物語を脚本にしたので、私的すぎて制作は無理だとすら思っていたので受賞までできて嬉しいです。」

●審査員特別賞(ソニーDシネマアワード 100万円)
『それぞれの場所で』監督:ダルコ・ルングロブ

 ダルコ監督:「私にとって初来日で日本を満喫できました。温かく迎えられ、賞をいただきありがとうございます。この作品はベオグラード市やセルビア共和国から資金の援助をいただき作ることができました。」

●SKIPシティアワード
『Lost Paradise in Tokyo』監督:白石和彌

白石監督:「関係者の皆様、ボランティアの方々、足を運んできてくれたお客さん、ありがとうございました。普通の商業ベースでは作れないような作品を作らせてくれたプロデューサーに感謝しています。」

<長編審査委員長の山本又一郎氏による総評>

山本氏:「審査員は毎晩焼き鳥屋で大宴会をしながら作品について議論していました。その店で浦和レッズの応援をしていたのでレッズのファンになったという方もいます(笑)。審査員の方にも埼玉を楽しんで喜んでいただけました。今年は長編723本のうち667本の作品が外国からきたそうです。しかし、日本からの応募は56本でした。もっとアカデミックな意味で、映画づくりを奨励していける映画祭として日本からもっと素晴らしい作品が上映されることを願っています。」

全ての表彰を終え、瀧沢裕二ディレクターが「今年は6回目の開催でしたが、また新しく素晴らしい才能がこの地に来てくれたと感じています。技術は時に人間を追い越してしまいますが、それに挑戦し、人間の持つ新しい感性を育ててほしいです」と挨拶した。そして川口市長の岡村幸四郎氏が「デジタル主流の映画祭は我々が世界初で、先端をきってきたという自負を持って取り組み続けたいと思っています」と来年の開催に向けて意欲を語った。

最後に、受賞者や審査員を交えてフォトセッションが行われ、表彰式は幕を閉じた。

(Report:今井理子)